第12話 【宿敵】


 目の前に対峙した宿敵、白銀牙狼プラチナウルフが鋭い牙を見せて、ガルルルと低い唸り声をあげて、晴人を盛大に威圧する。


 流石に体長2メートルもある白銀牙狼の威圧はいくらステータスがあろうと晴人へと恐怖心を与えるのには充分だった。

 

 目の前に来てみると遠くから見た時よりも強大な威圧感が襲いかかり、凄まじい迫力である。

 

 現世で見る狼なんてものは人のサイズを超えることはなかった。

 それなのに今晴人の目の前にいるのはその大きさを遥かに凌駕した白銀の牙狼。


「こいつ近くで見ると本当に威圧感が半端ないな……」


 ガルルルルル。


 またも低い雷のような唸り声をあげ、伯爵牙狼はその鋭い瞳孔で晴人を睨みつける。


 その瞬間、ビリビリ!ビリビリ!


 白銀牙狼の体毛が一気に逆立つ。

 それと同時に白銀牙狼の体の周りに紫電が纏う。


「なっ! 【雷魔法】があるのは知ってたけれど、こんな風にも使えるとはな……」


 そして、晴人へと紫電が物凄い勢いで襲いかかる。

 晴人は咄嗟に危険を感じ、反射でギリギリのところで躱す。


 ドッカァァァァァァン!!


 躱したのと同時に落雷のよつな轟音が鳴り響く。


「いやいや、マジかよ。あんなの喰らったら人堪りもなく真っ黒焦げだよ……」


 白銀牙狼によって放たれた紫電の雷光は晴人がいた場所を貫き、後ろの木を貫き倒した。

 抉られたかのような跡がそこには残っていた。

 

 落雷による余波によって木がメシメシと音を立てて、轟音を上げて倒れる。


「容赦って物が一切無いみたいだな……あんな攻撃を喰らったら俺の腹にも穴が空くんだろうな……」


 ステータス面では白銀牙狼を凌駕している為、心配ないと思っていたのだが、あの攻撃を見て仕舞えば晴人の自信が喪失するのも無理がない事だろう。


 そして、余裕がない晴人に対して、容赦なく白銀牙狼の紫電が襲いかかる。


 ドカンドカンとあちこちで轟音が上がる。

 晴人もステータスで劣る白銀牙狼に負けじと【風魔法】を使って対抗する。

 白銀牙狼が紫電を放つ前に勢いを溜めた風刃を放つ、白銀牙狼の動きを牽制する。


 運良くも白銀牙狼の前足に放った風刃が被弾したが、それでは致命傷には至らなかった。


 白銀牙狼は攻撃をぶつけられるとは思っていなかったのか、激昂していて最も低い唸り声を上げる。

 

 風刃を喰らった白銀牙狼の周りには激昂と同時に、先程とは比べ物にならない程の紫電が纏う。


 そして、次の瞬間。


「き、き、消えた!?」


 目の前にいたはずの白銀牙狼の姿が突如消えた。

 どこを見渡しても白銀牙狼の居場所が分からない。

 ただ激しい激昂の怒りの存在感はあって、近くに白銀牙狼がいることだけはわかっていた。


 だがその動きを捕捉し切れず、気づいた時には白銀牙狼は俺の目の前まで迫っていた。


 白銀牙狼はその持ち前の長い鋭爪で晴人の胴体を切り裂かんとする。


 晴人も白銀牙狼のあまりの異常な速さに付いて行くことができず、咄嗟に胴体を守ろうと腕で庇う。


 その結果庇った腕に大怪我を負う。

 今にも腕が引きちぎられそうな痛みが晴人を襲う。

 晴人はすぐさま【神聖水】を吸収して、HPを回復させ、【回復魔法】によって傷を完全に治癒する。



「白銀牙狼め、なんてスピードしてんだよ……あれじゃあ雷そのものじゃねぇかよ! 恐らくだけどあの紫電を帯電させることによって雷と同化して速度を異次元のスピードまで上げているんだろうな……」


