四時限目 平和とは





小生は、一人旅の支度をし

皆には内緒で旅出つことにした


「これが最後になるかも知れないのに……

本当にこんな別れ方で良いのか?」


「皆には心配させたくないので……

いや……本当は、寂しくなる別れ方を

したくないだけです……」


「そうか……」




「……先生、最後に聞いて良いですか?」


「あぁ……何でも聞いてくれ」


「人類は……人間は……小生達は……

この戦いが終わった時、本当の平和が

訪れると思いますか……?」


「難しい質問だな……

そうだな……うん………………"考えた"」


「ぜひ聞かせてください!!」


「人類は過去、世界平和と呼べる日は

一度も無かった。


戦争、災害、人災に差別……

そんな障害が、何度も襲いかかってきた。


平和な世の中でも、殺伐とした事件が起きる

人によって平和の尺度が違い、

考え方が違い……そして送る生活が違う。


人によっての平和が違ければ、

人の日々の生活が違うと言えば、

どれだけ全員が幸せになれる"世界平和"が

難しいことなのか……分かると思う。


"平和"とは理不尽な物で、平和が成立するには、

何処かが戦争をしなきゃいけないんだ。


幸せと同じだ。


皆が幸せで自分も同じという状況だとする

その時に自分は、

果たして自分のことを幸せと思えるだろうか


平和も同じように……

何処かの国が不幸せで、

自分達の国が比較的幸せな時にだけ、

"平和"が訪れる。


平和と言う言葉は、"平な和"という言葉で出来ており

絶対に存在しない物なんだ。」


「おー!!」


「だけど、本当に世界平和にしたい

"皆が"幸せになる世界にしたい……

そう思うならば、やれる方法は二つだ。


一つは、世界の人77億人を自分達の国に住まわせ、

自分と同じ性格にし、

自分と同じ生活を送らせる……


言わばロボットにすれば全てが解決する。


……すまない。こっちは絶対に不可能なことだ。

だけど、これも一つの方法として考えてくれ。

数百年後はもしかしたら

人類がロボットになっているかもしれないからな。」


「もう一つの方は……?」


「もう一つの方は、比較的現実的だろう。


もう一つの方法……それは、

"皆の中に悪人を含めない"ことだ。


本当の平和が訪れないのは、

大体こいつらのせいだ。


性格の悪い人、悪事を働く者、

欲望の為なら何でもするような者など……

君が考えるような悪人で良い。


その悪人達は、人々を騙したり、

争いを起こそうとしたり、

人を平気で亡き者にしてしまう……

こんな人達がいたら、1000年後もきっと真の平和はない


この時に役立つ便利な言葉がある。

それは"倫理"だ。

倫理観は人を幸せにし、悪人を滅し、

平和に繋がる。


この倫理観にそぐわない者を悪人として排除し、

本当の善人が幸せになれるようになる世界……

それを目指すんだ。」


「先生、それでも……」


「あぁ。"比較的"現実的なだけだからな。

どこにでも居るDQNのように、

底無しにあいつらは溢れてくる。

これも無理だろう。」


「なら、どうやれば平和になるんですか……?」


「……これは少し卑怯だが……

人の不幸せを笑い、"自分だけの平和"を作ることだ。


幸せと平和は直結する。

そして人によってその日だけは"平和"になることがある


その人が幸せな日々を送れたのなら、

そこに平和があると考えても良いんだ。

世界平和やら人の幸せやら言ったが、

平和なんて、安っぽい物なんだ。」


「なるほど……!!」


「今時幸せはコンビニでも売っている。

108円だ。」


「108円!!?」


「誰でも幸せになれるってことだ。

……私が言いたかったのは、

平和とは、いつもすぐ傍にある……ということだ。


安っぽい物に安っぽい言葉、

マクドナルドに売っていそうな

ハンバーガーが出来たな」


「この場合、物と言葉の二つだから

バンズだけですね……ハハハ」


「フ……かもな。」




「それじゃ、先生がそう言うのなら、

その安っぽい平和の為に……

小生は、戦い続けます!!」


「私も同行したい所だが……

それでは医師団が成り立たなくなってしまう。

本当にすまない……」


「大丈夫です。手紙は必ず送るようにします!!」


「……これだけは覚えておけ。

幸せや平和は安っぽい物だが、

その価値は人によって違うってことを!!」


「!!……はい!!」




こうしてシュヴァルツは、アズキを追って旅立った


アイリスとは違い、

今回は同行する余地もあっただろう


しかし、ヒヒュード王の死亡の第一発見者

ということもあり、

民衆には疑いの目でみられているだろう……


ここで医師団ということを止め、

いきなり戦闘集団に変わってしまったら

この国の何処かにいるはずのローブ族が

協力してくれなくなるかも知れない……


このリスクは避けておきたい


そして何より……

私はシュヴァルツのことを信頼している


何があっても、

彼は剣一本で全てを乗り越えてきた"大剣豪"


その華麗な剣捌きで、

どんな強敵や障害が立ち塞ごうと

乗り越えていけると、私は信じている……




名誉騎士城 一階


「……という訳で、

アズキとシュヴァルツは今別行動だ。」


……


「先生……」


(流石にアーフィンにも勘づかれるか…?)


「感動しました!!

俺も負けずに、医者の護衛役として

頑張らないと……!!」


「あ、あぁ……!!

私たちもがんばるぞ!!!」


オーーー!!


カツカツ


「ヴァーズさん!」


奥からヴァーズさんが歩いてきた


「まだまだ患者は居る。

どうやら民衆には、第七医師団の存在が

気がかりでしょうがないらしい。

自分達が害の無い組織だと言うことを、

人々に教えてやれ!!」


ハイ!!




こうして私達は、医者としての活動を続けた


途中で別れたシュヴァルツとアイリスに、

神の祝福がありますように……

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