天罰を与えましょう!

シオンの声以上に、国王を初めとした兵士達もシオンの女神の紋章に目を奪われていた。


「ば、バカな!?勇者にしか与えられない『女神の紋章』をなぜ、下賎な魔族が持っている!」


ここにきて、初めて国王が動揺し怒鳴った!


「今の声を聞いていなかったのか?貴様ら人間はやり過ぎたんだよ。だから女神に見限られたんだ!」


レオはシオンの代わりに叫んだ。そして、魔剣を構えた。他の仲間も身構えた。


「さぁ、死ぬ覚悟はできたかしら?もっとも、今のお前達が死んだら行き先は女神の元ではなく地獄だけどね?」


シオンの手の紋章が光輝き、目も赤く煌めいていた。


「ひっ!?だ、誰でもいい!ヤツを殺せ!あの手の紋章も偽物に決まっている!一気に攻めて殺すのだ!!!!」


国王の声に我に返った兵士達が襲い掛かってきた。リリアが羽根を複数の黒い槍に変化させて、手数の少なさを補った。


「シャドウ・ウイング!」


兵士達を何人も貫いて殺した。

レオも魔剣を使い、兵士達は炎に包まれて死んでいく。

そこへ、敵の増援がやってきた。


「国王陛下!ご無事ですか!」

「国王様!先ほどの声はいったい!?」


国王を助けにきた兵士も困惑していた。女神様が我々を見限るなんてと………


「あれは魔族の魔法だ!我々を混乱させる為の嘘に決まっている!早く、この狼藉者達を殺せ!」


後ろからの増援は次々にやってきて、止まる気配はなかった。


「……………目障りね。シトリン、頼めるかしら?」


今まで静観を決めていたシトリンに命じた。


『はっ!主殿の仰せの通りに」


シトリンはパーっと、光ると人間の姿から黄色の悪魔ヒヨコの姿に変わると、黄金の光に包まれ高速で体当たりをして、兵士達を押し返した。


「何!?あの獰猛な黄色の悪魔だと!?」

「嘘だろ!どこから現れた!」

「あの魔王は黄色の悪魔を従えているのか!?」


兵士達浮き足だった。

まったく、どうしてあの可愛い姿をみて怖がるのか不思議だわ?


シオンだけは理解できなかった。

そして浮き足だっていた兵士達に向かって、手を正拳突きの構えをして打ち出した!


「女神の紋章の力を見るが良い!!!!」


突きだした拳から強大な魔力が解き放たれ、目の前の兵士達を無慈悲に消滅させ、国王のすぐ横を貫いた。その魔力は壁を貫通して大きな穴を作った。


「ひぃぃぃぃいいい!?」


玉座に座っていた国王は椅子からずり落ちて、みっともない姿を現した。


「ふん、無様ね。虐げられてきた亜人達の苦しみを味わうがいいわ!」


シオンは国王に一歩一歩近付いていった。


「来るな!」


腰が抜けているのか地を這いながら後ろへ逃げた。


「さぁ、覚悟はいい………!?」


国王に手を伸ばそうとしたシオンの手が止まった。


「あれは………なに?」


???


国王はシオンの視線の先を見た。シオンの壊して大きな穴を開けた幾つかの部屋の奥を見詰めた。


「あ、あれは奴隷部屋だ。特に珍しくもないだろう!」


そこには鎖に繋がれた綺麗なエルフや珍しい獣人の女性達が虚ろな目で倒れていた。


「そうよ。あれを見て酷いと思わない貴様ら人間は、心が悪魔になってしまったのよ…………」


シオンは押さえ付けていた怒りが爆発した。

これにより、国王は死ぬより恐ろしい者を目にしてしまうのだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る