火の魔法の開発
私達は本屋の魔術師……いや、館主に、
飛んでいった本の行方がわからなくなったのを詫び
その時同時に、感謝の言葉を言った
「ありがとう」と、一言だけ、言った
「それで隊長、どうするんですか?」
カレンが冷静な言葉を発する
「もちろん、この本の中身を調べるつもりだ。
少し見てみたものの、古代語で書かれていたから、
読むのを躊躇ってしまったよ。
……聞きたいのはそういうことではないか。
その魔法を、可能なら実戦で活用出来るよう
研究し、部隊を再編成したりと……
色々と忙しくなるよ。」
「言っておくけど騎士さんよ。
俺は研究は戦闘で手一杯だから、
誘うならお断りするぞ。」
「あぁ、君の顔を見れば容易に想像がつく。」
「誰がバカだって!?」
「アーフィンから反感を買ってしまった所で、
私は自分の部屋に戻るよ。」
「ここに自分の部屋とかあるのか?」
「もちろん。
ここに居る騎士達の全員分ある。
……君はそうだな。
私達が魔法の研究をしている間、
中央都市"ザルグヘイム"にある
"騎士団編入試験会場"へ行って
試験を受けて来ると良い。」
「わかった!!」
「隊長!!
私もそろそろ編入試験を受けようと思います!!」
「そうだな。君もまだ新兵でもなかったか。
行って来い。」
「ハイ!!」
こうしてアーフィンとカレンは一時離脱し
編入試験を受けることとなった。
私は、今はもう夜が遅いので
一旦寝ることにした
「……自分の部屋に戻るか」
……………………………………
チュン チュチュン
バッ!!
「久しぶりに良く眠れたな。
ふぁ〜あ……」
私は、第七騎士群を運営するオーナーが居る執務室へと
足を運ぶ
トントン
「入りなさい。」
ガチャ
「失礼します」
私は以前まで無い勢いで歩き、
木製の扉をノックして、執務室へと至る
「オーナー。
暫くこの部屋を借りていいでしょうか?」
「いきなり入っておいて、それはないだろう。」
この赤い髪をした、口の斜め下にホクロがあり
割と大人の色気というものがある女性は
第七騎士群が結成される時、
自分が建物の維持費や
必要な武器の調達する為のお金を負担すると
名乗り出てきてくれた人。
私を隊長として認めてくれた人でもあり、
この人の前では、頭が上がらない。
「いや、聞いてください!!
凄い本を見つけることに成功したんですよ!」
「知ってるぞ。
曰く付きの魔法の本。
シュヴァルツにもう聞いた。」
「そうなのですよ、曰く付きの魔法の本!
なので1週間ほど借りますから
どいてくださ〜い」
「え!?話はやっ!?
ちょ、引っ張らないで……力つよっ!?
最初はあんなに可愛かったのに……
何でこのアタシが……」
色々と愚痴を言ってきたが
私は聞く耳を持たないで
無理やりオーナーを、執務室から出させた
「こんな高級そうな机と椅子に座って何が良いんだか。
……くつろげそうな空間だな。
さて、まずはこの本の解読をするか……」
魔法の本 一日目 解読編
「先生、こんな所においでで。」
「……シュヴァルツか。
何の用だ。私は今忙しいのだが……」
「私もその解読に付き合おうと思い、馳せ参じました。
こういうのは議論をし合ってやった方が
効率が良いかと。」
「いやはや、気が利くな。
今はこの魔法が"火の魔法"というのは
この図を見て分かるのだが……
ここの部分の言葉の法則性が分からなくてな」
「……これは恐らく、現在進行形では?
多分。多分ですがこの図の下に書かれているので
「火を妄想しながら」と書かれている……
と、仮定すれば良いかと。」
「ほう、確かにそれなら言葉の辻褄が合う所が出来る。
それならこれは……」
私は、一通りわからない場所をシュヴァルツに言い
仮定と失敗を繰り返した後、
言葉の法則性と意味を理解した!!
魔法の本 二日目 着火編
「なっ、なんですか先生!!
精鋭部隊は全員集合しろとの
言葉を聞いたのですが……」
少女が大袈裟に慌てて来たのを見て
少し笑いそうになったが我慢した
「すまない。
実はもう、一部解読を終わらせたのが……
魔法というのは、どうやら"生まれる物"らしい」
「生まれる……?」
「あぁ……
その魔法が生まれるというのは
どうやら人によって得意不得意があり
赤、青、黄、紫……などと言った
"色が反応"して、魔法が生まれるらしい。
解読したのは火の魔法だけで、
まだ使えない者も居るだろうが……
全員、今から伝える方法をやってみてくれ。」
ハイ!!
精鋭部隊全員が、勢いよく返事をした
「皆、まずは木の棒を持ってくれ。
……よし、手に持ったら、その棒に念じるように、
火を起こすイメージをしてくれ。」
「火を起こす……イメージ」
少女は集中する為に、目を閉じた
「イメージ出来たか?
そうしたら、木の棒を見て
そのイメージを、木の棒の一点に……
解き放つんだ!」
「火を……解き放つ!!」
ボッ!!
