第13話 【生産職人SP】

 宿敵の白銀牙狼を討伐するのに成功した数日後、晴人は『神の園』更なる奥地へと探索しようと【飛翔】で上空から目新しいモノを探していた。


 白銀牙狼を討伐したが、あの一頭だけではなく他にも白銀牙狼がこの森には存在していたので、晴人は白銀牙狼に戦闘をけしかけて、そして討伐した。


 ステータスによる自力の差がさらに大きくなったので、白銀牙狼もキャインと犬みたいな鳴き声をあげていた。


 そして、それでは刺激がなく飽き足らないので、晴人は上空から新たなナニカを求めて探し回っていた。


 すると紅い果実、【スキルの実】が実っているのを発見した。

 晴人はすぐさまその元へと駆け寄り、そこにあった【スキルの実】を鑑定することにした。



「今回も良いスキルであってくれよな!」


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【名称】【スキルの果実:生産職人SP】


【等級】神話級


【効果】


 この【スキルの果実:生産職人SP】を吸収した者は【生産職人SP】が使用可能となる。


【詳細】


 『神の園』にしか実らないとされている幻想の果実。伝承によると【スキルの果実】を一口食べるだけで、貴重なスキルを入手することができるという伝説が残っている。

 だが実際には【スキルの果実】を口に入れた者はいないとされている。



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【鑑定SP】の結果、この【スキルの実】を食べることにより、【生産職人SP】というモノをが手に入るとのことだった。

【鑑定SP】【回復魔法】という何ともわかりやすいスキルが来てからの【生産職人SP】だと正直のところイメージがあまり湧かない。


「【生産職人SP】となると生産系のスキルだってことだよな? 生産系というと鍛治、木工、装飾、裁縫系のスキルだってことだよな? 【生産職人SP】ってことはそれらを統括しているスキルだってことかな?」


 晴人は【スキルの果実】をじぃーと眺めて、【生産職人SP】というスキルがどんなモノなのか考えていたが、望むような答えは出てこない。



「まぁとりあえずこれを食べてから考えることにするか……」



 ピロリン♪


『報告、【スキルの果実:生産職人SP】を体内に吸収したことを確認しました。よって【スキルの果実:生産職人SP】の効果をステータスに反映させます』


 ピロリン♪


『報告、【スキルの果実:生産職人SP】によりスキルに【生産職人SP】を追加します』


 

 【スキルの果実】を口にした晴人の脳内にはいつも通りにアナウンス音が響き渡る。


 だがしかし——————


「あれ!? 特にステータス欄に【生産職人SP】が追加されている以上に変化は特にないな」


 【生産職人SP】は確かにステータス欄に追加されて居たがそれ以上に感覚的な変化は感じられなかった。


「はぁ……もしかしてこれは【ハズレ】なのかな」


 晴人は【生産職人SP】がもしかしたらハズレ系のスキルなのかもしれないと思った。

 駄目元でステータス欄の【生産職人SP】を鑑定してみると、その内容に晴人は驚愕した。



「【生産職人SP】全然ハズレじゃないじゃん。寧ろサバイバル生活においては最高のスキルじゃんかよ」



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【生産職人SP】


【階位】固有ユニークスキル


【効果】

 

 総合生産系上位スキル【生産職人】の更なる上位互換スキル。【生産職人】は単に生産品の品質向上、生産系熟練度UPを促す。

【生産職人SP】は必要な適切材料と魔力、イメージによってイメージしたモノを生産可能になる。



【生産職人SP】に必要なモノ

・材料となる適切素材

・材料を変換させる時のイメージ

・MP


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 晴人は【生産職人SP】を鑑定結果に驚いた。

 このスキルの性能がかなり凄かったのだ。


「【鑑定SP】によると適切な素材って書いてあるけど、恐らくだが鉄剣を作る場合はきちんと鉄を用意しなければならない、ということだろうな」


 晴人はその仮説を試すべく枝を拾って、【生産職人SP】を使用して鉄剣を作ろうとイメージする。


 すると拾った枝が突如、光輝き出し、それが収まると晴人の手には木剣が握られていた。


 さらに晴人はもう一つ枝を拾って、【生産職人SP】を使って次は鉄を作ろうとイメージする。

 

 同じように枝が突如、発光しそれが収まった時には先程とは違い、何も変化のない枝が晴人の手には握られていた。


 晴人はこの現象から【生産職人SP】の能力を考察した。


「なるほどな、【生産職人SP】は材質をイメージ通りにする能力がある、けれどそもそもの材質を変質させるような能力は持たない、ということだな」


 流石に枝を鉄に変換できる能力を持っていたらそれ以上に越したことはないが、今の【生産職人SP】のままでもかなりの有能スキルであったので晴人として万々歳な収穫であった。


 晴人は【生産職人SP】を習得した後、ホクホク顔で飛蹴兎と白銀牙狼を狩って、拠点地の洞窟へと持ち帰った。


「そういえば飛蹴兎も白銀牙狼の皮も残しておいたけど【生産職人SP】を使えば、何かに変換できるという事だよな?」


 晴人は数々の飛蹴兎、白銀牙狼の皮を残しておいた。いつか使える日が来ると期待して残しておいたのだが、それがこんなに早く来るとは晴人自身も思っていなかった。


「このどっちもかなり毛量が多いから服にするのも暑そうだし……、となるとやっぱり洞窟内はゴツゴツだしな……」


 晴人は飛蹴兎、白銀牙狼の毛皮に手を添えて、【生産職人SP】を使用して、自分が作りたいイメージを頭の中へと思い浮かべる。


 それと同時に飛蹴兎、白銀牙狼の皮が眩しい光を放つ。そして、その光が収まるとそこには


「よっしゃぁ! これは成功したみたいだな! これで今日から俺はゴツゴツの洞窟の岩の上で寝なくて済むぞ!」


 晴人が飛蹴兎と白銀牙狼の皮を材料にして【生産職人SP】で作ったのは、それはそれはふわふわの布団だった。

 晴人は異世界転移を果たしてからずっと洞窟に暮らすことは出来ていたものの、快適な暮らしをしてはいなかった。


 寝る際と洞窟内の岩の上に落ち葉を敷いて寝ていたりと環境は昔の生活からすれば劣悪だった。

 そんな環境が突如、【生産職人SP】によって快適になるかもしれない未来が見えてきたのである。


「これで俺も真っ当な生活が出来るのかもしれないぞ!」


 晴人の心は激しく高揚した。

 そして、この高揚感が晴人の頭から自重という文字を消し去った。

 

 晴人に自重という文字が消え、晴人の拠点洞窟のワクワク大改造がそこから始まった。

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