ちょっと、どうなっているのよ!

1ヶ月経っても、人間達は動かなかった。

いや、密偵からの報告では軍部に動きはあるのはわかっている。しかし、まだまだ準備が整っていないと報告があった


「まぁ、最短で1ヶ月でって事だったしね」


シオンは腕を組んで自分を納得させるように呟いた。


「なんでも、亜人達がいなくなって、戦の準備が遅れているみたいなの」

「はぁ!なにそれ!?」


リリアの声は反応して詰め寄った。


「シオン!近い近いなの!」


リリアの両肩に手を置いて、ズモモモ………とプレッシャーを掛けた。


「落ち着いてシオン」


ほんわかお姉さんキャラのエルメスがやんわりと言った。


「なんでも、人間の兵士達の準備が遅々として進んでいないそうなの。全ての運用を亜人にやらして、上の者は指示だけ出していたそうで、動く人間がいないのよ」


エルメスの話では、物資の搬入のノウハウや、書類の整理や保管場所など、知っている者がいなくなり、ようやく大慌てで四苦八苦しながら準備しているので、遅れているらしい。


「なんだかなー?」

「本当にやる気あるのかしら?」


時間が経てば経つほど、人間達は劣勢になるというのに………


「これなら、兵士達の装備は間に合いそうかしら?」


ドワーフにお願いして、もっか制作中である。


「そうなの!もう1ヶ月もあったら完璧に間に合うの!」

「うん?と、言うことは全員には間に合わないかしら?」


ドワーフのマイナ(久々の出番!)が、報告してきた。


「職人の数は足りているのじゃ。しかし、鍛冶をする職場の数が足りていなく今、増設している所なのと、武具を作る材料も足りなくなっているのじゃ」


言われてみれば、鍛冶をする釜戸や石の土台など、専門的な家具類が必要だよね。


「ちなみに、材料って鉱石が足りないの?」

「そうじゃ、少し専門的な話になるのじゃが、鉱石のままでは剣など作れぬ。まず、雑味を溶かして別けて、インゴットにしてから剣や鎧兜を作っていくのが一般的じゃ。在庫は十分にあったのじゃが、流石に万単位での装備品の分となると足りぬのじゃ」


なるほど、なるほど………?


「それじゃ、今の内に私が鉱石を取って来ようか?」


シオンの言葉にマイナは何をいってんのじゃ?見たいな顔をした。


「シオンは魔王になったのじゃぞ?そんな雑務は配下の者にさせるのがよいじゃろう」


マイナは至極当然の様に言った。


「そうなの。わざわざシオンが行かなくてもいいと思うの」

「う~ん、そうなんだけど、最近はその雑務ばっかりで身体が鈍っているのよ。ちょうど身体を動かしたいと思ってね。どうせ、すぐそこだし」


シオンの言葉にリリアやマイナは???と、なった。


「すぐそこって、どういうことじゃ?転移門ですぐ戻ってこれるという意味かのぅ?」


鉱石は、東の方の瘴気の濃い山脈で採れるのだ。転移門がなければ、けっこう遠い。


「いやいや、バハムートのいたラストダンジョンよ!あそこの最下層には、質の良い鉱石がいっぱい転がっていたでしょう?」


!?


確かに最下層は溶岩地帯になっていたが………


「またハイレベルなラストダンジョンに潜ると言うのか?」

「大丈夫、転移門で最下層にすぐに行けるから」


シオンはどこまでも能天気に言うのだった。



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