サハギン、襲来




夜が明け、日差しが真上から出てくる時。


昼になった

太陽がさんさんに照りつける


まるでこの前のことは嘘のように

太陽は輝く




馬車が幾つかある。

出発の時だ。


「ジオル殿!!どうかお元気で!!」


「お互い、頑張りましょう!!」


そうして第三騎士群を去る


私は振り返らずに馬車に乗った。

次の希望ある未来を目指して。





ガタンゴトン……


「……」


カキカキ


「……先生、馬車の中でも仕事してるんですか?」


「今回のビーストの件の報告書などの書類や

魔法の研究……これからまた忙しくなるぞ、アイリス」


「ハイ!」


パカラッパカラッ


「……!?先生、前から馬が2頭。

人が乗って近づいてきます……」


「あの青い制服は……大丈夫、同僚だ。

しかし……あんなに急いだ様子で、どうしたんだ…?」


ガタッ


馬車が止まり、私はアイリスと共に

急いだ様子の男隊員に近づき、話を聞く


「先生!!」


「どうした!?」


私は、その異常な忙しさに動揺する


「急いでください!!

先生達が居ない時……海から謎の魔物の大群が!!」


「海からだと……!?それでどうなった!!?」


「その魔物を我らが食い止めていたのですが……

話は後です!!さぁ、後ろに乗って!!」


「アイリス、行くぞ!!」


「はっはい!!」





青い屋根が立ち並び、道は石で出来ている

港が見える住宅街


そこには、凄惨な血の匂いが立ちこんでいた。




「キャァァァァ!!!」


それは、魚と呼ぶには

あまりにも恐ろしい見た目だった


人型で、ギザギザの歯

鋭い目に耳がなく、代わりにエラがあり

皮膚は青く鱗で出来ている。


腹の部分は白い、

まるで魚が人化したような見た目だった。




ザッザッザッザッ


青い制服を着た第七騎士群の隊員が

その港区へ駆けつける


「港のみんなぁ!!ここはおら達が守る!!

早く第七騎士群に避難するんだ!!」


その先頭に大男ことカイゼンが来ていた


「騎士様……ありがとうございます!!」


向こうに騎士が来た!!


あっちに逃げるぞ!!


「なんじゃありゃ……魚が槍持ってあるいてら!!

襲ってさえこなきゃ、友達になりたかったのに……」


「カイゼン隊長、早く住人を避難させましょう!」


一人の隊員が言った


「その前に目の前にいる化け物の相手が先だっぺ!!

おらが相手するだ!!皆は住人の保護を!!」


ハイ!!




「こりゃたまげたなぁ……

ビーストみてぇな毛むくじゃらなやつとは

また違うみてぇだ……」


ジュオオオオ!!!


「こっわい顔やのう!!目が血走っちゃってぇ!!」


ダッダッダッ


化け物は、両手に持っている石の槍を

大男に向けて、襲ってきた


「そんなふざけた槍……」


ガツッ!!


「おりゃぁぁぁぁ!!!」


ヒュー……


大男は、突進してきた化け物を

持っていた槍ごと投げ飛ばした!!


「まだまだ軽いのう!!」


スタ……スタ……


「ありゃ、集まってきただ……」


ジャギイイイイイ!!!


「ふが、変な鳴き声だぁ……」




ボゴッ!!ギャキッ!!


ジャギィ


「はぁ、はぁ、意外といけるだ……が、

何かを狙って……?明らかに時間稼ぎだなぁ……」


……………………


「……さっきから妙に波の音がしないだ……

いつもならもっと……まさかひゃー!?」


…………………………


ゴゴゴゴゴ!!!


水平線の向こう側


そこは、海岸沿いの更に向こう側


狂う


狂う


狂う


大きな波が踊り狂っている


これは何というものだったか


分かる


分かった


これは"津波"


大勢の人を海に漂わせた、

悪魔の化身だ


ザァァァァァ!!!


「カイゼン隊長ぉぉぉ!!!」


「分かってるだぁ!!

おらはこいつら片付けてからいくだぁ!!

おめぇらは逃げろォォォォ!!!」


「そんな言ってる場合ですか!!

私達も戦います!!」


ズドン!!バゴン!!


ジャギィィ……


ズザッ……


謎の魔獣の腹を殴り、

一撃でノックアウトする


「おらを舐めるなぁぁぁ!!!」


「あの化け物を一撃で……!?

