第二の決戦
地平線に太陽が出始め
周りに光が溢れてくる
戦いは幕を閉じた
平和な一日の始まりだ……
すぐそこには空が見える
俺は寝そべりながら
体の胸に手を置いた
俺のこの力……
感覚だが、何の色の力も感じない
いや、正確に言うと
「色が変わり続けている」
この特殊な色の波動は……
間違いない、「無色」だ
あ、ちょっとまって今興奮した
色の波動って本当に感じるものなんだ!!
気を取り直して
俺の力は"相手の色を映し、コピーする"ものだろう
黒魔術師の黒を映し、使えるようになった
……これも感覚でそう感じているに過ぎないが
黒魔術師は、この能力のことを
何故かは分からないが、把握しているようだった
少しは自信を持って断言しても良いだろう
そして、黒魔術師の顔を見た時のあの声は……
一体何だったんだろう
あれも黒魔術師の記憶と考えて良いのだろうか
色々な疑問が残ってしまったな……
視点を変えれば、分かるのだろうか……?
「……よーし、坊主共
一件落着したことだし、ここは危険だ
直ぐに安全な場所に行くぞー」
緑のおじさんは、皆が一息ついたのを見計らって
移動しようとする
ここで一つ、立ち上がって
疑問をぶつける
「……?
他の代表の人達も来るから
入れ違いになるんじゃ……」
「あー、そりゃ真っ赤な嘘だ
白魔王を追い返す為のな
こんな場所で戦うなんて
俺ら以外わかる訳ないだろう
あの娘の能力無しじゃ、到底わかりゃしなかった」
「な、なるほど」
凄いリスキーな事をしたんだな
それが嘘だと知られたら、どうなってたんだろうか
「……そこのちっさいやつ」
カラスが小さい少女に話しかける
「…何よ」
どうやらこちらを警戒しているようだ
「……あ、ありがとう…ございま、し…」
「……まぁ、うん……それは良いわよ…………」
ひたすらに気まずい
カラスは黒魔術師と戦ってた時に
少しだが、不穏な空気を感じていた
そんな戦いを経た今
感謝の言葉も、ぎこちなくなってしまった
ジーー
少女が、こちらを見つめている
「……毛並、綺麗ね」
少々も話しかけてきた
「……お、おう……………………」
気まずい
「……今回は、ありがとうございました」
「おう、存分に感謝しろよな」
そう言うと彼は、笑った顔を全面に出して言った
「まぁ、それはそうとまさか坊主が
黒魔術師と同じ色使いだったとはな!
あの山ごと白魔王にぶつけるなんて
流石にあれは効いたんじゃねぇのか!?」
感謝の言葉を言った後
また、謎に思ったことを言った
「……余計なことを聞くけど
なんでこんな場所がわかったの?
ここに近いはずの場所に住んでたけど
こんな草原地帯、俺も知らなかったのに」
緑のおじさんは一息溜めた
「…それが何か、あの娘が
「あの場所に行かなきゃいけない」って
急に言い出してよ。
一度もこんな所行ったことねぇのに
不思議なこともあったもんだ」
……?
疑問を解消しようとしたら
また別の疑問が出てしまった
「少し立ち寄りたい場所があるので
少し待ってくれないでしょうか」
と、かたーい敬語で話した
「あーあー、そんな気持ち悪い敬語はいい。
早くしろよ。
ちっとばかし、俺からも今回の件について
話が聞きたいしな」
スタスタ
「…ちょいと待ちな」
「?」
「その右手に持ってる錆びた剣
見せてくれないか?」
「…良いけど」
まずい
黒魔術師の持ち物だとバレたか…!?
黒魔術師が死んだとあったら
大事になるのは明白だ……!!
しかし、既に見せびらかしているので
素直に見せることにした
カチャ
「ほう…取手に特殊な布が巻かれているな
グリップ力が凄いな
こりゃ握ってさえいれば離れるこたねぇだろう。
実際に持ってみても良いか?」
「はい」
カチャッ
「刃渡りは…30寸程度、長剣の類いか…
錆びついちゃいるが
研げばとんでもねぇ業物になるだろう……」
彼は、刃を触りながら言った
剣士代表の商品レビュー
素直にありがたい
「そんなに凄い物だったんだ…!」
ソシャゲでハズレだと思ってたものが
後で人権になるぐらい、嬉しい
「だが坊主
これ程の物、何処で手に入れた?
