動き出す事態─

シオンがバドギド王国の王城を潰してから数日が経った。


「………そう、本当にごめんなさい」


あの隕石による被害について報告を受けていた。目の前にはレオン将軍がいる。


「正直、複雑な気持ちではあります。ただ必要な事だったとは理解はしておりますが、それでも『同族』達を多く亡くなったことについては、個人的にやるせない気持ちです」


あの極大禁忌魔法には幾つかの意味があった。

次期魔王としての力を示し、他国の牽制と奴隷達の解放の要望を優位にさせる為だ。


しかし、港街で奴隷の集団施設を解放したとはいえ、他にも多くの亜人達が暮らしていた。

私はその他の亜人を見捨てたのだ。これがシトリンが気にしていた事だった。


「ごめんなさい」


シオンは再度謝った。


「いいえ、勘違いしないで下さい。悪いのは不甲斐ない自分です。魔王様の側近と言われても、人間達を追い返す事しかできず、シオン様みたいに魔大陸の食糧事情を改善させる力もありません」


レオン将軍は拳を血がでるほど力強く握った。


「何より、シオン様に同族殺しの罪を犯させてしまった事が許せないのです!俺にもっと力があったら!」


「レオン将軍!止めてください!?」


シオンは将軍の大きな手を握った。


「レオン将軍、これは私が決めて実行した事です。覚悟はしてました………」

「………申し訳ありません。しかしシオン様も全てを自分で背負子むことはありませんぞ。貴女の罪は俺達が請け負います!シオン様こそ自分を責めないようお願い致します」


レオン将軍は深く頭を下げると退出していった。


長い廊下を歩きながらレオン将軍はとある部屋に入った。


「どうでしたレオン将軍?」


その部屋にはシオンの母であり魔王の妻であるフレイアや、シオンの仲間であり友達であるリリア達が待っていた。


「ふぅ、やはり落ち込んでおられましたな。無理をして気丈に振る舞っておられましたが」


レオン将軍はシオンの様子を細かく伝えた。


「主殿は今後の事を考慮してあの魔法を使われた。無論、犠牲になった者を蔑ろにはせぬが、これで人間達は、手元にある奴隷達を人質にできなくなった」


シトリンが冷静に今回の意図を伝えた。


「そうね。悪どい人間達だもの。私達の目的が亜人達の解放とわかれば、取引材料として使うでしょうね」

「そんな!?」


シトリンは、シオンのやった事の意味を知らなかったリリアを初めとした子供達に詳しく話した。


「シオンの大魔法には幾つかの意味があったのだ。1番の目的は次期魔王の力を示す為と、今後の交渉を有利に進めるためだ。ここまでは理解していたな?」


リリア達は頷いた。


「シオンがあえて亜人の一部を犠牲にしたのは、奴隷解放の時に人質として、敵の城に集められる事を考慮してなのだ。亜人達が手元にいれば大魔法は使えないと思わせない為のな」


!?


「そうか!次期魔王は目的の為なら亜人を殺す事ができると思わせれば、人間達は亜人を解放するしかなくなる訳だ!いつ自分の所に大魔法を落とされるかわからないからな!」


レオはようやく合点がいったかのように膝を叩いた。


「あの女神の使徒殿が使った魔術で、人間達は動揺しています。今、魔大陸から各国へ使節団を向かわせています。全てはありませんが、ある程度の亜人の解放は期待できるでしょう」


「シオンが自ら汚名を受ける事をしてまでやった事よ!絶対に結果を出してみせるわ!」


フレイアは政治的駆け引きは自分の仕事だと席を立った。









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