01-04 最推しは現魔王(3)
ディアドラの記憶を必死でたどっていたら、あまり眠れなかった。時計をちらっと見てから大きく伸びをして、ベッドから降りる。もうすぐ朝食の時間だ。姿を見るなり捕らえられたりしないだろうか。いきなり処刑はさすがにないと信じたい。
着替えてからおそるおそるダイニングに向かうと、既に奥の椅子にお父様が座っていた。あごの前に組んだ手に頭を乗せ、じっとこちらを見つめてくる姿には魔王らしい迫力がある。
尋問!? 尋問なの!?
気圧されて後ずさりしそうになったけれど、ぐっとこらえて腰に手を当てる。
「……何?」
ディアドラならこの程度、悠然と受け止めるはず。やだもう帰りたい部屋でご飯食べたい、という気持ちを押し隠してお父様を見つめ返す。お父様は体勢を崩さないまま言う。
「座りなさい。まずは食事にしよう」
「……」
それは、食後は覚悟しておけってこと!?
蛇に睨まれた蛙ってこんな気持ちなのかなあ、と考えながら黙って座り、パンを口に運ぶ。昨日は美味しく食べられたのに、今日はなんだか味がしない。硬いスポンジでも食べている気分だ。お父様も食事を始めたけれど特に会話はなく、静かな室内に食器の音だけがやけに大きく響いた。
「ディアよ。このあと時間があるようなら、その……昨日とは別のゲームをしないか」
は?
言われたことがとっさに理解できず、無言で顔を上げる。お父様は無表情のまま食事を続けているし、空耳かな? でもお父様から視線を向けられて、聞き間違いではなさそうだと知る。
ゲーム? ゲームって、なんで??
こちらを油断させようという作戦? じっと見つめてみてもお父様の表情からは何も読み取れない。ディアドラならどう答えるだろう。私は逃げ出したいけれど、暇を持て余していた彼女なら是と答える気がする。
「いいよ」
「そうか!」
一瞬お父様の背後にまた花が咲いたような気がして、目をこすってみる。やっぱりない。見間違いだ、たぶん。昨日ディアドラらしくない行動をしすぎたから怪しまれていると思ったのに、違うの?
いや、まだ油断はできない。命がかかっているのだ、慎重にならなければ。
私は気合いを入れ直すと、無言で食事を再開した。
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