責任を取らせる!

王城の内部は広く、複雑な作りになっていたが、シオンは迷わずに、上層へと登って行った。


「シオン、どうして場所がわかるの?」

「権力者ってヤツはだいたい上層に住んでいるのよ。そして、高い所から『人がゴミのようだ!うわはは』っていうのよ」


その後にシオンは………て、いうのは冗談だけど、上の方に強い魔力を感じるからそれを頼りに登っているのよと言い直した。


シオンに言われて探知してみると確かに、一際強い魔力を感じる。


「おらっ!」


ガギンッ!!!


謁見の間と呼ばれる場所に近づくと、近衛騎士団が出て来て、『少し』手こずるようになった。


「ちっ、弱いなりに煩わしいな」

「構わない!すべて倒して行けばいいだけよ!」


マモンが両腕に魔力を込めて放った!


ドーーーーーン!!!!!!

城全体が激しく揺れた。


「謁見の間が見えてきたな。あの部屋の後ろから王族の移住になっているはずだ!」


謁見の間の大きな扉を粉砕して入ると、中には多くの兵士、騎士団が待ち構えていた。


「みんな止まって!」


仲間達を後ろに下がらせると、シオンはゆっくりと前に進んだ。


「へぇ~?こんな真夜中なのにまさか逃げずに、こんな場所にいるなんてね?」


シオンは兵士達に守られながら玉座に座っている人物に目を向けた。


「報告は受けているが、改めて問おう。次期魔王と言うのは本当であるか?」


王としての威厳のある声で問い掛けてきた。


「ええ、そうよ!現魔王の娘にして、次期魔王のシオンよ!」


シオンは国王に刀を突き付けて言った。


「ふん、我々人間が総力を上げれば、魔大陸の魔族達など軽く全滅させられるのだぞ?頭に乗るなよ小娘が!」


シオンは国王の言葉を無視して逆に質問した。


「………1つ確認があるの。どうして獣人、エルフ、ドワーフなどの亜人を奴隷にして虐げるのかしら?」


「何を言うのかと思えば、この世界人間が支配しているのだ。他種族など我々人間に使われてこそ、価値があるのだ!」


!?


「かつて、魔族が大陸で猛威を振るい、人間達を蹂躙していた時、獣人達が人間を守る盾となり、ドワーフが武器を与え、エルフが魔法と弓で援護して、一致団結して我々魔族を追い払ったのではなかったかしら?その時は勇者など居なかったはずだけど?」


「ふん、そんな大昔の話など今を生きる我々には関係なかろう!今は勇者を女神様が召喚して下さったお陰で、亜人の力など借りずとも魔族を撃退できるようになった。今、我々に必要なのは労働力である。その点、獣人は優秀だな。人間より頑丈でタフである。まぁ、最近は交配が進んで人間の血が濃くなり、弱くなったのが難点ではあるがな?」


国王は嫌な笑みを浮かべて言った。


「そう…………、かつて人間達の為に同族を死なせてまで守ってくれた獣人やドワーフ、エルフなどの亜人をよくそこまで貶める事ができるわね?」


わかった。理解したわ!女神ネメシスが私を転生させたのが!?


シオンは刀を床に突き刺すと、右腕を高く上げて、手の甲を見せた。


シオンの右手が光だした!


「なんだ!?」


動揺する国王にシオンは、いや、シオンではない者が静かな声で言うのだった。


『愚かな人間達よ。我、女神ネメシスが宣言する!傲慢になり悪魔以上の悪行を繰り返す人間をもう助けはしない。これからはこの次期魔王であるシオンが女神の代行者となる事を宣言する!シオンが人間に天誅を下すと言うのなら最大限、力を貸すとしよう』


シオンの口から発せられているはずの声であったが、耳ではなく脳内に響く声で聞こえてきた。

そして、シオン達は知らなかった。


この女神の声が、大陸中の知性ある生物に聞こえていた事をまだ知らなかった。





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