さっきは別の普通の剣使ってたよな。
何故だ?」
(鋭いな……どう答えればいいか……)
「それは……貰い物で
錆びてるから使い物にならないって思ったんだ。
俺は研ぐの下手くそだし
武器屋に行って錆びを取ってもらうつもりだった」
よし
この嘘なら、その場凌ぎにはなるだろう……
「ほーう!どんなやつから貰ったかは知らんが
そいつには感謝の念を忘れぬようにな。
俺の"千葉剣"に劣らない上物
大事に使えよ?」
カチャ
錆びた剣をまた手に取って
そして俺は、この場を去った……
スタスタスタ
……?
俺はカラスと少女のいる場所に来た
ツンツン
「おい」
ツンツンツン
「おい、何しやがる」
少女がカラスを突いている
「これは……私の髪の毛より整ってる……!?」
「いいから、ツンツン止めろ」
バs
ガシィ!
「な、何!?」
「チッチッチッ、甘いわね
私には未来が見える。
そんなわかりやすい動きの羽ばたきは
見る前に見切ってるのだわ!」
バサバザバサ
「くそ、離せ!離せってんだよ!!」
さわさわ
「この翼も立派なもの携えちゃって!!
え、待って何このツヤ!?」
「何だこいつ!?」
「………エリック?」
バババババッ
カラスは高速で翼を動かし
銀髪の少女の魔の手から抜け出した
「あ……行っちゃった」
少女は残念そうな顔をして言った
「ったく、それで何だよ」
(切り替え早いな)
「……黒魔術師のことだけど…………」
少し言いづらかった
けど、相棒である彼には伝えるべき事実だ
「……何だよ」
「来て欲しい、出来れば……一人で」
スタスタ
バサバサ
「!!!」
バサバザ バサッ
エリックが、黒魔術師を見つけた途端
翼を荒げながら近づいて行った
「……おい、嘘だろ…………?」
「…」
俺は、無言で顔を逸らしてしまう
しかし、これは「自分の罪」だ
俺は黒魔術師を、助けることが出来なかった
それを伝えることが
今の俺に出来る、唯一の使命
一人の青年は、顔をカラスの方へ
必死に向け、真実を伝える
「……ごめん……助けられなかった…………
最期に、俺の色を覚醒させてくれて…………
その後…………」
言葉を紡ぐのに精一杯だ
「……………
俺達のあの死闘は、何だったんだ……?
犠牲になった仲間も
これじゃまるで無駄死にだ………………」
カラスの声色が変わった
さっきまで高い声だったのに
段違いに低くなった
「………………」
くしゃくしゃくしゃ……
カラスは自分の頭を
翼で擦る
「あの野郎の………………
骨を一本一本折って……!
血管を全部、潰し尽くしてやるぅぅぅぅぅ!!!」
「……おい」
「…………すまん
暫く二人で居させてくれないか……………………」
「……ああ」
俺は少し、離れることにした
そして、無言でその場を去る………………
スタタッ
待たせているので、俺は小走りで移動した
「よっ、来たか」
緑のおじさんが右手を上げる
深い緑の中、再会した
「……」
「んだぁ?そんなしけた顔しやがって
何かあったか?」
「……少し。
いや、本当は少し所じゃないな…………」
「……相談、乗るぞ」
おじさんの顔が、真剣になった
「実は、さっきの戦いで
カラスの大切な存在を死なせてしまった……
血を止めれば、それでよかった。
なのに……
俺は、一つの人生を終わらせてしまった…」
「……そうか。」
俺は、それが黒魔術師とは言わないようにした
暫くの間、沈黙が流れる
「…俺たちが、もっと早く着いていれば
こうならなかっただろう。
何もお前だけが背負うものじゃない。
それにな……」
「……?」
「そいつ、きっと"幸せ"だったはずだ
死ぬ前に、側にいるやつが自分を殺すやつだなんて
戦士には当たり前のこと。
だが、きっと坊主はそうじゃなかったろう?
死ぬ瞬間に、側に居てくれるだけでも
冥利に尽きる程、嬉しいもんなんだぜ?」
「……そう言うものなのかな」
「勿論そうじゃない可能性もあるだろうなぁ
酷な話、絶望の中死んでいったのかもしれねぇな。
これも、当然あり得る。」
「……くッ………………」
俺がもっと強ければ……!
もっと早くに色撃が使えるようになっていれば……!!
「俺はこの戦いで、何をした……?
