こ、こんなはずでは………

シオン達は意気揚々とダンジョンへ入って行った。


「シオンも新しい剣を貰ったのか?」

「うん♪私は魔法と剣の2つで戦うよ~」


先頭をシトリンが歩き、後ろにシオン達が続いた。


「主殿、母君からこのダンジョンの事を伺ったのだが、このダンジョンは魔大陸最大規模を誇り、地下100階もある大迷宮だそうだ。ここの魔物はダンジョンから産み出されるそうで、遠慮なく倒していいと言われたぞ」


「なるほど~ばっちこーい!」


シトリンを除いて、シオン達はダンジョンの怖さを知らなかった。


「目標は10階層までだそうです。頑張って下さいね」


ダンジョンの中に入ってしばらくすると─


!?


「……主殿、前方より魔物が向かってきます」


声を落としてシトリンが報告した。


「わかったわ。私とレオで前衛を務めるわ。リリアは敵の注意を引いたりサポートをお願い。エルメスは後方から援護射撃を!マイナはエルメスを守って!」


「「「了解!!!」」」


子供達はシオンに従い、陣形を組んだ。シトリンは後方で待機となった。


少しして魔物がやってきた。


「あれはオーク?いや、オーガか!?」


緑色の皮膚に大きな体格の魔物がドシドシッと音を立てて向かってきた。


「あれはゴブリンキングです!通常のオーガより手強いです!」


はて?ダンジョンの入口付近でこんなボス級がでるなんておかしくない?

そうシオンは思ったが、このダンジョンでは雑魚モンスター扱いで出てくるのである。


「臨戦態勢!私が魔法で先制攻撃をするわ!」


シオンはすぐに魔力を込めて放った!


「フレイムランス×5!!!」


シオンはフィンガーフレイムボ………ではなく、中級魔法のフレイムランスを5つも出してゴブリンキングに放った。


『グオォォォォオオオオオオ!!!!!』


ゴブリンキングは手に持った棍棒で2つを叩き落としたが、3つは命中して痛みに吠えた!


「今だ!?」


無作為に棍棒を振り回すゴブリンキングに、レオとシオンは棍棒を避けながら斬りかかった!


ザシュッ!!!!


レオの剣がゴブリンキングの腕を切り飛ばした!


「こっちも!」


シオンは隙が出来た胴体に剣を振るった。


『グオォォォォ!!!!!』


痛み怒りに、ゴブリンキングは残った腕でシオンを殴ろうとしたが─


「彗星の矢!!!」


エルメスの魔力のこもった矢がゴブリンキングの眉間を貫いた!


ズドーーーーーン!!!!!


「やったーーーー♪」

「どんなもんだい!」

「やりましたわ~」


「リリアとマイナは出番なしなの………」


初めての戦闘で勝利したシオン達は喜んだ。


「おめでとうございます。素晴らしい連携でしたよ主殿」

「ありがとうシトリン♪」

「では、引き続き頑張って下さいね♪」


シトリンの言葉にシオンはあれっ?と首を傾げるが、すぐに意味がわかった」


ドシンッ!

ドシンッ!


「今度は複数みたいですよ?」


シオン達は勝利に酔いしれる間もなく戦う事になるのだった。



「はぁはぁ………」

「はぁはぁ……い、今、何階だっけ?」

「ふぅ~キツイの、3階に来たばかりなの」

「キツイのじゃ~」


シオンを初め、子供達は疲れ切っていた。


「ふむ、そろそろですかね?」


シトリンは危なくなった時のみ手を貸していて余裕があった。


「シトリンどうしたの?」


シトリンが前に出てきたのでシオンは尋ねた。


「さて、今回のダンジョン攻略はここまでとします!」


「「「えっ!?」」」


シオン達は驚きの声を上げた。


「シトリン!私達はまだやれるわよ!」


シオンは叫ぶがシトリンが冷静に忠告した。


「いいえ、皆が息切れを起こして、満足に動けません。それに、ダンジョンに潜る前から試験は始まっていたのですよ?」


はて?何のことだろう?


「いいですか?ダンジョンに潜る前には色々と準備が必要です。それに皆さん潜る前から落第しています」


なんだと!?


「なんで?と言う顔ですね?なら、その息切れを治すスタミナポーションを誰か持っていますか?」


シトリンは見渡すが誰も持っていなかった。


「ダンジョンに潜るのに、ポーションや毒消し、緊急脱出の魔道具など用意せず入るのは自殺者がすることですよ!」


!?


「今回はわざと目立つ高級装備を与えましたが、他のアイテムは相談して持って来るように言ってあったはずです」


そうだったーーーーー!!!!!!


「主殿?貴女は強い。しかしまだ子供です。もっと思慮深く注意して下さい。でないと─」


ごくりっ。


「この中の誰かが死にますよ」


!?


「主殿にとってここにいる仲間は替えの効く消耗品ですか?」

「ふざけないで!大切な仲間よ!だれも代わりになんてならないわ!」


シオンは怒ったがシトリンは淡々と言った。


「ならどうして回復ポーションを持って来なかったのですか?大怪我をしても治さないのですか?」

「そ、それは…………」


シオンは言い返せなかった。


「大切な仲間ならもっと準備をしなさい!上に立つもの、もしくはリーダーは仲間を守る義務があると知りなさい!」


!?


「主殿は自分の力に頼り過ぎています!貴女の力も絶対ではないと理解しなさい!」


!??


シオンはシトリンの言葉にショックを受けて、ヘナヘナと地面に座り込むのだった。





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