「!!」
アイリスの左手に持つ木の棒の先っぽが
裂く勢いで燃え始めた!!
「わぁ!?」
「アイリス……!!出来たのか!!」
「ハイ……そう、らしいです!!」
その直後、アイリスに続き、
炎を出すのに成功した人が続々と出た
私はそれを見て、
シュヴァルツと解読をしたのが報われた気がした
火の魔法 三日目 研究編
「先生!!
あれから私、イメージの規模を膨らませることで
火が強くなるのを感じました!!」
アイリスが話しかけてきた
「そうか……!!
なら、次は実戦で使えるように研究しようか!」
「ハイ!」
「と言うことで、着火出来る人を集めた。
精鋭部隊以外にも、使える人が居たから
ここに居る人はわかりやすく"炎部隊"とした。
一々名前を考えるのは面倒臭いので、
私のネーミングセンスへの批評は
受け付けないものとする。」
ザワザワ
(炎部隊って……他に何かあっただろ……)
「はいそこ、お喋りはそこまでにしろ。
……さて、何故君達がここに来たか。
それは、先の火の魔法を、
もっと強力な物にしたいから集めた。
まずはどれぐらいの炎が出せるのか見てみたい」
「なら、私が……!!」
「アイ、頼んだ」
「……」
一人の小柄な少女が右手を前に出し
左手で右手首を抑えるように構えを取ると、
小さな光の粒のようなものが出てきた
「……きた」
……光る、輝く、煌めく
小さな光の粒が、こちらに優しく微笑んでいる
少女の方に目線を上げると、
目を閉じ、全神経を手の先に集中しているようだった
それは紛れもない。
"魔法"その物だった
その光の粒は、少女の想いが具現化した物であり、
無から有が生まれ、
物理法則を、完全に無視した物でもあった!!
「これは驚いた……
しかし、こんなに簡単に出来るのなら
何故、今まで人類は出来なかったのだ……?」
「フゥゥ……」
その少女の一息は、
疲れのようでもあり、
歓喜のようでもあった
(瞼を閉じていてもわかる、
火の粒の、優しい光。
でも……これじゃ、実戦で使えない……
もっと、強くしないと……!!)
そうして少女は、
拳程度の大きな火球をイメージする……
目を開けようとした時だった
「うっ……!!」
「どうした!?」
光の粒は消え、
少女は頭を痛め、その場に座り込んでしまった
「大丈夫か!?」
タッタッタッ
「大丈夫ですよ……
でも、こんなんじゃ実戦じゃ使えない……!!」
「……今は休め。」
近くの寝室にアイリスを寝かせると
すぐに寝てしまった
「グー……グー……」
「なるほど。魔法を無理に使おうとしたら
脳に疲れが出て、睡魔が訪れてしまう、か。
本人には申し訳ないが、
こう言うことは詳しくメモしないと……」
カキカキ
「よし……呼吸は安定して、
リラックス出来ている……と。
念のため起こさずに休ませておこう。」
私は毛布を被せると、
その場を後にし、炎部隊が集まる広間へと戻る
「……ということで、
アイリス隊員は寝てしまった。
アイリスのように無理に使えば
眠気が起き、戦闘能力の低下や
最悪寝てしまい、戦闘不能になる。
承知したら返事!」
ハイ!
「これから、
複数人で炎を使えばどうなるかを確認したい。
シュヴァルツ、アイリスが居ない今、
同じ精鋭部隊の君が炎部隊の部隊長だ
ここに居る人は、シュヴァルツの指示を聞くように」
ハイ!
「全員、一度円になろう。間隔は1メートルで」
そうシュヴァルツが言うと、
皆が円になるよう動き、
直径約9.5メートルの円が出来た
「よし……皆、ちょっと距離があるけど
この円の中心に炎が出来るように、
イメージして火を付けて!」
そういうと、炎部隊の全員が揃い、
両手を前にだして、目を閉じた
…………
暫くの間、沈黙が過ぎる
「……今!!」
シュヴァルツが言うと、
皆が目を開け、円の中心の草を見た!
ボォォォ!!
オオオオオオオオオ!!!
その時、炎が天に届きそうな程、
高く、太く、燃え盛る!!
それはアイリスの時とは全く違い、
息を吹きかければ消えそうな粒ではなく、
空さえも焼き切ってしまう程
とてつもない物だった!!
「おぉ……!!」
私はそれを見て、感動はしたが
予想以上で、驚きを隠せずにいた
「先生!!」
「なんだ?」
「これに名前を付けてみては?
そうすれば、いざという時
早く発動出来ます!!」
「ふむ……そうだな…………
……シンプルで良いと思わないか?」
「!!
えぇ……!!えぇ……!!
小生、至上の喜びに打ち震えています……!!」
「ホッ、良かった。
ネーミングセンスだけは自信がないから
一安心したよ……」
それからいくつかの日々、研究を重ねた
前方方向への火の魔法
個々の火の強化や、武器への着火
少しでもあのビーストに対抗出来るような策を考えた
火の魔法は、磨きさえすれば、
ビースト達を全滅させられる程の何かを秘めている……
そう信じて、研究を重ねていった…………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます