合格





「さて……君達は"合格"だよ。

特別に同行を許そう!!」


小さな子供は笑顔で言った


「合格……?何を言ってるんですか……?」


シュヴァルツは疑問そうに言った


「そう。合格。

君達は、僕たちの今の問題の一つ

人材不足を補えるほどの強さを持っている。


その証拠にアイリスと戦って、僕の目には

その刀を止めていなければ

君が勝ってたと思うんだけど、違うかな?」


「……小生は、あの時絶対に剣を止めた。

それを読まれていた。小生一人では

確実に負けていた。」


「でも、それはアイリスだったからだよね?」


「……」


「まぁ良いや。

もう君はアイリスとは戦わない。

これからは、真実を共有する"仲間"として

僕たちのサポートをして欲しい!!」


「ちょっと!!

勝手に話が進んでるんだけど、

一言も貴方達の仲間になるなんて

言ってないわよ!?」


ナガサキが言った


「そんなこと言って、本当にいいの?

多分、この世界の真実に最も近いのは

僕たち"ビースト"だよ?」


「……待て。まだあなたが何者だと言うことも

小生達は詳しく知らない。

初代ビースト……?どう言うことだ?」


「そっか。そうだよね。

初代ビーストなんて言われても

全くピンと来ないよね。どこから話そっかな〜」


「……仲間になるその前に、

あなたは、第七医師団の味方ですか?

それとも……」


シュヴァルツが睨みながら言う


「ん〜。それはまだ決まってないな〜

この前僕たちの軍が

君達第七騎士群に負けたけど、

あれはそこに居たビーストが弱かっただけで

僕自体は、そんなに恨んでないよ。

食料も十分手に入れたしね。」


初代ビーストは、冷徹に言った


「同胞が死んでも悲しくないのか……?」


「全然?あいつらは僕と同じキメラだけど、

姿形も違えば習性も違う……


僕と同じ種族とは"今は"到底思えないし、

どちらかと言えば、君達人間に同情するよ。


まぁ、この同情も、

そうなるよう作られたんだけどさ。」


「……あなたは、今のこの世界をどこまで知って、

裏組織のことをどこまで知ってる……?」


「それは順を追って説明するさ。

まぁ、まずはこのヒヒュード合衆国について

現場を交えて説明出来たらな〜。

まずは、ここら辺にある支部を叩くとするよ。」


「支部……!?」


「うん。そうだよ。その組織は

世界各国に支部を建ててるんだよ。」


「何が目的で……!?」


「支部は、世界各国に散らばって

情報網を敷いている。

キメラ部隊もそこには居て、

一箇所でも解き放たれれば、

小国が機能不能になるぐらいの武力だよ。」


「な、なんていう……」


先生は"勘違い"をしていたんだ……!!


800年も時間が経てば組織は大きくなって、

神王国だけじゃなく、

世界各地に自分の組織を置いていくんだ……!!




一度冷静になろう……


今は、勘違いも含めて

この初代ビーストと言われる子供から

一つでも多く情報を引き出すんだ……!!


「…………そこまで情報網を敷いて

一体、何を目指しているって言うんだ……?」


「……ヒヒュード合衆国を利用し、

アルカナ大陸を統一させてから

キメラの軍隊を用いて騎士元帥を暗殺し、

世界を裏から操る"支配者"となる……

それが奴ら、ジェネシスの目的さ。」


!!??


「もちろん、あの騎士元帥も

そう簡単には死なないだろうけど……

かの伝説のラース・ドーヴェルでもないし、

一個人があの組織と敵対して生き残るのは

絶対不可能だよ。」


「……あなた達は、何が目的で動いているんだ?」


「基本的には、ビーストが生きていればそれで良い。

種族が繁栄して、人類とも共存してくれれば良いな〜

って思うけど、多分今のままでは、

きっと無理だろうな。」


「……聞きたいのはそう言うことではない。

これからしようとしているのは……

あなたが果たそうとしているのは

一体どう言うことだ?」


「……ビーストの名誉を世界に知らしめる。

ジェネシスの陰謀を止めて、

ビーストに人権を認めさせる。


僕達は、ジェネシスに色んな実験をされてきた。


皆最初は、僕と同じように言葉を喋れたんだ。

だけど、他に開発されたキメラより

戦闘能力が低かったせいで、

戦闘能力を上げる為の実験をさせられた。


それはもう、人間扱いはされなかったよ……

いろんな奴が自我を失って、

いろんな奴が実験失敗により、死んでいった……


いつしか、この人間の体を持っているのは

僕だけになった。


それで、僕は思い立った。

僕達もいつ自我を失うか分からないから、

言葉をギリギリ理解出来る奴らを率いて

その研究所を脱走したんだ。


そして、僕達の人権を世界に認めさせる為に、

今こうして、人類の味方になろうって訳さ。」


「……世間一般から見て、

その人間に敵対視されてるようだが……?」


「それは……そうだなぁ

食料を普通に渡してくれるはずもないしなぁ。」


「少なからず、ビーストを恨んでいる人達は居る。

小生達の第七医師団にも……被害者は居る。

その人達は、一生あなた達を恨むだろう。」


「……まぁ、それはこの目的を果たしたらの問題だよ。

まずは目先のことからね。」


「……」




チャキッ


シュヴァルツは刀に手を置き、

戦闘体勢に入った


「……やはり小生、あなたのことは信用出来ない。

それに……アイリスさん!!

まだどうしてこうなったかも聞いていないですよ!!」


「……」


アイリスは無言を貫いている


「アイリスさん……!!

もしかして、あなたが第七騎士群の

スパイだったんですか!?」


「……そうだね。わたしの本当の事も

言わなくちゃね……」


「本当の……事?」


「わたしは……"ビースト・アイリス"。

火の魔法の扱いに特化した……"ホムンクルス"だよ。」


!!!??


「アイリスさんが……ホムンクルス!?」


シュヴァルツは、その言葉を飲み込めずにいる


「そう……わたしは成長するホムンクルス。

他の人が使えないような火の魔法を使えるのは、

事前に"そうなるよう"作られたから……」


「うそ……それじゃ、どこで作られたの!?

作られた意味は!??」


ナガサキが混乱しながら言う


「……それは、三日前のこと……前のわたし、

アイリス・スカーレットを奪還する為、

"あの人"がビーストのアジトに乗り込んできた時…」


「あの人……?」

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