Color world

敵

「……それが黒魔術師との出会いですか…………

……俺の黒魔術師との出会いは

言わば最悪のものだったんですけどね……」

「ほう…？それは興味深い

聞かせてくれないだろうか…？」

「……」

「どうしたのだね？」

「……」

一時の沈黙が過ぎる

「……俺は、この時を待っていた……！！

しかしこれは……来てほしくも、無かった」

……そう

俺は、この時を待っていた

"疑問"を言う時だ

「あなたは国のトップ

"全て"を知っている。知らないはずがない。

俺は、その"全て"を知る権利がある。

何故こんなことになったとか……

何故俺を選んだとか……

疑問を疑問のまま、終わらせない……！！」

「……言ってみろ」

「……まずは、なんで黒魔術師が死んだという

情報が漏れているんだ？」

「……」

「……知っているのでしょう？

なんで、無言なんですか…？」

「…俺に残っている疑問は、これだけじゃない！

人類の頂点に立つのなら

民達の疑問は解消させるべきだろう……！！」

と、俺は凱旋皇相手に凄んだ

次の疑問を投げかける

「……重ねて質問します

なぜ"一般代表"が出来た？

なぜ俺を選んだ？

こんなの、前から思っていたが

ただの出来レースだ…！」

「……」

「だってそうでしょう……！！

他の代表だって、元々は普通の一般市民！

それとは別に一般代表なんてもの

設ける必要はない！」

俺は続けて言う

「そして……あなたは俺の敵か…！？

あの黒魔術師と魔人の戦いは一体何なんだ……！？

なぜ………世界大会が開かれる……！！」

「……」

「何とか言ってください！！」

「……そうか、知りたいか………………

……………………………………」

ゴゴゴゴゴ……

ゴクリ

俺は、そのあまりの威圧感に生唾が燃えた…！

「………………………………

……………………………………

今は、"味方"として言おう……」

「……その全ては、"戦争の為"だ！

…あの白魔王は、もはやただの"人形“と化した！！

…………黒魔術師も死んだ今、

もう………これしかないのだ……」

「！？せ、戦争……だって！！？」

ズカズカズカ

「くそ、離せ！！」

「まだポテチ食いきってないのだわ！？」

ガチャ

「こんな時に……何！？」

少女を拘束して、カラスを鷲掴み(鳥だけに)にし

入ってきたSP達にイラつきを感じた

「記者達はもう立ち去りました

外で不審な行動をしていたので、連れてきました」

と、一人のSPが言う

「ご苦労であった

その者達は私の客人だ。拘束を解きなさい」

「ハッ」

「んーだよ。たく」

SP達の拘束が解けた時に

カラスは愚痴めいた口調と態度で

俺の方に飛んで来た

「もう用は済んだ

その者達を、地下一階の噴水まで

案内してあげなさい」

そう言うとSP達は

俺達を強引に外に追いやろうとする

「待って！！まだ話は……！！」

「また会おう、"一般代表、カガミ・バン"

