決戦までの日常

シオンが魔王を襲名して数日経った。


「はぁーーーー!!!!」


魔大陸の内陸の平原で、シオンは例の畑の手伝いをしていた。


「シオン魔王様、ありがとうございます!」

「ふぅ~、これでしばらくは野菜は実りますが、しっかり手入れをしてくださいね」


増えた亜人達の食糧を確保するために、せっせと農地の拡大に努めていた。


「…………ねぇシオン魔王様?」

「やめて、聞きたくない!」


側にいたリリアがシオンに思った事を伝えようとして止められた。


「なぁ、魔王って呼ばれる様になっただけで、本当にやること変わってないな~」


無神経のレオが言った。言ってしまった!


「なんかムカつく!」


レオにグーパンした。

威厳もへったくれも無かった。


「ま、まぁ、みんなに頼られっているってことなの!」

「しかし、本当に宣言通りだな」


シトリンが苦笑いをしながらやって来た。


「もう!シトリンまで!私だってもう少し威厳ある魔王を目指しているんだからね!」

「う~ん?シオンに威厳なんて似合わないの!」


リリアが顔を膨らませて反論した。


「ええっ!?」


まさか1番信頼していたリリアに裏切られるとは!?


「そうだな。主殿はみんなに愛されるタイプの為政者だしな~」


シトリンも手を顎に当てて、しみじみと言った。


「そうだぞ。ちょっとおバカな所がみんなに愛されているっていうか、愛嬌があっていいじゃないか?」


バカレオも乗っかってきた。

みんなに愛されて、愛嬌のある魔王ってなに!?


シオンは、ガーンっと言う効果音と一緒に固まった。そして、いじけて地面にのの文字を書き始めた。


「………ふふ、私は魔王。みんなに愛される魔王なのよ」


シオンの周囲だけ気温が下がっていた。

いや、いじけて落ち込んでいる魔王ってどうなのよ?


「いじけたな」

「うん、いじけているの」

「めんどくさい主殿だな」


呆れている仲間達だったが、顔は笑っていた。そして、遠目でその様子を見ていた亜人や住んでいる人々は、この魔王を守っていこうという気持ちになるのだった。

その人々の視線に気付いているシトリンは改めて思うのだった。


『悪くない。【王】とは孤独な存在だと思っていた。それは我もそうだったから。誰も味方がいなく、何処にいっても嫌われ襲われる毎日。そんな日々をこの小さな少女が救ってくれた。そして『みんなに愛される魔王』か………本当に退屈しないな。願わくは、この小さな魔王が幸せに暮らしていけるよう全力を尽くそう』


シトリンも例に漏れず、シオンを愛している者の1人であった。



1ヶ月後


遂に、人間達が襲って───





来なかった。


あれ?








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