人類は自然を越えられるのか




黄色いレンガの道の上

私、アーフェン、村長の

男3人で隣町"シンバシ町"へ向かう


すっかり日は落ち、

長月の三日月がこちらを向いて笑っている


まるで夢でも見たのかと思ってしまうほど

道中、何も起きなかった。




そうしている間に

いつのまにかシンバシ町へと着いた



青い屋根と白いレンガで作られた家が並び

港区には海が見え、砂浜もあり

水平線には、遠くに微かに蜃気楼も見える



村長は、このシンバシ町の町長とは

長い付き合いと言うこともあり

村長は一旦そこで泊まると言い、

別行動となった







バシャバシャッ


「号外号がぁぁぁい!!

"トルナンド集落"が、謎の魔獣"ビースト"に

村全焼の危害を加えられました!!

この隣町の"シンバシ町"は騎士様が居るけど、

十分お気をつけて〜!!」



町の記者だろうか

新聞をばらまきながら言う




「ほんと、他の騎士さんは何やってんだよ」


「……謎の獣"ビースト"

やはり、前から考えていた

図書館にあるというあれを……」


「……なんだ?」


「……ああ、こちらの話だ。

気にしないでおくれよ。」


タッタッタッタッ


「隊長ぉ!ここにいらしましたか!!」


「…騒がしいやつが来たな」


この女の人の外見は、薄い肌色の髪をして

髪型はポニーテール、澄んだ青色の目をしている


白いシャツを着ていて、

黒いスカートを履いたこの子は

私の部下で、18歳という若さで騎士団に入った

将来有望株として名を馳せている特待生だ。


「はいはい、騒がしい者が通りますよ〜……

じゃなくて、大変なんですよ!!」


「どうした?」


「各地で謎の獣、ビーストが暴れていて……

しかも全て大勢で!!それでそれで

……第八騎士群がその大勢のビーストと戦ったのですが

……全滅だそうです!!」


興奮で語彙力が低下している


「全滅……だと?

逃げる隙もなかったということか……」


「おい騎士さんよ。

ほんとに大丈夫なのか?」


「……あの、そちらの方は?」


「あぁ、紹介が遅れた。

こいつは先のトルナンド村の生き残り

自警団に所属していたそうだが、

運良く生き残ったから連れて来た」


「"アーフィン・ザック"!

"トルナンド自警団"の団員でした!!」


「あらやだ元気に挨拶しちゃって

ワタシは"カレン・ルナ"!

多分同い年でしょう?

そんな畏まらなくていいわよ♪」


「……私は、騒がしいのは苦手だが

嫌いではない。これから騎士団に入るから

お互い、仲良くやれ。」


「ハイ!隊長!!」


「…あ、ハイ!!」


ひよっこ戦士が目線をカレンに向けながら言った


ジロジロ


(可愛いなぁ……この人)


「……あんまり見ないでください

気持ち悪いです」


「ン゛ン゛ッッ!?」







トコトコトコ



「ここだ」


「ここが……第七騎士群本部!!」



平日の陽が壁の白い石材を照らす

地面の芝が足を優しく支える


レンガ道の1番先に、青い屋根に石材の壁の

巨大な宮殿のようなものがあった



出入り口の上には、丸くシンボルマークがあり

"青い三日月"がある




「すっげぇ……ここが第七騎士群本部、"正義の月"

自警団の本部とは全然違う……」


「ルナ」


「ハッ!」


タッタッタッ


「?何やろうとしてんだ?」


「……簡単な招集だ」





タッタッタッ

タッタッタッ

タッタッタッ



暫くすると、30人ぐらいの

生地は青く、ボタンは黄色い制服を着た

歳は18〜28の男女が、3列になり走って来た!




「全体、止まれ!!」


ハッ!!


「"先生"!!調査から帰って来たのかぁ!!」


一人の筋肉質で、大柄な21歳ぐらいの

男が大声で話しかける


「小生はあの記事を見聞きし、

いてもたってもいられず、

飛び出してしまう所だったぞ」


高身長の細マッチョで

腰に携える刀が似合う22歳ぐらいの男が言った


「先生が調査に行って死んでしまったら

わたし達は、どうすれば良いのですか……!?」


小柄で、いかにもひ弱そうな

19歳ぐらいの女の子も居る




(先生……?)


最初のポニーテールの女の子に小声で話しかける


(ここに居るのは"第七騎士群の精鋭部隊"で

昔は皆、隊長に武術や学問を直に教えられた

"教え子"だったのよ)


(年はそんな離れてなさそうだけど

……ていうか、先生なんてやってたのか)


(隊長は11歳の頃から、学校の先生をしていたよ。

……何回飛び級したんだっけ?)