次は世界大会かな…？」

キィー……

ガチャ

扉は、後戻りが出来ないぐらい

重く感じた………………

「あのゔぁーず？凱旋皇って人

カッコよかったぁー！

……って、そうだ魔術師代表のこと！

話してなかったぁぁぁ！

のだわぁぁぁぁぁ！！！」

「……」

俺は無言で聞き流した

ラグナロク魔人国　中央区　ヴァールテクス新王城

一階　エントランス

入り口を通ると

そこには広いエントランスホールに繋がる

白の石材と黒いタペストリが壁に並ぶ

黄色いジュウタンが床に十字に敷いてある

その先に進めば、花園が下に広がり

石で出来た橋を渡った先、玉座の間に繋がる

私は、ジュウタンを踏みながら歩いている

「ここが私好みにリフォームした

ヴァールテクス王城だ！！」

と、私は自慢気に言った

「はいはい、何回も見たことあるから

分かるわよ。そんなの。」

「ここはな……数百年前

第一の魔王"ヴァールテクス"が使っていたのを

"魔王大戦"にて私が勝った時

他2人の魔王より豪華だったので……」

「……」

彼女は、どう見ても聞き流してるが

私は絶対に聞けるよう、大声で言った

「……しかし、妙だな

城の雰囲気が先と違うよう……？」

「お待ちしておりました。」

「我が王よ、何処へおいでへ？」

「おぉ、お主らか」

先に話しかけてきたのは

レディーススーツを着た

青い髪をしたロングヘアをして

少し赤みがかった目をしている

その女の人は、代々私の秘書をしている

アドフリック家、10代目……

メモリー・アドフリックだ

もう一人、茶髪の黒いメンズスーツを着た者は

その弟のカトラス・アドフリック

姉に良く似た好青年で、

秘書になる為に姉の元で勉強している

「……はぁ、待ってたは待ってたけど…………」

メリーが言う

メリーとは、彼女メモリーを略して言っている

「なんだね」

「まーーー……た！その格好で外ふらついて！！

全く、あなたを狙う人が居たら

どうしたのですか！？」

「ハッハッハ！！

私は"メリー"のその愚痴を聞く為に

こうして迷惑をかけているのかもしれぬな！！」

「全くもう……その方は？」

「……」

白黒女は、無言で秘書に近づく

「あぁ、こいつは私の客人で……」

グチャ

「……！！！！！！！！

ね……ねえ……さん…………！？」

ドサッ

転げ落ちる

転げ落ちる

転げ落ちる……

メモリーの首が鉄の剣で斬られ

ゆっくりと右に、転げ落ちた

それはまるで、落ちる寸前の太陽のようだった

「……！？！？」

私は唖然として、驚くしかなかった

客人として迎えた女が

どこからともなく鉄の剣を手にし

秘書の首をはねた

「な、何で……姉さんを……！！

てめぇぇぇぇぇぇぇぇ！！！」

カトラスがその殺した女に襲いかかる

グチャア

「カハッ……」

右手で横向きに持った鉄の剣を

彼女は弟の腹に刺した

「殺してやる……！！

殺して……！！

脳みその髄液一つ残らず……消してやる……！」

迫真な声で、呪うように言った彼は

剣に刺されながらも、女の方へ近づく

「……さようなら」

ゴリゴリゴリ……グチョ！！

彼女は、剣を横に振り

骨を削る音を鳴らしながら

剣を両手に持ち

右に斬り、弟の腹を断ち切った

ズサ……

骨が斬られ、力が入らなくなったのか

死んだ秘書の首の方へ倒れ込む

「ね…………ねえ………………さ……………………」

右手を精一杯動かそうとしているが

虫の羽のように

痙攣するだけだった

「……早く、楽になって」

バサッ…ゴロッ

彼女は、最後に地面に剣を突き立てて

弟の首を斬り、手の痙攣が止み

完全にとどめをさした

その後弟の首が回転した

口は開き、目は彼女の方へ向いていた…………

「おい……これは、何の冗談だ………………」

「……こんな酷な伝え方はしたくなかったけれど

この人も……"奴ら"の手先」

「……は？」

ドドドドドッ

すると突然、入り口から8人の兵隊が流れ込む

鉄の鎧を纏っていた

「！！おい……この女を…………！！！」

私はこの女を連れ出させようとしたが…

「そこにいる二人！！動くな！！

抵抗せずに、武器を下に置け！！」

鉄の鎧に金のヘルメットを着た

隊長らしい人物が言う

「何……！？私は……！！」

「動くなと言っている！！

この泥臭い魔人めが！！」

「！？」

「そう言うこと……よ！！」

彼女は、右手に持っていた剣を前に投げた後

右、左、上、後ろ……と

四本の剣が何処からともなく現れた

ガキン　ゴォン　キィン！！

その五つの剣達は、蝶のように曲線をなぞりながら

兵士達に襲いかかっていった！

「なんだこの剣！？

まるで透明人間と戦っているようだ……！！」

兵士の一人が言う

「もしそう思うなら、前に切ってみれば？」

「クッ」

ガキィィン！！

「我らが居ることも

忘れてもらっては困るなぁ！！」

残り2名の兵士と一名の隊長が

囲い込んで来た

「白魔王！！

さっきから何してんのよ！！」

「……いいや、まだ彼らは敵ではない」

「はぁ？アンタ、何言ってんのよ…！」

と、彼女は怒り気味で言った

「クックック、そりゃあ良い！！

お前ら！！その女を生捕りにしろぉ！！」

隊長格の人物が言う

「何なのよ……もう！！」

「……時に聞く、兵士ら諸君」

白魔王が、仁王立ちして言った

「あぁ？お前みてぇな老ぼれは黙ってろ！！」

隊長が言う

「……君たちは、"敵"とは何だと思う？」

「しゃらくせぇ！！やっちまえ！！」

うおぉぉぉぉぉ！！

(剣は、他の兵士の足止めに使ってるけど

防御に使ってしまえば、その兵士が防御してる時に

突撃してくるかもしれない……

白魔王に状況の説明をする前に

敵を殺してしまったのが裏目に出たか……

加勢してくれる気はないらしい…………)

