全世界に向けて─
仲間達が全員、転移門に入ったのを見届けてから、シオンは女神の力を使い、先ほどは声だけだった物を、シオンが城の中で兵士達を虐殺している『映像』を全知的生物に投影した。
『全ての人間に告げる!先ほどの言葉は嘘ではない。このような力が女神以外に使えるものないないだろう?我の要求はただ1つ!亜人達を人間と対等な立場にすることだ。無論、奴隷など全て破棄、洗脳教育も許さん!これがすぐに行われない場合は、お前達の国が【こうなる】と知れ!」
シオンが手を上に向けて指さすと、人々の目には空が映しだされた。
そして、どんどん空から落ちてくるものに目が離せなくなった。
「さてと………」
シオンは気を失っている国王を叩き起こした。
「おい、起きろ!」
「がふっ、ここは……?ひぃぃぃいいいい!!!!」
シオンの姿を見た国王は悲鳴を上げて引きずりながら下がった。
「まもなくこの城は消滅する。ここで死ぬのか、魔大陸へ捕虜として連れていかれて、地獄の苦しみを味わうがいいか選べ」
これはシオンの慈悲であった。それが当人にはどう映ったかは別としてだが。
「ま、魔大陸へなど行くか!もう少し待てば郊外にいる兵士達も駆け付けるはずだ!」
つくづく救いようのない愚者であった。
「そうか。ならば死ね」
シオンはそう言うと転移門へ入り、魔大陸へと戻っていった。
謁見の間には、多くの兵士の屍と血の匂いが充満していた。
静寂が支配する空間で、国王はようやく我に返った。
「………はっ!?助かったのか?」
辺りを見渡しても、魔族の気配はない。
我に返って、死体だらけの部屋からテラスへと逃げるように出た。
「はぁはぁ、許さん!許さんぞ!!!!大陸の国々に連絡して魔大陸に攻め込み、滅ぼしてくれる!!!!」
テラスの手すりに寄りかかりながら悪態を付いた。そして、遠くから聞こえてくる音にようやく気づいた。
ゴゴゴゴッ…………
「うん?なんじゃ、この音は……?」
城の外を見るが暗闇に包まれており、遠くの港街の灯りが見えるだけだった。そんなとき、ふと空を見上げると『それ』はすぐそこまで来ていた。
「あ、ああああ…………………」
国王は絶望するには十分であった。ようやく、女神の紋章が本物だと悟った。
そして空から【隕石】が堕ちてきていた。
そして、全人類がその映像を見ているのだった。
ゴゴゴゴッ!!!!!
ドッーーーーーーーーン!!!!!!!!
隕石が王城に堕ちた。
その衝撃波は凄まじく、麓の港街にまで及んだ。キノコ雲が空高くまで登り、爆風が広範囲にまで広がった。爆風の被害は隣の国にまで及び、魔大陸からでもキノコ雲が見えるほどであった。
・
・
・
・
・
・
・
一方、魔大陸に戻ってきたシオン達は─
「あの魔法はやべーな………」
「被害が酷すぎるなの!」
仲間達が話している中、最後に戻ってきたシオンに、シトリンとバハムートが対峙していた。
「そう身構えるなよ?この身体はシオンのものなんだぜ?」
「黙るのじゃ!『女神の使徒』よ。ワシが認めたのはシオンその人じゃ。身体を操っている使徒殿ではないのじゃ!」
バハムートは魔大陸で緊急時のフォローとして待機していた。女神の使徒と言われた人格は、やれやれといった感じで首を振った。
「それで、シオンをどうするつもりじゃ?」
「どうもしないって。すぐに返すよ。ただ勘違いするなよ?あのメテオ・ノヴァの魔法はシオンが望んだことだからな」
シトリンは渋い顔をしたがわかっているといった。
「ふん、わかっているならいい。これで私が表に出ることもないだろう。まぁ、シオンの怒りが最高に高まったときはでてくるがな?」
「もう、使徒殿がでてくることはない!シオンは我々が守る!」
「…………できるかな?シオンは全ての人間に恐怖される存在となった。世界中でシオンを抹殺しようと動きだすだろう。いくら勇者が居なくとも、人類の数と勇者達の残した強力な武具が残っている。精々がんばるがいいさ」
ボソッ
「シオンの心が壊れないよう、嫌な仕事は私が引き受けてやんよ」
これは女神がシオンに課したセーフティのようなものであった。
女神の使徒の人格がシオンの『中』に引っ込むと、シオンは倒れるように眠ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます