イガラキ・アズキ





あれからまた1日経った。


やはりサハギンは襲って来なかった


ビーストも含めて、元人間だったからか

あまり人を傷つけることはしないようだ


今思えば、まだ疑問は残っている


組織は、魔法の本を奪って何に使うと言うのだろう

ただの私達の弱体化が目的なら良いが……


そして、何故魔法の本は作られたのか


神々が作り出したと言うのは、

その作り出した人物が、

崇拝されるに値する人物だったということ

本当に神様ということはないだろう


魔法の本を初めて手にした時

聞こえたあの声……


「無限の輪廻の輪から外れし本……

本に選ばれた……」


輪廻の輪……?何のことだかさっぱりだ。



不安も残っている


サハギン等の生物兵器が魔法を使えるようになったら

人間に勝ち目は無いだろう。


それに、まだどんな生物兵器が居るかも

見当がついていない。


不確定要素が多く残る

しかし、その真実を知る術はないので

私は、まだ気にしないことにした




「全員、集まれ!!」


私は、声を張り上げて言った


ハイ!!


第七騎士群は、それに張り合うかのように

大きな声で返事をした


「皆に集まってもらったのは、

今後のことについて話そうと思ったからだ。」


スタスタ


老いた兄弟が二人、遠目でその光景を見ていた


「懐かしいな……私も騎士団に入っていた頃は

隊長として、当時の第一騎士群を率いたものだ。」


「カートも、何かを懐かしむ歳になったのかい

そうだね、若い頃を思い出すよ。」




「先生、今後のことというのは

世界に出ていった後のことですか?」


「シュヴァルツ、そうだ。

世界に飛び立った時、どのようにして

ローブ族と関わり合いを持ち、

どのようにサハギンと組織に立ち向かうかだ。」


第七騎士群の全員が、口を閉ざす


「ここである人を紹介しよう。


かつてシンバシ町で流行った病を治した

本屋の魔術師こと、カート・ドーヴェルだ。

私とは叔父の関係で、親父の弟だ。」


「あれから半月ぶりだな。

この短い間でも、全員目の輝きが

一層増しているように思える。」


ザワザワザワ


「おい……!!今の聞いたか……!?

本屋の魔術師って、現騎士団長と

当時騎士団長の座を競っていたという……!?」


「あぁ、その弟みたいだな……!?

この町の英雄って、そんなすごい人だったのか……!!」


「雰囲気も兄にそっくりだ……

というか、隊長も親父さんも魔術師も

一人称が同じで、雰囲気も

似すぎでわかりにくい!!」



「今回カート叔父さんを紹介したのは、

これから第七騎士群に協力してくれるからだ。

そして、叔父さんも魔法が使える」


「……ジオル君、少し私に時間をくれないだろうか。」


「?良いが……」




「皆は、20年前この町で流行った病気を

知ってるだろうか」


「梓月病でしょ!!

ワタシたち世代でも知ってるわ!!」


「あぁそうだ。元気があって良いね。


ちょうど私達、親世代が君達ぐらいの歳の時

梓月病が流行った。

死の病で、感染力も高く、多くの死者を出した。


……そこで皆はどう思う?

この梓月病は、何故流行ったのだろうか……」


「……この間先生が言っていた

魔法の本が原因……でしょうか?」


シュヴァルツが言う


「半分当たりだな。


その梓月病は、魔法の本が起こした。

それは当たりだ。


だが、どんな物でも何もしなければ何も起こらない。


……開けたのだ。私が魔法の本を……」


!!!


「20年前梓月病が流行った原因を作ったのはこの私だ。


この中に片親で、20年前梓月病に親が犯され

死んでしまった人もいるだろう……

その親を殺したのは、私だ……!!」


……


「……ふざけるなぁぁぁ!!!

おれは梓月病で母さんを殺された……!!

当時4歳だったが、母さんが死んだ時のことは

今でも忘れていない……!!」


身長、体型は普通で、黒髪で、青い目をしている

20歳ぐらいの男性隊員が言った


「……私は、とんでもない過ちをしでかしてしまった

……幾らでも恨んで良い、その怒りは真っ当だ……

私は謝る必要がある………………

本当に……すまなかった………………」


一人の未熟者は、

頭を深々と下げてそう言った。


「……怒っちゃったけど、頭を上げてくれ。

おれはあなたに怒っているんじゃなく、

梓月病に怒っているんだ。

怒りの羅針盤は、常に平行であるべきだから……

おれは中立だ。」


「…ジオル君の言葉か」


「……はい、隊長の叔父にあたる人なら、

おれはあなたに間接的に助けられている……と思う。

だからもう……怒らない。」


「……君の名前は?」


「おれの名前は……イガラキ・アズキ

名のない戦士だ。」


「……イガラキさん、改めて言わせてくれ……

本当に、すまなかった……」




「イガラキ君、居たのか」


「はい、50番境界戦線時の負傷が治り、

今、第七騎士群に戻ってきました……が、

な、なな、何が起こって……」


「今の状況を説明すると……」


私は今まで経緯について話した


「えぇ!!そんな化け物と戦ってたのですか!?

第七騎士群も跡形もなく……」


ザワザワ


「あいつ隊長と話してるけど、

一体だれだ……?」


「一人称がひらがななのは

アイリスさんと同じ……こりゃ優遇されるぞ……」


「あ、自己紹介遅れました!

おれは先生が第七騎士群に来る前

先生が学校の先生をしていた頃の教え子だった者です


2年前のハーデス神王国との小競り合いで

負傷して、一時離脱していました。

最近きた人はおれのこと知らなかったと思うけど、

どうぞ宜しくお願いします!!」


「……ということだ。

言っておくが、私は教師時代の知り合いだろうと

厳しくするつもりだ。

だが、皆は仲良くしてやってくれ」


ハイ!!




「さて、ひとまず落ち着いた所で、

今後のことについて話そう。


カート叔父さんは魔法が使えると言ったが、

私はこの魔法を、皆に使ってほしいと思っている。


グリーンという魔法で、

その効果は、その者の状態異常を治す。

凄く単純だろう。


まずこの魔法を使えるようになってから世界に挑む。

今回の我々は……医者だ!!」


「「「「「ええええええええ」」」」」」

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