太陽




今、考え出す


わたしがしたいこと。


それは、他の皆を救いたい。


そこでわたしは今一度、騎士とは何なのかを……

思い出してみることにした。



騎士とは、王を守り、民を守り、

忠誠を尽くす者。


たった二行で存在意義が分かる騎士という文字


だけど、わたしは体験した。

人は人を、本当の意味で守ることなんて、

出来やしないことを。




人は守られないことで進化する

そう気づいた時、わたしは矛盾を感じた。


仮に人が人を守ったとする

守られた本人は、その人に悪い気がするだけ

だけど守った本人は、誰からも守られない代わりに

経験を持って、進化する。


どうだろう。これは守ったと言えるだろうか。


また同じ目にあったら、

そこに前に守った人がいる保証はない


英雄なんて、ただの自己満足人間でしかないんだろうな



結局人が善行をする理由は

相手の為ではなく、自分の為に行うんだ。


それに気づいた日を、わたしは忘れている。



小さい頃、わたしは「弱い人を助ける」

だなんて言ったんだけど、

「助ける」と「救う」は全く意味が違う。


わたしは、小さい頃だったけど

生意気にも、その意味の本質を理解出来ていた。


「助ける」は自分の為


「救う」は他人の為


人は人を助けるんじゃなくて、

人を救うことで、初めて誇ることが出来る。


そう、思った。




よし、じゃあ落ち込んでる友人を救おう!!


……これは果たして"救う"に分類されるのかな

ただ落ち込んでいるだけなら、誰でも立ち直れる


よし、それなら病人を救おう!!


……これは難しい。


わたしは医者じゃないからわからない。


医者が居なければ薬は作れないし、

薬が無ければ、医者でも救えないかもしれない。


読者の人は、医者か薬どっちが救ってると思いますか?

わたしは両方とも存在は欠かせないと思います。


医者の人ーー!!どう思いますかーー!!

あなたが救ってるんですかーー!!

それとも薬が救ってると思いますかーー!!



相手を救う条件は……


1.相手をただ一方的に守らないこと。


これはそもそも守るとも言わない。

相手に自分を依存させてるだけ。


2.相手にお金をせびらず、商売にしないこと。


自分がほんとに救われたとする

その時、その救われた相手にお金を要求されたら、

それはその人に救われたんじゃなくて、

お金に救われたんだよ。


3.相手にまた同じことが起こっても、

解決させる力を持たせること。


これはどんな経緯であろうと、

必要不可欠な要素。


……こう条件を出したら分かるでしょ。

人を救う難しさを。


わたしはまだまだ未成年で

達観してるつもりじゃないけど……

だから人は人を"助ける"ことが出来ても

"救う"ことは出来ない。


そう、わたしは考えた。




ここまで、ずっと救うことの難しさを

淡々と言ってきた。


でも……それでもわたしは、皆を救いたい……


"ただの英雄"にはなりたくないんだ!!




「光が……巨大になっていく……!!

間違いない……アイリスが繰り出そうとしてるのは

炎じゃない……太陽だ!!!」


アイリスの腕の先、小さく優しい光が

強く、巨大になっていく


「……!?」


「どうした、シュヴァルツ?」


「先生……なんだか眠気が、

みるみるなくなっていってる。皆は!?」


「シュヴァルツ部隊長!!

炎部隊全体がそう感じています!!

これは一体……?」


「いや、これは丁度いいです。

皆!!炎をもっともっと強化するんだ!!」


ウオオオオオオ




……………………




「ハァッ、ハァッ」


「アイザイア隊長、もう……

第三騎士群は限界です!!」


「まさかここまでとは……」


キラキラッ


「……!?なんだ、急に光が!?」


「隊長!!これは一体……?」


「さぁな……だが、何故だかこの光が出てきた瞬間、

力が湧き上がってくる……!!

形成逆転を狙うなら、今!!」




「……フゥゥゥ」


「どうしたのかね、黒魔術師。

お前がため息をつくとは。」


「……この数に、このデタラメな力。

……ビースト、少し舐めていたか…………」


キラキラッ


「……?」


ギャォォォォ!!


「!!」


俺は咄嗟に素手で攻撃する。


ドゴォォォ


ギャギャッッッ……


その攻撃は、戦闘開始から数十分経ち、

疲れ果てているはずの攻撃だった。


しかし、疲れが淀みなく晴れたかのように

起死回生の一撃となっていた


「………………光。俺には似合わない物だ……」


ドゴン ドゴン


「ハッ、ハッ、なんじゃこれは!!

10……いや、20若返った気がするぞ

黒魔術師!!まだまだいけるな!!」






炎部隊はビーストに夢中だ


私は周りを見渡して、今起きてることを確認する


「……これは!?」


すると、空中に無数の光が出ていた


それは星のように、小さな光だった

私は、それが皆の体力を回復させていることが

すぐ分かった


そしてそれは、アイリスの炎に似ていた


私は、アイリスの方を見た


「……」


アイリスは無言で腕の先にある"もの"を

強化していっている……


あれは本当に太陽なのか……?

よくよく考えれば、あの大人の拳ほどある太陽なら、

私達や、地球は既に溶けているだろう。


なら、あれは一体何なんだ……!?






人を救いたいんだ!!

一人の女として、皆を救いたいんだ!!


炎部隊の皆に……第三騎士群の皆

この集落街の人、皆を!!


英雄譚に載らなくていい

誰にも相手にされなくてもいい……!!

だけど、この"わがままな想い"だけは、

絶対に裏切っちゃダメだ!!


今の想いを、せめてこの炎に伝えるんだ

もう誰も死ななくても良い、

"英雄の居ない世界"を……わたしは望む!!




(そろそろ良いかな……)


一人の少女は、不安と共に目を開ける


ゴォォォォォ!!!


「!?」


広げた両手の先……そこには

成人男性より少し大きい、緑色の球体が、

そこにはあった


「少し……暖かい」


「アイリスーーー!!」


「……分かってるよ。先生に言われなくても。」


炎部隊の皆が繋いでくれたこの時間

先生が解明した火の魔法


ここまで皆の努力……無駄にはしない


そう考え、わたしは

その球体が前に出るように……

優しく、押し出した



ゴォォォォォ……


その球体は、底が地面と擦りながら

まるで落ちていくように、

徐々に徐々に、速度を増して行く


ゴォォォォォ


燃えて燃えて、燃え続ける

炎は優しく燃え続ける


しかしその炎は、決して消えていくことはなく、

永久の炎のように、進み続ける


ゴゴゴゴゴ


緑の太陽は、その勢いを増して行く

石を溶かせ、岩をすり抜け、土を削り、

救う。ただその一心で

ビーストの方へと進んでいった


「届けぇぇぇぇぇぇ!!!」


わたしは叫んだ


その叫びに意味はなく、

ひたすらに、光ある未来を求めた


「皆!!下がって!!来ますよ!!」


小生は令を下す

その時が来るまで、勝利を求めた


「いけ……!!!」


私はひっそりと言う

その一言に、全てを託した



ゴゴゴゴゴ!!!


ギャォォォォァァァァァ


ドゴォォォォン

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