三時限目 過去を断ち切る為に




「ラース……ドーヴェル!?」


「フッフッフ、驚くだろうがこれは真実だ。

ラース・ドーヴェル、それが初代の本当の名だよ。」


「……あの、ちょっと良いですか?」


「アイリスさん、どうぞどうぞ」


「その……あちら側の組織ってのと

絡みがあったんですよね。

言い方が悪いですが……わたし達の首を取って

そのあちら側の組織に差し出せば

全て解決するんじゃ……」


「……君達がビーストを倒せなければ、

そうしていただろうね。」


「親父……!?」


「……勘違いするなよ、ドーヴ。

私は国の危険を回避出来るなら、

喜んで実の息子の首でも差し出そう。

お前も騎士ならば、

死はいつでも覚悟しているはずだ」


「ッ……」


「先生……ごめんなさい、わたし余計なこと……」


「いいんだ、私もそれを聞こうとしただろう。」


「……親父、それを伝えたということは

私達の味方ということで良いんだな?」


「当然だろう。君達第七騎士群には、

微かながら、希望が見えた。

しかし、とても対抗出来るとは、今は言い難いが……」




「あちら側の組織より、

今はビーストとサハギンが先だ。

何年かかっても、種族が滅亡するまで戦う……」


「私が思っていたより、

ドーヴの騎士としての覚悟は強いらしいね。

良かったよ。」


「だが、今の魔法すら使えない状態で

どうやってサハギンと戦えば……」


「フッフッフ……ここまで真実を教えたというのに

ドーヴらしくもない……」


「対抗作があると……!?」


「考えてごらん。久々に"授業の時間"だよ。」




「うーん……うーーーーーん……

…………………………

…………………………

…………そうだな…………うん、"考えた"」


ザワザワザワ


「先生の授業が始まるぞ!!」


「オオオオオオオ!!

盛り上がってこうぜぇぇぇ!!」


「お前ら……!?」


「先生……!!いつものように

やっちゃってください!!」


アイリスが目を輝かせて言う


「おうおう!!何だかしらねぇけど

ここまで来たらやっちゃえ騎士さん!!」


アーフィンが盛り上げる


「小生達に、是非起死回生の一手を……!!」


シュヴァルツが、興味深そうに言う


「へへへ、先生の授業、久しぶりだなぁ」


カイゼンが息を荒くしながら言う


「隊長!!ホラホラ!!言っちゃいなよ!!」


カレンが煽るように言う


その場は、大勢の大衆の中

ジオル・ドーヴェルという一人の男が

思考を巡らすだけで、

小さな竜巻が出来ていた……!!




私は、周りが静かになったのを見て

呼吸を整え、考えを言うことにした


「さて……今回の魔獣、サハギン

恐らくビーストと同じく身を隠していたのだろう

親父の言う組織の監視下で。


今日襲いかかってきたのは、

そのある組織の命令、「魔法の本の強奪」が目的だろう


結果、その目的を達成し、海へと帰っていった……

ここであることが約束される。

それは、"しばらくここには攻めてこない"

のと、サハギンはビーストとは違い、

"捨てられてはいない"ということ。


前戦ったビーストは、

全国各地に出現した未確認生命体。

そのビーストも、ある組織の監視下で隠れていた。

しかし、戦闘は肉弾戦にしか向かないことにより、

次々と開発された生物兵器に劣っていった……


そしてビーストは、生物兵器の中で劣等種となり

捨てられる形で野に放たれた。

それでも苦戦したんだけどね。」


「ビーストって、

それじゃ失敗作だったってこと……!?」


アイリスが言う


「恐らく、ね。

つまり、捨てられてはいないということは

同時にその組織と戦う必要があるということだ。


ここである組織についての考察を言おう。


組織は、親父の言っていた通りなら、

場所は別国にある。そしてそこはかなり近い国

人間が徒歩で逃げれる距離と言うのならば、

隣国と仮定して良いだろう。


その国は、科学がとても発達していて、

尚且つ騎士団と敵対していそうな国……


東方向にヒヒュード合衆国がある

そこは科学はある程度発展しているが、

こことは敵対関係ではなく、むしろ友好国だ。

戦う理由がない。


援軍としてヴァーズという戦力も施してくれた。

感謝しかない。


そうしたら、次はハーデス神王国はどうだろう。

現王であるハーデス13世は、

科学発展を自国に促していることから、

科学はかなり発展しているだろう。


こことは300年前の大戦で、

化学兵器で本気で殺し合った仲だ。

すごく仲が良いんだろう。そっちの意味で。


まぁ、ヒヒュードじゃないのなら

消去法でここしかないのだが、

場所はハーデス神王国の

何処かにあると決めて良いだろう。」


オオー……


「ここまでなら誰でも思いつく

そんなに驚かれても困る。


さて、ここからが本題だ。


どうやってサハギンと戦いながら、

その組織と戦うのかだ。


色々と選択肢がある。

まずはサハギンを倒してから組織と戦うという選択肢だ


サハギンと戦って、仮に勝ったとしよう。

しかしそれだと、また第二第三の生物兵器を

けしかけてくるだろう。イタチごっこだね。


800年以上も前から生物兵器を作っていたとなれば

相当な数居るんだろう。


ということで、サハギンと戦うのは愚策だね。


ならば、何が最善か……だが

生物兵器の軍隊が攻めてくる前に

戦いを終わらせたい……


これは皆大好き理想論だ。

考える能は持っているが、

実現させる力がない、人特有の……理想論だ。


私は昔から理想論が嫌いでね。

理想論というのは、分岐点で真剣に悩んで

自分の答えを出した人の考えを否定し、

いつも不幸にさせるからね。


……少し脱線してしまったが

魔法の力がない今の私達では

短時間で組織を倒すのは出来ないだろう


ならばどうするか


火の魔法を限界まで使い熟せるまで鍛錬するか……


これはダメだ。

火の魔法より強い魔法は必ずあると私は考えている。

組織に魔法の本が渡った今、

これは良い判断とは言えないだろう。


騎士団の全戦力を集結させ、組織と戦うか


これは結構良い線行くだろうが、

魔法の本が渡った今、戦力はあちらの方が上と

考えて良いだろう。




ここまで言ってきて、何故ダメだったかの共通点は……


・魔法の本の有無

・戦力不足


この二つの問題点を、一つの選択で

解決させる方法とは……」



ごくり



「800年という歴史で

ありとあらゆる場所へと散っていった私の同胞達……

ローブ族を、今ここに、集結させる!!」


!!!


「なるほど……

ローブ族の末裔と言うこともあり

魔法の本の知識は多少心得ていて、

尚且つ組織とは因縁がある強力な戦力……!!

小生、何も異議は無しです!!」


シュヴァルツが賞賛する


「私達は、これから強大な敵と戦うことになる……

しかし私達は、それに対抗する!!


800年という歴史の果てで、過去を断ち切る為に

私達は……人類同士のいさかいに、

終止符を打ってやろう!!!」


オオオオオオ!!!




私は、ここで"最悪の勘違い"を犯したことは

まだ、知るよしもなかった……

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