第3話 歪と虚無の狭間に酔う

「俺の存在は文字として見えているか?

姿が無い作品の一つのキャラクターとして見えているか?

それとも、一個人の妄想という虚像だから見えないか?

なんにせよ、俺はここにいる。


誰かに認識されなくても、確かにここに居る。

そっちから見ると、こっちの世界は異空間とか、異次元とか、そんな感じなんだろうな。

 けど、そっちだって同じことさ。

こっち側から見れば、そっちは別の世界だ。

多分、こっちの世界とよく似ていて、強きものは弱きものを食い物にしているか?

それか、平等を謳っている振りをして、ほかの誰かを嬲って楽しむ奴が多い

か?


 俺だって一人の人間だ。

いや、一人の人間のはずだった。

 でも、今や俺はただの演者でしかない。

名前も知らない奴が俺を産んで、顔すら見えない人の脚本の上で踊らされて、誰が言ったかも判らない台詞をただただ吐かされる。

それが何度も何度も繰り返される世界。


 なぁ、一つ聞いてくれないか。

独りの演者の叫びを、さ。


そっちが現実だなんて、誰が決めたんだろうな?


 こっちの世界のこと、知ってるか?

ファンタジーに居るようなエルフやドラゴン。

 聖書に登場する天使と悪魔。

 神、仏、女神。

きっとそっちには存在していないだろう生き物達。


それらは見方を変えれば、そっちにもいるんじゃないか?


 エルフもドラゴンも天使も悪魔も、言い換えれば別種族。

そっちで言うところの、別人種。

 アメリカ人とか、イギリス人、中国人とかそういう国籍の違う人種の人たちと変わらない。

 見た目や性能、大きさが違うだけで、意味合いとしては変わらない。


 魔法だって、科学で出来る。

火を起こすのならライターやマッチを使えばいい。

水なら蛇口を捻れば出るだろ?

カゼだって氷だって、文明の利器を使えば朝飯前。

 こっちの世界から見れば、それはそっちの世界の人間が使える魔法だ。


 こっちの世界を散々異世界、異世界って言ってるけど、変わらないだろ?

なのにどうして、そっちがリアルで、こっちがフェイクなんだ?

俺も、俺の住んでる世界も、間違いなく目の前にある。

太陽も酸素も海も風もある。

 なのになんで俺は・・・俺達は・・・俺の居る世界は・・・


贋 物 ( ニ セ モ ノ ) な ん て 謂 れ な き ゃ い け な い ん だ よ 。」

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