結局の所、俺は
最後にカラスと白魔王を引き離しただけで
何の役にも立っていないッッ……!!」
青年は、自分の無力感、罪悪感……そして後悔
それは初めての経験だった
(若いなぁ……若すぎる程に)
アラサーのおじさんは
その姿を見て、少し嫉妬した
「…おじさん
ちょっと話に付き合ってもらって良いかな……」
「良いぜ?」
と、おじさんは笑いながら言った
少年時代に……
いつの間にか、現実を見るようになった
数々のヒーローを見てきた
悪者を倒す、とてつもない力を持った英雄
声を上げれば、他の人がついて行くカリスマ
"そんなヒーロー《えいゆう》は居ない"
子供の癖に、そんな考えを持っていた
だから、仮○ライダーとか
戦隊ものとか、全然楽しめなかった
子供は何にでもは成れない……と、考えている
子供は意外と現実を見て、真実を愛する
子供は、ただ経験が足りないだけの「大人」なんだ
その大人は自分より下の相手を見下す
年齢的にも、精神的でも
大人も子供も、人間としての「器」は
例え年齢が大人が上だったとしても
子供が上回ることがある
そこにあるのは"経験の差だけ"で、他に何もない
だけど大人は見下す
そして
「自分がその大人以下の存在」だと言うのが
妙に現実味を帯びていて、「否定が出来ない」
現実を見ているから、それを子供は信じるんだ
過小評価を受け止めて
すごく良い評価は現実味がないので
「そうじゃない」と考える
大人になるにつれ、自分を信じられなくなっていき
可能性を狭めていって…………
そうして人は"凡人"となる
その、凡人というのが…この俺なんだ……
(……どうしてそこまで現実を見ているのに
剣士なんて夢物語の代表
みてぇなのになったんだ…?)
と、おじさんは笑いそうになったのを必死に耐えた
「もし、環境が違って
自分がいつもすごく良い評価を貰い続けるような
"天才"だったなら……
こんな結果にはならなかっただろうに…………」
「……坊主がどんな人生を歩んできて
どんな苦労したのか、俺には分からん。
だが…一つだけ言えることがある
それは
この世には言葉通りの"天才"など存在しない。
あるのは真より飛躍した……
ただの"虚像"に過ぎねぇ
ただ一つ、存在する天才は
"努力の天才"だけだ」
「努力……」
「ま、そんな訳だ。
凡人だか天才だかな〜んて
気にする方が馬鹿なんだよっ」
ポンッポン
おじさんは俺の肩を手で軽めに叩いて
俺に笑いかけた
「それでも……これは俺の"罪"だ
何か出来ることがあれば…………」
「……坊主は"後悔"してるんだな?」
「……うん」
「…そこまで後悔しているのなら
そいつを……"絶対に忘れるな"……
お前がそいつのことを忘れることが無い限り
""そいつの人生は報われ続ける""
そいつの存在のことを……
絶対に、忘れるんじゃねぇぞ!!」
「……!!」
その言葉を聞いた瞬間
瞼が軽くなったように感じた
黒魔術師がどんなやつだったかは知らない
だけど…俺が生きて、忘れることのない限り
黒魔術師の人生に、意味があったんだと
そう…報われ続けるのなら……!
「……俺の言葉を聞いて
少しはスッキリしたか?」
「……何から何まで、ありがとう」
「ハッ、そりゃ良いこった」
「それじゃ、また待たせちゃうな
まだ用は済んでないんだ」
「おう、行っとけ行っとけ
今度は、カラスも一緒に、な」
こんな俺だけど、胸を張って
エリックに会えそうだ
緑のおじさんに、最大級の感謝をして
俺は"第二の決戦"へと
向かうのだった…………………………
「ほんとあいつは、若ぇなぁ………………」
スタ スタ スタ スタ…………
決戦は、形を変えて繰り返される
今度は、過去を断ち切り
次へと進む為の決戦場……
そこに今、辿り着いた
これは、普通の殺し合いよりも
大事なことだ…………
そう、気を引き締めて、第一声を放った
「……エリック」
「…………お前、か……………………」
カラスは、酷く声が霞んでいた
頭から血が流れている
自害しようとしたんだ、きっと…
「……"俺はもう謝らない"」
「……何だと?」
カラスの低い声に
若干の怖さを覚えた…が
ここで引いては、駄目だ
俺は緑のおじさん程、よく出来た人間じゃない
誰かを説得出来る舌は、持っていない
だけど、これは俺の罪だ
こうしてカラスが絶望するのも、俺の罪
その罪は、決して消えない
地獄の業火に今、焼かれているんだ
そしてその罪を、カラスと話をして
罰として受け入れよう…………
「だから……俺はもう謝らない!!」
「こ……この、野郎…………
自分が、何言ってるか、わかって………………」
カラスの怒りが、身を引き裂くほど伝わる
こっちも伝えるんだ、自分の考えを!!