(11歳!?)




「相変わらず、よくそんな図太い声で

そこまでの大声が出せるな。

"カイゼン"」


「おらぁずっと待ってたぞ!!」


大柄で髪は黒く、制服を着ていても

隠せないほどの大腿四頭筋や上腕二頭筋などの筋肉が

発達していた大男


"第七精鋭部隊「森の大男」 カイゼン・シュナイダー"


とてつもないパワーを持っている



「やあ、"シュヴァルツ"

その腰に携えた刀、いつもより似合っている」


「ご無事で何よりで…!」


身長が高く、

開いてるのか閉じてるのかわからない細目をして

白い髪をしている、

なんとも美麗な顔つきをしているのは


"第七精鋭部隊「ソードマスター」

シュヴァルツ・サレム"


戦闘において、無類の強さを誇っている

"精鋭部隊の部隊長"


強さだけなら、私より強いかもしれない




「"アイリス"、

第七騎士群にはもう慣れたか?」


「ハイ……!もう完璧の完璧!

バッチグーです……!!」


最後、小柄な女性で

ピンクの髪をしているその子は

最近第一騎士群から転属され

第七騎士群に来た


"精鋭部隊「葉の琴線」 アイリス・スカーレット"



他にも部隊長クラスの強い者はいるが……

その人らはこの場にはいなかったから

紹介はしないでおこう




「私はまだ若いが、

これでも数々の戦いを超えた死に損ない

まだその時ではなかったということだ

皆、待たせてしまって済まない。」


「……これが、"第七精鋭部隊"…………!!」


「ん、その隣にいる者は……

またスカウトされてきたのですね?」


高身長の彼が言った


「あぁ、ついでにこいつも死に損ないだ。

死に損ないと覚えたら十分だ。」


「なるほど……」


「いや!何がなるほどなんだよ!?

アーフィンだよ!!」





「さて……今回の調査対象は謎の獣……

"ビースト"だった。

私は調査の途中、村全焼の危害を与えた

そのビーストと思われるものと…一戦交えた。」


!!!


周囲が驚いた顔をした


ササッ


私は上着を脱ぎ、

背中を見せ、血がびっしり付いた包帯を見せた


「それは……?」


小柄な少女が言う


「これは、その獣と交戦した時ついた傷。

姿形は人間に酷似していたが

全身に5センチ程の毛が生えて

口には悪魔のような牙が生えており

手から伸びた爪は、ライオンの爪の3倍は伸びていた。

私はその爪で負傷させられた。」


「先生はどのように撃退したのか!?」


大柄な大男が言う


「当たりどころが良く、二つの大きな牙のうち

一本を折ったら、退いてくれた。

……しかし、戦闘が長引けば

私は、死んでいたことだろう…………」


!?


ザワザワ


「そんな……先生が負けるはずないよ!!

だよね皆……!!」


「小生も、あなたから武術を習った身

先生程の者が負けるなどという……」


「あぁ!!おらぁもそう思うぜ!?」


「……」


隊長は、あまりに静かだった

その静けさは、辺りの人間の騒がしさを

かき消すかの如く…鮮明にその獣の強大さを

物語っていた







「……ところで、皆は"災害"について

どう思うか?」



「津波とか……地震?」


少女が言う


「おらぁあの大きい地震が来る前の

あの警報が1番こえぇ……関係ねぇけどよ」


「そういうことではない。

災害は、なぜ…それに対抗できるであろう

人類を脅かせられるのだろうか……?」


「小生は、対策のしようがないので

対抗出来ないとぞ思います」


「ふむ……本当に対策が出来ないだろうか……?」


「というと?」


「自然災害は、いつも人類の傲慢さを突き

これまでいくつもの命が失われてきた……!

だが、失う命はあれど、

人類は災害を、必ず乗り越えることが出来た!」


私は続けて言う


「ここで問題だ。

災害とは……人類にとって、最強で最悪の脅威

そしてその"最強"とは、この間教えたはずだ

……シュヴァルツ!」


「はい……

"最強に負けは無し

しかしそこには、負けの概念あり"

……そう言いましたよね」


「そうだ!!

この世界は、物には必ず壊す方法があるように

自然相手にも、必ず壊す……いや、超える方法がある!

一万年の歴史を経た今、それを探す時が来たのだ!!」


……


一時沈黙が続く



「……ここにいる者全員、

剣を捨てろ!!本を持て!!

人智を越えた能力を持つ獣に対抗する為に……

これより…"Magic計画"を始める!!

まず最初は……"火の魔法"だ!!」


オオオオオオオオオ!!



精鋭部隊全員が声を荒げる


その声は、町中を飛び出し

風に乗り、遥か彼方まで聞こえたという……

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