01-05 狩りになんか行かない(3)


「ちぇー、つまんねえの……」


 ザムドは何度目になるかわからない呟きを風に乗せると、はあとため息をついた。ディアドラと狩りに行きたかったのに断られてしまい、家で魔法の練習をしていた。けれど一人で的当てをしても大して面白くない。


 急に飽きたなんてディアドラは一体どうしたのだろう、と考えてみたところでザムドにはわからない。一昨日まではディアドラも楽しんでいるように見えたのに、そう思っていたのは自分だけだったのだろうか、と肩を落とす。


「ステータス」


 自分のステータスウインドウを表示させてみる。そこに書かれていたレベルは二十一。九歳の子供の中では飛び抜けて高いレベルではあるのだが、ディアドラには遠く及ばない。一年という年の差以上の違いがあるのだと、あまり頭は良くないと自覚しているザムドにだってわかる。


 彼女には、今のザムドよりずっと小さい頃から一人で魔獣を狩れる力があった。もともとディアドラが一人で狩りをしていたところにザムドが勝手についていくようになっただけだ。だから彼女が飽きたと言うなら、ザムドに狩りを強制することはできない。


 わかっている。わかってはいるけれど。


 いつの間にか彼女と狩りに行くのが一番の楽しみになっていた自分に気がついて、ザムドは地面にしゃがみこんだ。毎日楽しみにしていたのは自分だけだったのだろうかと思うと寂しかった。


 いつか彼女の強さに追いつきたいと思うのに、追いかけても追いかけても彼女は遠すぎる。このまま一生努力したって、彼女の隣に並べるほどには強くなれないのかもしれない。


 ザムドはステータス画面の経験値に視線を向ける。魔法の練習で得られた経験値はほんのわずかで、次のレベルには遠すぎた。ディアドラと狩りに行けばもっとたくさんの経験値が入るのに。


 ――どうしても狩りたいなら一人で行きなさいよ。


 ディアドラの言葉を思い出す。


 ――あんたなら、一人でも狩れるでしょ?


 父は一人で狩るにはまだ早いから、ディアドラと一緒でなければ森には行くな、森に入ったら彼女から離れるな、と口すっぱく言っていた。けれどディアドラがザムド一人で狩れると言うならそうなのかもしれない。


 ――行ってみようかな。


 ザムドはステータスウインドウを消して立ち上がり、一度だけ伸びをする。魔法の練習で魔力を半分くらい消費してしまったが、ちょっとくらいなら何とかなるだろう、と考えながら。


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