 晴人は敵ながらも、白銀牙狼の技には憧れを抱いてしまう。

 それも仕方がないことだろう。紫電を帯電させてスピードアップするなんて憧れない方が難しいことだろう。


 白銀牙狼は晴人の憧る気持ちなどは度外視でまたも激しい紫電を帯電させ、姿を眩ます。


 だが晴人も2度も同じ手を喰らうわけにはいかない。

 

 初見では捕捉し切れなかった白銀牙狼の動きもステータスにだいぶ差があるお陰が、空気の流れや風の変化によってだいたいの場所が推定できるようになった。


「やっぱりそうくると思ったよ、この白銀牙狼オオカミめがぁぁ」


 

 背後から最後のトドメを刺そうとする白銀牙狼。  

 だがいくら素早いと言っても出現する場所と出現するタイミングさえ分かれば何も怖くはない。

 晴人はタイミングを捕捉し、背後から襲いかかる白銀牙狼を難なく躱す。

 

 そして攻撃に全振りしていた白銀牙狼に隙が出来たタイミングで


暴風刃連乱撃トルネード!」


 次の瞬間、暴風が巻き起こり、風の刃が次々と白銀牙狼へと襲いかかっていく。

 この魔法は晴人が今出来る最大級の【風魔法】の攻撃である。

 小さく強靭な風の刃が螺旋暴風状に白銀牙狼へと襲い掛かり、容赦なく白銀牙狼の生肉を切り刻んでいく。


 そして白銀牙狼の生体が感知できなくなった頃に解除すると、そこには血だらけで惨たらしい姿に変わり果てた白銀牙狼が横たわっていた。



 そして、


 ピロリン♪


『報告、白銀牙狼プラチナウルフ1匹の討伐を確認致しました。そして白銀牙狼プラチナウルフにより、【Exp】1,000,000を入手しました。ステータスに反映します』



「よっしゃぁぁぁ! ようやく宿敵の白銀牙狼を倒したぞぉぉ!」


 こうして晴人は一つの目標であった白銀牙狼の討伐に成功するのであった。


 その後は【飛翔】を使って、討伐した白銀牙狼を拠点地である洞窟へと持ち帰った。


 そして、白銀牙狼を討伐した夜は、せっかくなので白銀牙狼の肉を頂くことにした。


 白銀牙狼の肉は野生の獣らしく、獣特有の臭さが酷いと思っていたのだが、それほどの臭みはなく、意外にもあっさりした味だった。


 そして白銀牙狼の肉も鑑定でよく見てみると【祝福の肉】と表記されていて、【祝福の肉】の効果が晴人のステータスに作用していた。



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【名前】竹中晴人(タケナカハルト)

【種族】人族

 Lv.102/♾

【HP】201100

【MP】169100

【攻撃力】184100

【防御力】184100

【敏捷】182100

【知力】182100

【幸運】192100

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【スキル】


【鑑定SP】

【投石】

【跳躍】【飛翔】【瞬動】

【威嚇】

【風魔法】【雷魔法】【回復魔法】

【取得経験値10倍】【必要経験値1/10倍】


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【称号】神の園に踏み入れし者

    異世界人


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 【祝福の肉】によって宿敵の白銀牙狼が有していた【雷魔法】【瞬動】【威嚇】というスキルが手に入った。

 この中で一番晴人が気に入ったのはやはり【雷魔法】であった。

 雷を操作できる【雷魔法】を使いどころによれば一番強いと言っても良い。


 さらには強敵の白銀牙狼を討伐したことに加えて、【取得経験値10倍】【必要経験値1/10倍】によってかなりレベルが上昇した。

 さらにはレベルを100超えた辺りからだな、1レベル上げることにより、各値1000上がっていたのが、超えてから10000も各値が上がるようになった。


 さらなる力をつけた晴人はまだまだ謎が多い『神の園』の奥地へと【飛翔】を使って駆けていくのであった。

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