ジェネシス





この後、先生にこっ酷く叱られた


叱られたのはいつ以来だろうか


シュヴァルツは、ジオルに叱られたのは

これが初だと言う


…………………………




「二人とも、暫くここに居ろ!!

頭を冷やしてから戻って来い!!」


「「はい……」」


スタスタスタ


ジオルは叱り終え、

その場を立ち去っていった


ヒュー……


優しい風が無言の空間を貫く


二人の間には、ただただ風が吹いている


「……周りの街でも歩いてこようか。」


シュヴァルツが気を使うように言う


「……それなら、さっき馬車で通った

商業区を覗いてみませんか」


二人は気まずい雰囲気の中

トコトコと歩き出した……




……


「……あの戦い方、

本当に怪我明けだったんですか?」


「……さっきの話の続きですか?」


「あの勝負、小生の勝ちとは言い難い……

しかし、あの話の内容は大いに気になる内容だった」


「……おれはこの2年間、

ジェネシスという裏組織の一員として活動してた。」


「ジェネシス……裏組織!?」


「はい。先生にも話してないけど……

50番境界戦線の時に負傷したと偽り、

研究者としてそこで二年間を過ごしてた。」


「どうやって……?」


「勿論、コンタクトを取るのは難しかった。

拠点の場所はずっと変わり続けているからさ

今もまた、変わり続けています……」


「!!?知っているのか……!?

なぜ前に言わなかった……!?」


「……」




「……正直、あの組織と戦うのは

やめたほうが良い。

この800年という歴史の裏で、

何が行われていたのか……


先生が昔世界征服をしようとしていたのを

なぜやめたのか……

あの若かりし頃の先生は、知りすぎたんだ……

何もかもを知り、全てを忘れた……」


「……?待て、アズキは何を知っている……!?

先生と過ごしていた学生時代に

何が起こったんだ!!?」


「……一つ言っておく。

おれはジェネシスのスパイじゃない。

おれが第七医師団にいるのは、

本当に偶然なんだ。」


「話が纏まっていない……!!質問に答えろ!!」


「……先生の右腕はシュヴァルツさんが相応しいと思う

……おれが先生を支えていくには、

あの頃はまだ、若すぎたよ……」


スタ スタ スタ


「どこに向かってる!!

そっちは皆と居る方向と逆だ!!」


「さようなら……

思えばあの梓月病から、狂い始めたんだな…………」


ビュゥゥ……


「……!!」


強い風が吹き、まぶたを一瞬閉じた後

すぐそこに居たはずのアズキは

世界から消えたように、ひっそりと居なくなっていた


…………………………




名誉騎士城 地下一階 医務室


「グリーン!!」


パァァァ……


「おぉ!!お嬢ちゃん、ありがとう!!」


「フーン!!この程度、朝飯前よ!!」


「カレンも上手くなったな」


「隊長の言われた通りにやってるだけですよ!!」


ダッダッダッ


「先生!!」


「……?シュヴァルツ、アズキは?」


「それが……」


小生はアズキの言っていたことを

包み隠さず全て言った


「……何だと!!?

アズキが裏組織の一員……!?」


!!!


その場にいる全員がその事実に驚いた


「はい……小生も、今しがた知ったばかりで」


「アズキはどこに居る?」


「目の前に居たんですが、

消えたみたいに視界から居なくなり……」


「そうか……」


ザワザワザワ


「……皆、落ち着いてください!!

アズキが居なくなったからって、

小生達のやるべきことは変わらない……

医者として、まずはやるべきことをやろう!!」



「シュヴァルツ…!?」


「……この後二人で良いですか?」


「あ、あぁ……?」




「本当に、申し訳ございません……!!!」


シュヴァルツは、綺麗に背中を90度に折り

頭を深く下げ、謝罪の一言を言った


「シュヴァルツ……!?

急にどうした!?」


「小生……少しばかし、

自分に酔っていたのかも知れない……

騎士団最強の剣士の一人と言われ、

第七騎士群の「時期大隊長」と先生に言われ……

小生は"堕ちた"。


アズキの胸の内に秘める事を無理やり聞こうとし

真剣勝負をした……

途中で先生が来て決着は着かなかったけど、

小生との関係性に亀裂を生むようなことをした……」


「何もシュヴァルツだけが悪いことじゃない……!!

私もそれに気づけなかった……

この結果の原因は、私にある!!

責任を部下が負うことはしちゃいけない!!!」


「……それでも、小生は……

仲間を信じることが出来なかった……

……自分の尻ぐらい、自分で拭きます。」


「お前……」


「それに……小生達は、先生に頼りすぎている。

今回のことは、アズキと小生が

別の任務をしに旅立ったと

適当に言っておいてください」


「それじゃ、シュヴァルツはどうするんだ……?」


「ここの一般市民になりきり、

アズキの居場所を探し出します……!」


「……手紙だけは欠かさず出してくれ。」


「1週間に一度は名誉騎士城に手紙を出そうと思います。

短い間ですが……お互い、生き残りましょう!!」


「あぁ……!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る