わ、わかりました、早く高台に来てくださいね!?」


「分かったら早くするだ!!」



おらはその場を切り抜け

一番高い民間の家の屋根の上に逃げ込んだ


その場所の高さは15メートル以上あり、

山に登るよりも確実に凌げると思った。



ザパーン!


「げぇ……でっけぇなぁ……」


津波は7メートルぐらいで、殆どの家が流されていく中

奇跡的におらが居る場所は残り、

おらは生き残ることが出来た……




パカラッパカラッ


「……なんだ、これは………………」


その光景は、あまりにも殺風景だった。


大きな家が一つ残っているだけで、

辺りには石くずや家などの残骸、

荒れた道に山は土砂崩れをしている……


「……第七騎士群は!?」


「……隊長……」


「何とか言ったらどうなんだ!?」




タッタッタッタッ


「……流されてしまったか…………」


「……すみません隊長。

避難してきた港区の住人をもっと安全な場所に逃すのに

必死で……魔法の本は、もう……」


「……いいや、魔法の本を気にした訳じゃない。

私達が居ない中、良くやってくれた。」


スタスタスタ


「おぉっ!?先生!来てたんだべか!!」


「カイゼン!!無事だったか!!」


「へへ……間一髪だったなぁ」


「ご無事で何よりです……!」


「お、アイリスたん!!

活躍はここまで届いてるだよ!!」


「た、たん……!?」




「さて……これからどうしようか」


これは困った


第七騎士群が海に流され、

本部との連絡が絶たれてしまった。

数日経てば異常を感じ取って

ここまで来るとは思うが……


他の騎士群の援助は貰えないだろう。



次に、アイリスが居ない間

どうやって今回現れたという魔獣と戦うのか


今回のこの件だけを構ってはいられない。

あの各地にいるビーストも、現在進行形で

被害が出ている。


あのビーストを倒せるのはアイリスだけ……

苦しいが、遠征はそのまますることにする。



最後に、魔法の本ネクロノミコンがなくなり

魔法の研究が出来なくなってしまった……


これが一番デカいだろう


海の魔獣に対抗出来る魔法を

研究が出来なくなったことにより、

実質丸腰で戦うことになってしまう……



「港町に居る住人も居る

騎士として、守りながら戦うのは大前提だろう……

だが……魔法無しであの津波が来たら

何も出来ずに共倒れだろう……本当にどうすれば……」


「わ、わたしは絶対に残ります!!」


「アイリス……ビーストとも相手をしなきゃいけない

騎士というのは、全人類を守る盾なんだ。

ここだけを守る訳にはいかない。」


「でも……!!」


ガタンゴトン……


「……これは一体!?」


「シュヴァルツか……一旦、全員休もう。

この状況の説明をする。」


…………………………


「……海の魔獣が出現し、津波を発生させた……

ビーストの非じゃない天災……

小生、どうすれば良いかわからぬ……」


「私も分からない。

流石に、ここまで追い詰められたら

どうすれば良いか……」




ザワザワザワ


「あれって……」


「いや、まさかな……」


辺りに居る隊員が何やら騒がしい


「……まさか、またあの魔獣が!?」


スタスタ


「……この世界には、想像を絶する脅威が存在する。

それは分かっていた。

私はそれを滅する為に、騎士団長に上り詰めた。」


「……ふぇ!?あれって……!?」


アイリスが驚く


スタスタ


「アルカナ歴555年、今から300年ほど前

世界大戦が勃発した。

アルカナ大陸全土で、独立した国々が

世界統一を目指して争い始めた。」


「あの黄金の鞘の長剣……

白銀のオールバックの髪……

黒い制服に赤と金が入ったマント……

間違いない……あれは……」


シュヴァルツが拝む


スタスタ


「その世界大戦で、多大な被害を出した代わりに、

我らの国、"ラース騎士連邦国"

東に隣接する国、"ヒヒュード合衆国"

北西に隣接する国、"ハーデス神王国"


この三国は、互いに争った結果、

技術が発展し、先進国として人類の進歩を促した。」


「あのつよそーなのなんだべ!?」


カイゼンは不思議そうに思った


スタスタ


「しかしその反面、民族同士の関係が劣悪になったり、

戦争に用いられる予定だった

"生物兵器"が自我を持ち、人類に牙を向けた……

それがビーストや今回の敵、"サハギン"」


「……"親父"!?」


「……土砂に建物の残骸、石くず。

着くのが遅かったようだね。"ドーヴ"」

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