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弟子を追い立て、師匠の老人は椅子に腰掛けなおし、机に頬杖をついた。肘をついた机は乱雑に本が置かれ、一冊は読みかけの開きっぱなしになっている。続きを読もうと本の縁に手を乗せたところで、老人は椅子から立ち、しっかりした足取りで外に出た。馬鹿弟子にだけ任せていたら日が暮れてしまう。他にもやってもらう事はいっぱいあるのだ。掃除洗濯、料理に死霊術の資料百冊読破、実践……。
ドアを開けると、春の温かい日差しが老人を抱きしめた。家の中に籠もっているうちに季節が変わっている。妻と出会った冬の日から長い年月が経ち、今年もラナンキュラスの花の季節になったのだ。
──妻との新婚旅行も、この時期だった。
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