「ここで謝ったら……
それはきっと、「いけないこと」なんだ」
俺は一息ついて、言った
「それは……それは全て、"終わったこと"だからだ
結局俺は何もしない、しなかった
したのは…強いて言えば
最後にエリック達を白魔王から引き離した程度だ
だけど……この話も全て、終わったことなんだ」
「……終わったこと、だと…………」
「ああ、全ては終わったこと。
カラスが黒魔術師とどんな関係だったかは
詳しくは知らない。
だけど、俺達は
"次の舞台"へ行かなきゃいけないんだ!
いつまでも引きずっていては
あの世にいる黒魔術師も、報われない…!!」
「…………」
カラスは沈黙のままだ
この沈黙も、また怖い
「今、俺達が黒魔術師に出来ることは
振り返らずに、前に進んで……
"生きる"ことだ!!」
「…………」
カラスは沈黙を続けている
(はぁ……やっぱり
緑のおじさんみたいに
上手く言えないよなぁ…………)
「…こんなの、理想論だよな
分かってる。けど……
黒魔術師が死んだ後、影の世界に飛ばされた
その時…また会ったんだ。黒魔術師と」
「……!?」
「黒魔術師は、そこでは現実じゃ考えられない程
笑ってたよ。隠さずに。
そして、黒魔術師が死ぬ前、言ったんだ
「三億年の歴史を思い出せ
自分という存在を思い出せ」…………て」
「……笑ってた…だと………?
俺の前じゃ…笑ったことなんて
一度もなかったのに……
それに…何だ、その台詞……らしく……ねぇな…」
「ああ……だから……………………」
「……?」
「俺について来てくれないか…?
"何故こんな場所に白魔王が居たのか"……
"黒魔術師は、何を知っていたのか"……
俺は、"その意味"を知りたい!!
その為に…」
「""カラス達の力が必要なんだ
俺が、カラス達の生きる理由をやる……!
ギブ&テイクだ""――」
「……!!!!!」
その瞬間、カラスが涙を流した
「あれ……突然目から汗が…………
太陽が、二重に見えやがる…!!」
霞んだ声が今は大きく聞こえる
今のエリックに、生気を感じる……!!
「エリック…!」
「あぁ……懐かしい気分だ
黒魔術師と昔、こんな話したっけなぁ……」
「え、そうなの!?」
「ハハッ、自覚無しかよこの野郎
ったく、あのまま絶望に染まっていたら
どれ程楽だったんだろうな……
今は、希望に満ちていて
徹夜した脳に毒なんだよ…!」
「良いじゃん、それ」
俺は笑いながら言った
「まぁな……へへっ」
カラスも、笑った
(なぁ、黒魔術師……
アンタの意思が、まだここにあるぜ……?)
「えーと……名前は………」
カラスは、後ろめたい気持ちで言った
「カガミ バン!」
俺は、胸を張って名前を言った!
「そうか、バン
お前にまた助けられたな……
黒魔術師との最後の思い出を
絶望で終わらせないでくれて
本当に、ありがとう……」
「少しは落ち着いた?」
「まぁな!今はもうスッキリだ!!」
あれから10分程経った
もう涙の跡は無い
「それで……黒魔術師はどうしよう」
もう、屍は異臭を放っている
体が溶け始めているんだ……
「そうだな…黒魔術師の遺体は
俺達が"統率者"の所へ運んで行くよ
その時は、俺の口から皆に説明する
安心しろよ?俺の口は達者なんだ。」
と、カラスは得意気に言った
「そりゃ心強いけど
なんで…統率者の所に……?」
「黒魔術師には家族が居ないんだ
縁を切ったのかどうかは知らん
黒魔術師と縁があったのは
俺達と統率者だけだ」
「家族が……そうなのか」
「そんで
あいつは統率者の側近の一人で、部下だった。
暗殺を任されていたんだ。俺達は。」
「……暗殺ぅ!?」
「まぁ、そういう関係ってことだ。
この事を報告しなきゃ真っ先に消されちまうぜ?」
「ひえっ……」
「そうなる前に、早く行かなきゃ、な」
スタスタ
バサバサ
「お、来たか坊主共!」
「お待たせしましたぁ!!」
エリックと俺は、息ぴったりで言った
「ほんと、待たせすぎなのだわ!」
少女が腕組みをして言った
「まぁ、何か用があったらしいし
大目に見てやろうぜ?」
そうすると、カラスが口を開く
「突然だが、俺らカラスは別行動させてもらう
俺達はまだ用があるんだ。
なぁに、空を飛んで行くんだ
敵には会わないだろうよ」
「そうか……
わかった。カラスは別行動とする。
坊主は、俺達の側を離れるなよ?
これから行くは"梅桜病院"!
そこでしっかり休んでけ!!」
そうして、第二の決戦は幕を閉じた
物語は、次の舞台へと足を進める……
color world "却我世界大会編"へと、続く…………
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