兵士達は攻めてきている

考える暇などない

この、剣が一本も手元にない状況で

成人男性四人分の攻撃を、一度に防ぐ必要がある

一本では足りない

もし一点に集中した攻撃が来てしまったら

受け止め切れない可能性が高い

(……これで凌ぐしか…！！)

攻撃が来る寸前

彼女が攻撃を避けようとした瞬間…！

ガ

ガ

ガ

ギィィン！！

「……な、何だと！？

剣が……！！」

それは、四つの鋼鉄の破壊音

兵士達の攻撃が、一点に集中した一瞬に発せられ

高いトーンを奏でたそのリズムは

"亜光速"と言えた

白黒の女の前に立ち塞がる魔人が一人

その一瞬に、一人の魔人は

己が拳を突き上げ、四本の剣を破壊した！！

兵士には、一つの破壊音しか聞こえず

皆が困惑していたが

振り下ろしたその先に目線を上げると

その疑問は一瞬で解ける

「……白魔王！！てめぇ！」

「私はな。迷っているのだ

果たして"敵"はどちらなのかを。」

「……！？」

兵士達は、すぐに反撃してくると思っていたが

また話しかけられ、再び困惑した

「私視点、この"少女"は

私の大切な人を殺した殺人鬼だ

しかし……次に、君たちは私を殺そうとしてきた

さて……ここで問題だ。

私はどちらの味方になれば良いと思う？」

……

彼女は黙っている

兵士もまた、状況が分からずに

黙っていた

「……答えは簡単だ

"どちらも敵であり、憎悪を向ける対象である"

…………しかしそれは、あまりに短絡的だ。

そこで私は、こう考える」

「……？」

「どちらがより、"平和的"で

どちらがより、"聡明"で

どちらがより、"信用"出来るのか

それを考慮した場合……どちらに力を貸すかは

目に見えてわかるだろう……？」

「……！」

"少女"は驚く

その意外とも取れる白魔王の行動に……

「……くそ！！やれぇぇぇぇぇぇ！！！」

隊長は叫びながら言った

しかし、その時にはもう遅かった

「……周りを見てみろ」

白魔王が言う

「……！？」

隊長はその一言で、咄嗟に周りを見渡した

そこで、行動の全てが遅かったと思い知らされる

「……なん…………だと…………？」

周りの兵士達は、既に息絶えていて

一緒に攻めていった兵士でさえ

倒れ込んでいた

スタスタスタ

「おい……返事をしろ！！」

隊長が、一人の兵士に駆け寄る

しかし、腹からは血が出て、

臓器が丸見えになっていた

口からは泡さえも吹き出ていて、

意識はもうないだろう

「嘘……アタシ何もしてないわよ？」

「簡単だ。私はホワイトプロダクションを使った。

この魔人国には、至る所で私の能力が使われている

この城の石材を剣に変え、下から攻撃した。」

「そんな錬金術みたいなこと出来るんだ……」

「フン、この能力はその錬金術の

完全上位互換と言って良いだろう。

……隊長格の者も反省するが良い

この街で私と戦うということは

"この街全てと戦うことになる"ということを……」

「……さて、教えろ。誰の命令だ？

こんな人数で、私たちに

勝てるとでも思っていたのか？」

白魔王は、淡々と言う

「……くそ、くそ、くそ、くそ

くそくそくそくそくそくそくそぉぉぉぉぉぉぉ！！！」

「……その人、最初から思っていたけど

正常な精神状態じゃなさそう

問いかけにも応じないでしょう。

それを聞くより、先にここから出ましょう！」

「くそくそくそ…………」

「……ほら！！アンタくそくそ言ってないで

早く行くわよ！！」

白黒の女は、同情するように

右腕を引っ張り、連れて行った…………