独創理論




「少しは仕事以外の話をしませんか。先生。」


「……偶にはそれもありだな。」


「!!あの仕事人の先生が珍しく……!?」


「そんな目で見られていたのか……

これでも若い頃はビーダ○ンとか

米ブレードとか見てたよ。

と言っても、私に限らず皆やったと思うがね。」


「そうなんですか!?

わたしも……やりました!!

ドラゴンボールの曲も「ドッカンドッカン

つ〜いて〜る〜」のやつだったです!!」


「やはりそれだな。

私達の世代はDBの曲と言えばそれだ。」


「ア○ンジャーズとか映画でやってたけど

親に連れられて見てたはずでも

前の前の作品くらいから小さい頃すぎて記憶になくて、

あんまり楽しめなかった……て、分かりますか!?」


「たしかに、それはある。

最後らへんのインフィニティウォーと

エンドゲームは覚えているが、

エイジオブウルトロンとかそこら辺は全く覚えていない」


「わたしだけじゃなかった……!!」



という感じで、

00年世代の話がかなり話が弾んだ。


やっぱり先生も米ブレードをやる時は

3.2.1……ゴー、シュート!!って言うらしい!!




「先生……」


「どうした?改まって」


「先生って、どうして騎士になったんですか?

こんないつも死と隣り合わせの仕事より、

先生の頭なら、もっと稼げて、もっと安全な

仕事とか出来るのに……」


「……そうだな。うん、私もそう思う。

親父と同じ道を進むなんて、夢にも思わなかったよ。」


「それじゃあ、もっと別に

やりたいことあったんですか?」


「あぁ……でもそれは"若気の至り"というやつで……

そう……話すものでは……」


「なんですか〜先生〜、そういうのあるんですか〜!

言ってくださいよー」


「……笑わないと約束するなら……

いや、それはそれでムカつくが……」


「どっち何ですか!!」


「あぁもう言う!!

私は"世界征服"を本気で目指していた!!」


「……世界征服ぅ!?」




「……その頃の私は、

こう言っちゃ悪いが、世界に絶望していたんだ。


終わらない戦争に、私服を肥やす政治家。


私の親が、かなり地位のある人物ということもあり、

この世の闇ばかりを知りすぎていたんだ。


悪いことばかり覚えたがり、

良いことは他人事のように扱う。

本当は良いことがあり、幸せな毎日を過ごしたいと

思っている。でも、どこかでそれは不可能と割り切り、

悪いことが起きると、「これが現実」と失望する。


そんな独創理論を構築し、正当化してしまった。

そんな"馬鹿"な人間だったんだ。私は。」


「それ……わたしでも、あります。

情報が数えきれない程毎日出て、

それは悪いことばかりで……そうなっちゃうのかな。」


「人の興味、関心は、基本悪いことだからね。

仕方ないで終わらせられるが……

幸せなニュースばかりは、見てられないのだろうか…」




「意外ってほどじゃないけど……

先生が世界征服を目指してたなんて、初耳です……!!

へへ……皆に言いふらしちゃおっかな」


「頼む、やめてください。」


「嘘ですよ。でも、聞けて良かったです。

面白い話聞けちゃった……へへへ」


「……そろそろ寝よう。

もう夜がこんなに更けてしまった。」


「そうですね……また、先生の過去の話、

聞かせてください!!」


「……誇れるものじゃないさ。」

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