大陸同盟
静かな部屋にて円卓のテーブルが中央に鎮座していた。テーブルの周りには7個の椅子が置いてあったが、誰も座っていなかった。変わりに装飾の付いた長方形の鏡が置いてあった。
ポワンッ
鏡が光ると、鏡から1人の人物が映しだされた。向こう側に人がいる訳ではなく、スマホの様な映像が映しだされたようだった。
「ふむ、我が1番だったかのぅ?」
「いいえ、私も来ましてよ」
次々に鏡が光り、7枚中6枚から人物が映し出された。
「時間通りだな。では時間が惜しい、早速始めよう」
「ちょっと、勝手に仕切らないで貰えるかしら?1番小さい国の癖に!」
「ふん、国が大きくともまともに統治できぬ無能が治めている国など民が可哀想だな?」
「なんですって!?」
隣同士の席で言い合いが始まった。そこに別の人物が仲裁に入った。
「そこまでだ。今は、かつての様に全ての国が一致団結しなければいけない事態だ!今回だけは国同士の確執は忘れてもらおう!」
仲裁に入ったのは、大陸で1番大きな国を治めるセイレン帝国の皇帝、バースト皇帝であった。齢70近くではあるが、鋭い眼力と若いとき鍛えた筋肉は些かも衰えていなく、服の上からでもわかった。
「はぁ、ここは皇帝の顔を立てましょう。それで、魔王の動向はわかっているのですかな?」
言い合いをしていた男性は、大陸中央にある1番小さな領地を治める魔術法王国のトップ、オーフェン法王である。法王と名乗っているが宗教の国ではなく、魔術を極めんと昔に独立した国である。大陸の優れた魔術師はこの国の門を叩けと言われるほど、魔術研究が盛んで他国とは不可侵条約を結んでいる。
「なに?魔術の研究ばかりで、バドギド王国がどうなったか知らないのかしら?」
言い合いをしていた女性は西側の大陸を治めるパリッテ王国の女王、エリザ女王である。
この女王の治める国は、近年貧富の差が激しく、国内が荒れていた。無論、そこまで酷いものではないが、亜人達を奴隷にして働かせることで、開拓は進んだが、国民の仕事まで奪う事態になり、少々揉めていた。
「愚か者が!あの映像を、全ての人間がみたのだぞ!あんな事ができるのは女神様か、その使徒様ぐらいしか出来ぬわ!」
「オーフェン法王殿、貴殿でもあのような事は出来ぬか?」
「はい、バースト皇帝。少なくとも全ての人間にあのような映像を脳内で見せるなど不可能です。特定の人物にのみならともかく。映像には魔王の手の甲に女神の紋章がありました。信じられませんが、女神様が我々を見捨てたとしか考えられません………」
オーフェン法王の言葉に、各国のトップがそれぞれ思うところがあり暗い顔になった。
「そもそも、バドギド王国やパリッテ王国が亜人を大量に奴隷にして、好き勝手したから女神様がお怒りになったのではないのか!?」
「失礼な!私達は亜人に仕事を与えてあげていたのよ!それより法王国では亜人を酷い魔法実験に使っているそうじゃない?それで女神様が怒ったのよ!」
「なんだと!」
「なによ!」
また口喧嘩が始まった。他の王達も思う所があり目を閉じて思案している者もいた。
「先ほど、魔大陸から使者が近々訪問する旨が伝えられた。魔王の思惑はなんだと思う?」
「普通に、亜人の奴隷解放と引渡しでしょうな。しかし、亜人とはいえ貴重な労働力が居なくなるのは辛いですぞ?」
「あら?魔王の言いなりで奴隷を渡すのかそら?正直、あんな極大魔法なんてすぐには撃てないわよ。魔王の狙いが奴隷達なら、城に奴隷達を集めておけば撃てないわ」
不敵に笑うエリザ女王に一部の王が追従した。
「確かに城にある程度の亜人達を集めておくのは良い手かもしれないな」
「いや、それは過信していかぬじゃろう」
唯一、バースト皇帝が反論した。
「あら?どうしてですの皇帝様?」
「バドギド王国を忘れたか?1番の亜人は助けたらしいが、港街住んでいた亜人達は見捨てたらしいのだ。故に、魔王は損得を考慮して、助けるべき亜人を切り捨てることができる冷酷さを持っておると、ワシは思っておる」
!?
「そ、それでは、激しく魔王の提案に反対したら人質である亜人ごとあの魔法を落とすと言うのですか!?」
会議は騒然となった。そして取り敢えず、対抗策ができるまで魔王の要求を可能限り受け入れることで話が着いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます