投獄





「着いたか」



目の前に見える、大きな石レンガで出来た

"ヴァールテクス新王城"


内装は赤いジュウタンが敷かれており、

豪華なシャンデリアが天井で光っている

豪華絢爛というには余りある華やかさがあった


「皆!!ここからは静かに移動しよう!!」


シュヴァルツが隊列を整えながら

追いついてきた


「すまないな……指示を仰がせてしまった」


「次期隊長として当然のことをしたまでです。

……先生、馬車の中で誰と話されていたのですか?

中に居たのは先生だけだったと思いますが……」


(シュヴァルツにはバレるか……)


「気にすることじゃない。

今は目の前のことに集中しろ。」


「……?わかりました。」




ジュウタンの導く先


そこには、見上げるほどの木製の大きな大扉があった


恐らくこの先が玉座の間に繋がるのだろう



「周りには誰も居ないが……

開けて良いのか……?」


私は、辺りの静けさに不安を抱きながら

そっと押すように、大扉を開けた


キィィ……


!!!??


古めかしい木の音が鳴った先

赤のジュウタンの敷かれた道の向こう


そこには、金の王冠を被った

白い服に赤のマントを着た

髪が茶色いチョビ髭男……

いや、私はそれを見た訳ではない


私が見たのは、槍で貫かれた腹部

風穴が開いた、真っ赤に濡れた

凄惨な最期を迎えた王の姿だった




タッタッタッ


「何者だ!!」


それは小隊規模の、長剣を持った兵士達


今にも戦いを挑んできそうな

甲冑を着た兵士


その兵士が、大扉の向こう側に目線を合わせる


「……!!?お、王が……!?」


「と、捕らえよォォォ!!」


ダッダッダッ


「わ、ワタシ達は違うわ!?」


カレン達が混乱する


「……ここは抵抗するな!!

余計なことをしては、この現場を"作った"者の

思う壺だ!!」


!!


「何を訳のわからんことを言っている

両手を上げろ!!抵抗するな!!」


私達は、どうやら何事かに巻き込まれてしまったらしい

その答えだけは、全員が辿りついていた……



…………………………




「なんッッッッッで入国早々!!

牢屋に入れられなければいけないの!!?」


カレンが怒りをあらわにする


「石が流れて木の葉が沈むとは、

よく言ったものだな……」


「シュヴァルツさん、なに悠長なこと……」


アーフィンが落ち込んだ表情で言う


そうだ、ここは牢屋


湿った石が壁や床に敷き詰められていて、

その壁に手錠で張り付かされている


小生は、心を静かにし

落ち着きを忘れることなく

現状を客観的に見据える


「……皆、恐らく小生達は

仕組まれた罠にはまってしまったのでしょう。」


「!!?何よそれ!?」


カレンが咄嗟に目線をこちらに向ける


「カレンさん、長話になるので

聞きながら頭を冷やしてください。

さて……先生ならば、どう話すのだろうか……」


小生は、まずは考えついたことを整理し

話の順序を合わせながら

丁寧に今起こったこと、そして

これからのことを言うことにした



「……小生達はヒヒュード13世が死んだ所に出会した

しかし、小生が見たところ

血がまだ固まっていなかった……


恐らく、小生達より先に来た何者かによって

ヒヒュード13世は殺された。


そして何故殺されたのかは分かるだろう

小生達に罪を着せる為だろう。」


「待って!?それっておかしくない!?

なんでワタシ達なの!?

なんでワタシ達が来る時間を知ってたの!?

これからワタシ達はどうなっちゃうの!!?」


「おい、落ち着けって」


「……ごめん。到着早々こんなことになるなんて……」


「しかし、カレンさんのおかげで

疑問点も出てきたというもの。


何で小生達かは……三通りある。

それは、先生の言っていた騎士団と敵対している

ある組織がこうなるよう図ったか……

或いはこの国に小生達が邪魔なのか……

はたまたその両方か……」


「シュヴァルツさん、

二つ目のこの国に俺たちが邪魔って

何でそうなったんだ?」


「……実は、先生と何者かがさっき馬車の中で

話していたのを、僅かながら聞いた。

小生の耳は地獄耳なのでね。」


アーフィンが慌てて聞く


「それってどういう!?」


「……この国の騎士軍は腐っている……と。」


!!?


「もちろん空耳だったかも知れないけど

小生には確かにそう聞こえた。


この事件を起こしたのは、この国の騎士団……

ヒヒュドラード騎士軍だろう。」


「……?何で王を守る為の騎士が

王を殺さなきゃいけねぇんだ?」


「小生も全くわからない。

しかし、王よりも大事なものがあったんだろう。

……例えば、政治の実権とかはどうだろう」


「な、なるほど。」


アーフィンが震えた声で言う


「小生達の住む騎士連邦国は

簡単に言えば、軍国主義の果て

どんな組織よりも強い組織が権力を握る

言わば"実力至上主義国家"として名を馳せた。


……いつでも三国志みたいな物だが、

技術が発展し、今の我らの政治の実権を握るのは

秩序正しく、他の追随を許さないドーヴェル騎士団で

意外と治安が良い


"いつでも争うことが出来る"という"本当の自由"が

この騎士連邦国の、平和に繋がっている」


「それがヒヒュード合衆国と俺らの国の違いか。

いやー、俺はそう言うの聞くと頭痛くなる!!ギブ!」


「国柄の事情はこれで終わりにしよう。


ヒヒュード合衆国の王は小生達の騎士団とは違い、

力を持たず、力関係が軍と逆転し

容易にこの状況にすることが出来た……


いや、流石に小生もたまたまその現場に乗り合わせた

とは思ってないよ。」


「なるほどな〜」


「……さて、話を戻そう。


何でここに来る時間をこの状況を作った犯人は

知っていたか、については……」


この第七医師団にスパイが居る


!!?


「……ごめん、これしか思いつかなかった。

皆に人を疑わせるつもりはこれっぽっちもないけど、

小生はこの可能性は高いと思っている。」


「な、何ですって!!??

それじゃあ、どうすれば良いの!?

いつでも奇襲されちゃうじゃない!!?」


「そう……先生の言っていた通り、

「いつ死んでもおかしくない」

……それが現実味を帯びてきたね。」


「対抗策は……」


アーフィンが希望を求める声で言う


「……ないだろうね。」


「嘘だろ……?」




「これに関しては、脳裏にしまっておこう。

今考えても仕方がないことだしね。


最後に、小生達はどうなるかだが……」


聞く二人は生唾を飲む


「多分先生がどうにかしてくれるだろう。

手錠をかけられている限り、

小生達は何も出来ない。」


「えぇ……」


アーフィンが更に落ち込んだ声で言う……


「……ワタシ達は、

完全に「詰み」というものなのね……」


「オラぁはそうでもないと思うぞぉ!!」


!!!??




「カイゼンさん!?」


「オウ!!シュヴァルツ達、今助けるぞぉ!!」


カチャカチャカチャ


ガチャ


カイゼンは持っていた鍵束にあった鍵を

順番に牢屋の鍵穴に差し込んでいき、

牢屋の鍵を開けた


「安心しろぉ、周りの兵士はワンパンで倒した!!」


「それより、どうやって脱出したんですか!?」


シュヴァルツが慌てて聞く


「あんなぐらいの手錠、

オラぁはちょっと力入れればコワれるだぁ!!


そんでもってよぉ、

こんな力の入れやすいスキマがある鉄の扉ぐらい、

ちょっとヒッパれば

脱出出来るぐらいのスキマになる!!」


「カイゼン先輩すっげぇ!!」


アーフィンが憧れの眼差しで言った

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