01-09 後悔はいつしたって遅いのだけれど(3)
何もする気が起きないまま二日、私はほとんどの時間を自室で過ごした。
きっと傍目にも
時々お父様の部屋に置いてきた土人形から部屋の様子を伺ってみても、お父様はピクリとも動かない。そのたび胸をぎゅうと締め付けられるような気持ちになった。
部屋に知らせが届いたのはその夜のことだ。サーシャに声をかけられ、弾かれたように部屋を飛び出す。走って、走って、勢いよく扉を開けると、ベッドの上で上半身を起こしたお父様が目に入った。
「――っ」
お父様に駆け寄ると、その首めがけて飛びついた。顔を埋め、首に回した腕に力を込める。その手が震えているのが自分でもわかったけれど、震えを止めることはできなかった。
「――すまないな、心配をかけたようだ」
お父様が私の背中を優しくなでてくれる。その動きは少しぎこちなかったけれど、背中からお父様の温かさが伝わってきて、私は黙ったまま首を振ることしかできなかった。しばらくそうしていたけれど、やっと気持ちが落ち着いてきてお父様から体を離す。それでもまだ顔を上げることはできなかった。
「ごめんなさい。予兆はあった。私がもっとうまく立ち回れていたら、こんなことには……」
「ディアのせいではない。むしろよくやってくれた」
お父様はそう言ってくれたけれど、私は強く首を横に振る。しばらく無言の時間が流れ、あまり無理をさせてもいけないだろうし退室した方が良いだろうかと考え始めたところで、お父様がためらいがちに言った。
「時にその――ディアよ。あの時私をお父様と呼んでくれた気がしたのだが……それは気のせいだっただろうか」
!!
あまりよく覚えていないけれど、あの時は必死だったからうっかりそんなことを言ったのだろうか? ……言った。確かに言った。言ってしまった、何回も。あああああああ、お父様呼びは心の中だけって思ってたのに――! あまりの恥ずかしさに顔が熱くなる。
「もしよかったら、もう一度呼んではもらえないだろうか」
ずるい。お父様はずるい。こんな状況でそんなことを頼まれてしまったら断れない。
俯いたまま、ぼそぼそと小声で「……お父様」と呟く。
お父様は小さく笑って、私の頭をそっと撫でてくれたのだった。
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