一時限目 力とは




タッタッタッタッタッ……


精鋭部隊が走り去っていった





「"Magic計画"……?」


一人のひよっこ戦士が、驚くと同時に、疑問に思った


「あぁ、君には言っていなかったか。

簡単に言えば、これから魔法を作る。それだけだ。」


私が言う


「魔法……!?

……それはあの"自然"を越えられるのか?」


「あぁ、約束しよう」


「それなら……やるしかねぇな!」








ここは、第七騎士群本部の左隣に位置する図書館


そこには、異様なまでの量の本があった


棚にはもちろん、壁にも本があり、

更には床、天井まで本が敷き詰められていた


そう、ここは"世界一"と呼ばれる程の

情報量がひしめき合う、不思議な空間


名は"七転図書館"

簡単に言えば、どんな本も借り、買える本屋だ






「おー!ここもすげぇな!!

建物も外見は新しめで綺麗で、

至る所に本があるぞ!!」


「私も最初見た時は驚いた。

毎日本を借りて読んでいるが、

まだ5割も読んでいない。」





「それで、火の魔法とやらは

どうやれば作れるんだ?」


「知らん。手から火とかどうやって出す?

詠唱か?それで出来たら苦労はしない。」


「……」


「そんな沈黙を私に与えてどうするんだ。

無からは無しか生まれないよ。」


「隊長!!どうやら「メラ」って言えば

火球が出てくるみたいですよ!!

え〜っと、えむぴーを3消費して……」


「ルナ、その本はドラ○エの攻略本だ。

私はド○クエはイレブンで初めてやったが

あれは本当に良かった……

と、脱線してしまった」


「あ、隊長!!

「メラチン」と言うのもイケるらしいです!」


「その本私にも見せてくれないか?面白そうだ」






「さて、各自散らばって探し始めたな。

……私も動くか。」


アーフェンやカレン、精鋭部隊の全員が

魔法の本を探し、右や左へ調べている中

私はカウンターへと近づく


「……」


「珍しいな。あなたがカウンターにいるなんて。

"本屋の魔術師"さん。」


そこには、黒いフードを被った

ローブ姿のおじいさんらしき人がいる


その人は、たまに本屋に現れ、

知りたいことを言うと、何でも知らせてくれる

名付ければ、"何でも知る屋"……


しかし、その正体は

謎の疫病からこの街を救った

英雄的存在として一部の人間に知られている……






「……いやはや、若いというのはいいものだな。

こうやって"魔法"など馬鹿げた物を

全員、本気で調べようとするなどと……」


本屋の魔術師が、話しかけてきた


「……若いというより、皆熱心なんですよ。

若いから何でも出来るということはない。

若さではなく、ちゃんとその人その人の人格を

褒めるべきだと、私は思う。」


「フフフ……相変わらず、君は面白い。

君は、皆を導く希望の象徴

或いは、希望の光……だが

その道の先は、天国か地獄か……」


「そんな変なことを言うから

"魔術師"なんて言われるんですよ。」




「さて……あなたが現れたということは

……何か教えてくれるんですね?」


「……君は、今回の"ビースト"を倒した後

つまりは"自然を越えた先"は……

何が起きると思う……?」


「……人々は、その力を求めて

戦争になる可能性が高い……ですか?」


「あぁ……そうだとも。

この膨大な量の本を置いたのも

戦争の引き金になる程の情報を、世に出さない為の

……カモフラージュだ。

万が一手にしても、貸すつもりはないがね。」


「……あなたは、止めに来たんですか?」


「……いいや。それは違う。

考え方を変えるのだ……」


「考え方?」


「……そもそも人は、何故力を求めるのか。

どこまで良く、どこから"悪"なのか……


……まず、何故人は力を求めるのか……

それは、"今よりも強くなりたい"という力への願望だ

しかしその願望は、悪ではない。


ならば、悪とは何なのかだが……

その力に溺れたり、悪用したり、

または、そもそも制御出来ないもので

絶対に手を出してはいけないものに手を出したり……


……それが"悪"だ。ここで君に質問だ。」


「……?」


「君は人類が、これ以上力をつけるのは

"善"か……"悪"か……?

食物連鎖の頂点の…その先を求めるのは

良いことなのだろうか……?」


「……面白い話題だな。

だが、それと同時に難しい話だ。

答えは……"ない"な

力をつけること自体は悪ではないが、

力を使うことで、善にも悪にもなる……

私はこう思う。」


「……それはありふれた言葉だな。

もう少し面白い回答が聞けると思ったが。」


「……"ありふれた"、か。

確かにそうだな。

あなたが答えを教えてくれると思ったから

つい適当に答えてしまったよ。

……そうだな……うん、"考えた"」


「……聞かせてもらおうか。君の回答を」


「まずここは、人類の歴史の最初、

力を持ち始めた原始の時代を思い浮かべよう。

原始の時代とは……恐竜が居た世界……

まずは氷河期前の想像をしよう。


その時代の人類は、食物連鎖の頂点ではなかった。

人々は肉食恐竜を恐れていただろうな……

ティラノサウルスやアロサウルスなど、

その辺の草原にいる、

自分たちより巨大な、旧世界の"純粋な力"が

その時代、食物連鎖の頂点たらしめていた……」


「……フ、先生モードか……」


「しかし、その恐竜は全てではないが、

ほぼ絶滅した。純粋な力でも、自然には勝てなかった。


……しかし、人類は生き残った。それは何故か。

恐竜とは違く、"知能"を持っていたからだ。


原始人は今の現代人程ではないが、

"知恵"を振り絞り、火を操ることに成功した。


火を起こし、火を消し、火を恐れなかった

それが初めて人類が手にした……"力"だった。


そこから人類は進化という"武器"を使い、

"叡智"という力を手に入れた。


ホモ・サピエンス達が築き上げた叡智の結晶は

人類の武器を棍棒から、今じゃ鉄や鋼の剣だ。


この偉大な力は天井を知らず、

遂にはこの地球の、新たな覇者として

人類は君臨し続けている……


これが凄く大雑把に言った

人類の力の発展だが、

人類の力が強くなる絶対条件は、"敵"が居ること


そして今、人類の敵が現れた。

"力"を、手にする時だ。


人類が力を手にしていった過程で、

戦争したり、いがみあったりしたのは

肯定する気はないが、世界への視野が広がり、

自分の脅威になるかもしれないという

"本能"が働いたからだ


今は余程のことがない限り、

国同士の戦争とやらはしない。

人は進化し続ける。


力を使うことに善にも悪にもなるのなら

私は私と言う"人"である限り、

人の"善"なる心を、信じるべきだ……!!


これが人類の仲間の一員である、

私の意見だ……」





「……」


「……少しカッコつけ過ぎてしまったか?

無言ということは、可笑しなことを言ってしまったか」


「……いいや、むしろその逆だ。

私は関心してしまったよ

お前さんの答えに。」


「……そうか、なら良かった。

それで、"魔法"を教えてくれる気になりましたか?」


「あぁ……そうか

そういえばそういう話をしていたのだったな。

フッ……教えよう。

その前に、君の精鋭部隊とやらを

ここに集めると良い。

良いことを教えてやろう。」






そうして、人類の"力"とは、善か悪か


その答えは、主人公は

悪になることを否定は出来なかった


これを見ているあなたは、

人の善の部分を……

良心を、信じることは出来ますか?

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