ついに攻略したよ!

シオン達は5年の歳月を掛けて遂に最下層まで到達した。


「ようやくだね」

「ああ、ここまで長かったな」

「遂になのよ!」

「必ず攻略しましょう」

「まだ終わっておらぬ。最善を尽くすのじゃ!」


各々が最下層のボス部屋を前にして感慨にふけっていた。


「主殿もよくここまで成長してくれて、私は嬉しく思う。主殿の人生はこれからではあるが、今日で、1つの目標を達成できるか掛かっている。全力で頑張るがいい」


いつものように、シトリンが付いてきていた。因みにシトリンも修行して更に強くなっていた。お父さんが魔王で、表の最強ボスならシトリンは裏ボスと言ったところだろう。ぶっちゃけシトリンの方が強いと思うから。

(すまぬ。父よ!)


「さぁ!行くよー!」


シオン達は重厚な大きな扉を開いた。

中に入ると広い空間が広がっていた。


「………本当にダンジョン内って何でもありだな?」

「レオ、油断しないでね!」

「わかってる!」


周囲を見渡すが何もなかった。しかし強い魔力の濃度がどんどん高まってきている。


!?


「何か来るよ!」


シオン達の目の前に魔力の渦が巻き起こり、その中央に何者が現れた。


「なんて魔力なの!?魔王様を軽く超えているわ!」


エルメスの言葉にシオンはどんどん父親が弱くなっていっている感じがして申し訳なく思った。


『よくここまでたどり着いた。歓迎しよう!』


目の前に現れたのは巨大な黒い龍であった!


「ど、ドラゴン!?」

「でかいぞ!」


シオン達は臨戦態勢を取った。


『我が名はバハムート!この迷宮(ダンジョン)の盟主であり、御主らが相応の実力があるのか測る者である!全力で掛かってくるがよい!』


バハムートがそう言うと同時にシオン達は行動を開始した。バハムートが翼を振るだけで突風が起こるがエルメスが魔法で相殺し、巨大な腕で攻撃を仕掛けると、マイナが重力操作で重くして鈍らせて避ける!


レオはフルプレートの重装鎧を着ているとは思えないほどの速度で走り周り、炎纏わせた魔剣で斬り掛かった。


いったいどれ程の時間が過ぎただろうか?持ってきた回復ポーションも残り少なくなってきた所で、バハムートも無傷ではなかった。


『やるではないか?だが、これで最後だ!』


バハムートは渾身の魔力を込めたブレスの準備に入った。大きく仰け反り、口に魔力を溜めていた。


「今だわ!女神の紋章の力よ!今こそ私の願いを聞き届けたまえ!」


シオンの右手に現れた女神の紋章が眩い光りを放った。


『喰らうがよい!』


バハムートの極大ブレスがシオン達を襲った!


「紋章術!『黒の扉』!!!」


シオンの目の前に、真っ黒な扉が現れてバハムートのブレスを吸い込んでしまった。


『なんじゃと!?』


ブレスを吐きながら、流石のバハムートも驚愕した。


「まだよ!紋章術!『白の扉』!!!」


黒い扉の横に対極の白色の扉が現れた。


ゴゴゴゴッ!!!!


白い扉からは、吸い込んだバハムートのブレスが発射された!


『おっ!?オオオオオオオォォォォォ!!!!!!』


バハムートは自らのブレスをまともに受けて、上半身が消滅して倒れた。


ドシンッ!!!?


「はぁはぁ…………やった?」


紋章術は上級魔法以上に魔力と体力を使うため、シオンは膝を付いて肩で息をしていた。


「おめでとうございます!ダンジョンぬしを撃破です!」


シトリンが素直に褒めてくれた。


「はぁ~~!疲れたのぉ~」

「やったな!シオン!!!」

「流石はシオンね!最後の、生きた心地がしなかったわ」

「どんな攻撃でも、吸い込んで跳ね返す技とはのぅ?紋章術とは『どれも』規格外な性能を秘めておるのぅ」


仲間がシオンを労った。


「ここまで5年も掛かったけど、人生の目標が1つ達成できて良かったよ!」


『主殿はまだ気付いておらんな。このダンジョンを攻略したという事は、他の子供達も含めてこの世界で最強の力(レベル)を手に入れたことに。そしてこれからその力が人間に向けられる事に、優しい主殿は心を痛めるであろう』


シトリンはシオンが望まぬのであれば、人間に報復する事が、魔大陸の民の意志(願い)を無視してでもシオンを守ろうと思っていた。


そして、倒したバハムートの身体が光りの粒子となって消えたことでダンジョン攻略のご褒美の時間となった。






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