第7話 【祝福の肉】
晴人は死闘を制し、見事討伐することがかなったフライラビットを現在、居住場所としている洞窟へと担いで運ぶ。
異世界転移してからのサバイバル生活の拠点としてその洞窟で生活している。
洞窟はまだまだ先がありそうだが奥にはまだ足を踏み入れていない。
晴人は洞窟に帰還すると先程捕らえた兎を食べる為に準備を始める。
晴人は昔、祖父に連れられて猪の狩りをした経験があった。
その際に祖父には火の起こし方、捕らえた動物の解体の仕方、血抜きの方法を教えてもらった。
まさかそんな知識が本当にサバイバルの生活で役立つとは思いもしなかった。
教えてもらった手順で、晴人は飛蹴兎の血抜き、皮剥、解体を進めていく。
久しぶりに食べられる肉に晴人の心は躍る。
「やっと食べ応えのある食材が手に入ったよ。最近は変な果実しか食べていなかったからな……これを喰えば力が漲る」
晴人は久しぶりに食べられる肉と想像するだけでも、口から涎がドバァと湧き出る。
この『神の園』では塩や胡椒は何処にも見当たらなかった。
小川をどれだけ辿っても日が暮れるまでには海には到達しなかったので海水があるというのは今のところはわからない。
けれど『神の園』に自制している草の中で、かなり香りが高いものを発見したので、香草を使って飛蹴兎を調理することにした。
なるべく大きな石を集めて窯を作り火を付ける。
枝を細く櫛がわりにして焼いていく。
火が兎の肉に通ったのか時間が経ってムンムンと香草の香ばしい匂いと兎肉のジューシーな匂いが洞窟内に立ち込めた。
「意外といい感じだな! もっとしょぼくなると思っていたが」
晴人の口内にさらに涎が噴き出る。
飛蹴兎の火の通り具合を念のため確認する。
「よし! これなら食べてもだいじょうぶだな」
晴人は飛蹴兎の串を良い頃合いで火から取り出す。
「いただきまーすっ!」
晴人は取り出した熱々で脂が滾る飛蹴兎に勢いよく齧り付く。
「あふあふあふ、ん、んまーーい!」
熱々な為に飛蹴兎が口内で飛び回る。
香草の刺激的な香りが鼻腔を擽り、さらに飛蹴兎の肉から溢れ出んばかりの濃厚な肉汁が晴人の舌を包み込む。
野生の飛蹴兎の独特の臭みと、その臭みから派生する旨さが堪らなく美味である。
晴人が飛蹴兎の肉を一口食べ、咀嚼した直後。
ピロリン♪
『報告、【祝福の肉:フライラビット】を体内に吸収したことを確認しました。よって【祝福の肉:フライラビット】の効果をステータスに反映させます』
ピロリン♪
『報告、【祝福の肉:フライラビット】によりスキル欄に【跳躍】【飛翔】【風魔法】を追加させます』
晴人の脳内に【ふしぎな果実】を食べた時と同じアナウンスが脳内に流れる。
疑問に思い晴人は自身のステータスを確認する。
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【名前】竹中晴人(タケナカハルト)
【種族】人族
Lv.7/♾
【HP】26100
【MP】24100
【攻撃力】31100
【防御力】21100
【敏捷】24100
【知力】24100
【幸運】21100
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【スキル】
【鑑定SP】【投石】【跳躍】【飛翔】【風魔法】
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【称号】神の園に踏み入れし者
異世界人
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晴人が自身のステータスを確認すると、討伐したフライラビットが所持していたスキル【飛翔】【跳躍】【風魔法】が自分のスキル欄に追加されていた。
晴人はこの事態の原因を探るべく、飛蹴兎の肉に【鑑定SP】を使用する。
すると、飛蹴兎の肉の鑑定結果が表示された。
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【名称】【祝福の肉:フライラビット】
【等級】神話級
【効果】
【祝福の肉】を食した者に、生体が所持していた時のスキルを譲与する。
【詳細】
『神の園』にしか棲息しない幻の魔物の肉。
この肉を喰らうと普通では手に入れる事が出来ないようなスキルが取得できると伝説がある幻の肉。
幻の存在であり、本当に存在することは知られていない。
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飛蹴兎の肉の鑑定結果によると、飛蹴兎の肉はただの普通の兎肉ではなく、神話級の【祝福の肉】という代物だという。
その【祝福の肉】の効果というものが生前所持していたスキルを吸収した方へと譲渡するというものだという。
効果が発動したおかげでフライラビットが所持していた【飛翔】【跳躍】【風魔法】を取得できたという訳だ。
晴人はこの事に驚きと興奮を隠せずにいた。
それもそうだろう。異世界に来てスキルが食べる事によって手に入るなんて事を知ったら、誰でも興奮せざるを得ないだろう。
晴人はその後も初討伐した飛蹴兎を有り難く頂いた。
飛蹴兎を残らずに食した晴人は色々と充足感に満ち溢れていた。
「スキルも手に入るし、念願の肉も食えたし今日は最高の1日だ!」
そしていつもだったら主食の【ふしぎな果実】を今日は贅沢なデザートとして頂いた。
そして無事に飛蹴兎を討伐し、【祝福の肉】を食らった晴人はその翌日。
【祝福の肉】によって手に入れる事ができたスキルを使いこなせるようになる為のスキルの検証を始めた。
晴人の心には【飛翔】を使って、何としてでも空を飛びたいという強い希望があった。
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