黒魔術師




ダッダッダッダッダッ


ギャォォォォ


「……どうしたんだい? 指揮官」


ギャオッギャオッ


「……何?人間にやられた?

この我々、至高たるビーストが?」


ギャォォ……


「……魔法とは……!!

あの男以来、800年振りに聞いた単語だよ……!!

ほうほう……人類が魔法を使えるようになった……

ということは、ローブ一族が

またやらかしてくれたようだね……」


ギャァァオ?


「そうだね……800年ぶりに人類に興味が出てきたよ。

"ジェネシス"の陰謀を止める為には、

その魔法を操るという軍隊に交渉したいね……」


ギャン!!


「……先に"煉獄師"と話す必要がある、か。

火の魔法か……昔居た炎の魔法使いには

苦戦したね〜……」


ギャギャ


「……なに?煉獄師は小柄な少女だって?

ハハハ……これは面白くなりそうだ……」





東アルカナ大陸 ヒヒュード合衆国


中央都市 シンジュラ城下町




太陽が天井に昇っている


雲がまばらに泳いでいる


黄色いレンガの道の果て

大きな東国の王城が

光を反射し、煌びやかに白く輝いている


アルカナ大陸のど真ん中

様々な肌の色をした人々が歩いているここは

アルトツカ商業地区


売店が数え切れないほど立ち並んでいる


私達は今、馬車で道を進んでいる




「さすがだな。綺麗な街並みに盛んな商業地区

更に立派な王城もある。先進国の証だな……」


「……そう、思うか……?」


「!!?」


私の座っている座席のすぐ左隣

そこには、黒いフードの掠れた声が特徴的な

ローブ男が座っていた


「一体どこから……!?」


「……今回は……殺す為にきた訳ではない…………

医師団、か……どんな用があって、ここへ来た……?」


「……ローブの布の裏に隠している物を下に置けば

教えよう。」


「……」


ガサガサ


ゴトンッ


それは、刃渡り20センチ程度の短剣


しかし、その刃には紫色の液体がついており……


「何だそのナイフは……!?毒ナイフか!?」


「……騎士軍"暗殺部隊長"、黒魔術師

このナイフは愛用でな…………

この毒が皮膚に当たれば、痛みもなく逝ける……」


「……一体、あなたは何者なんだ……!?」


「…………………………」


「?」


「……何者でもない。生きる理由はなく……

絶望する意味さえも、忘れた……生きた亡霊だ。」




「……置いた。……話してもらおう。」


「……私達第七医師団は、ローブ族を

今一度結集させる為にここへ来た

……と言ったらどうする?」


「……なに?ローブ族……だと……!?」


「知っているのか?」


「……俺も、ローブ族の末裔の一人だ

貴様こそ……何を知っている……!?」


「何だと!?」




「私は、騎士連邦国のかつての騎士王

ラース・ドーヴェルの子孫


私達がここへ来たのは、

自然災害かと思われていた魔獣の出現は

実は生物兵器……キメラだと知り、

それに対抗出来る力を持っているという

ローブ族を結集させる為に、ここへ来た!」


「……ビーストが、キメラ……!?

元々人だったとでも……言うのか!?」


黒魔術師は食い気味に言った


「あぁ……そして、その元々の人というのは、

他でも無い、私達ローブ族だ。

ローブ族は多岐にわたってその力を

兵器として使われている!!」


「……俺は、これでも世界の裏を知り尽くしている

暗殺業を営んでいるから……

俺にもその情報が、絶対に渡ってくるはずだ。

……信用出来ない、ということだ。」


「図々しいとは思うが……

どうしたらその信用が得られる?」


「…………」


黒魔術師は、暫く黙りこくる


「……ならば、こういうのはどうだ……?」


「?」


「……我がヒヒュード合衆国が誇る軍隊

"ヒヒュドラード騎士軍"……

そっちの国のように、騎士が政治も

努めてるのではなく……

王政の為、この騎士軍は実権はない。


だが……騎士軍は腐っている。

実権を持たないが故に、それを求めようとしている

……国家転覆を図ろうとしているんだ。」


「……私達は、それを止める手伝いをすれば良いのか」


「……その通りだ。もしも食い止めることが出来たら

……力にならなくもない。」


「曖昧だな」


「……この件は、出来れば内々で片付けたかった。

他の国の力を貸してもらうなど……

……だが、そうも言う余裕はなくなってしまった。

不甲斐ないばかりだ……」


「医師団の皆にはまだ話さないでおこう。

それで、私達はまず何をすれば良い?」


「……まずは医師団を名乗って

王城に謁見しに行くんだろう?

なら、話は早い。

ヒヒュード13世に、騎士軍に来てもらうように言う。

……くれぐれも、ヘマはするなよ。」


「分かった。余計なことはなるべくしない。」

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