動き出す事態─
魔王城のラストダンジョンを攻略したシオン達は─
ぐて~~~!!!
ゴロゴロ…………
「平和だねぇ~」
大きな課題をクリアしたことで、だらけていた。
ドドドドッ!!!!!
バンッ!!?
「大変だ!シオン、すぐに来てくれ!」
平和とは儚く消え去るのよね………
どうでも良いことを考えながらシオンは枕を投げた。
「コラッ!乙女の部屋にノックも無しに入ってくんな!バカレオが!!!」
「ばふっ!?」
顔に枕を投げられて入ってきたレオは仰け反った。
「てめっ!だらけているシオンが悪いんだろうが!ってか、それどころじゃないんだ!はやく来てくれ!」
「どうしたのよ?」
レオは忌々し顔で言った。
「また同胞が獣人達の奴隷を救って連れてきたんだ」
シオンの顔付きも真面目な顔に変わった。
「また奴隷紋を解呪すればいいのね?」
シオンの女神の紋章は奴隷の呪縛をも解呪できるのだ。シオンの他に、魔法に長けた魔術師や神官であれば一般の奴隷紋を解呪できる。しかし、稀に強力な呪縛を掛けられている者がいて、それをシオンが解呪していたのだ。
「………いや、既に奴隷紋は解呪できている。でも、『洗脳』されているようで奴隷から解放しても御主人様の所に帰せっ!て、暴れているんだ」
レオは拳を強く握って怒りに震えていた。
シオンも事態を重くみて、すぐさま港街へ転移門で移動した。
シオンは保護された獣人達の所へ行ってみると、争っている声が聞こえた。
「だから!お前達は奴隷から解放されたんだ!自由なんだぞ?もう、人間達に酷い扱いはされないんだ!」
「うるさい!僕達を早く御主人様の元に帰せ!」
「そうよ!私達の御主人様は慈悲深く、悪魔の因子を持つ私達に居場所を作ってくれた大切な御方なのよ!」
中を覗くと、10歳前後の獣人の子供達が5人ほどいた。言い合いを少し聞いてシオンは中に入った。
「悪魔の因子って何かな?」
入ってきたシオンをみて子供達は後ろに引き下がった。
「な、なんだよ!お前は!」
1番生意気そうな子供が言ってきたので、シオンは微笑んで自己紹介をした。
「初めまして。私はシオン、この国の『お姫様』だよ♪」
!?
「お、お姫様………」
シオンは額に鋭い角があるが、美しい銀髪の美女である。さらに権力のある人物に獣人の子供達は大人しくなった。
「それで、君達の事を教えて欲しいの。今までどうやって暮らしていたの?」
シオンの優しい言葉に、女の子の獣人が話してくれた。
ええ、話してくれましたよ!胸糞悪い話をね!?
子供達の話はこうだった。
自分達は悪魔の因子を持って産まれてきた為に獣の姿をしている。本来は殺される所を慈悲深い御主人様のお陰で生かされることができた。なので生涯、御主人様に仕えるように育てられた。
そして獣人は総じて体力があり丈夫なため、過酷な労働をさせられているのに、この子達はそれが当たり前だと言われて仕事をこなしていた。睡眠時間は5時間。たまに褒美として飴玉をくれることが嬉しいとのこと。
シオンは褒美に飴玉を貰える事が嬉しいと、胸を張っていった獣人の子供に涙した。
これは奴隷紋での強制支配ではなく、『洗脳教育』を受けている状態なのだ。魔法や女神の紋章術でどうにかなる問題ではなかった。
「………これがこの世界の人間のやり方ね」
この出来事はシオンの胸に小さなトゲを打つのだった。
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