第6話 【撃破】

 晴人はフライラビットが繰り出す風魔法の乱撃をギリギリのところで必死に躱す。


 目の前で構えた木の枝が知らぬ間に斬断された光景を思い出し、次は自分の体までもが切断されるのではないかという恐怖心が晴人の身体を突き動かす。


 フライラビットはその名の如く空を飛翔する。

 晴人はどうしたらあの身体で飛翔することができるのか疑問で仕方なかった。

 だが疑問を抱いている暇もなく、そういうものだと割り切った。


 フライラビットは空へと飛翔して、晴人が決して届かない場所から風魔法の攻撃を放つ。


 ビュシッ!

 ビュシッ!

 ビュシッ!


 届かない上空からの攻撃に苛立ちを隠せない。

 そして攻撃は躱すばかりで反撃出来ない状態が晴人の苛立ちを加速させていく。



「空に飛ばれるとこいつ一段と厄介だな……」


 フライラビットは依然として空に飛翔して、高飛車のように空から風魔法の斬撃を放ってくる。

 晴人はその斬撃を躱しながら、フライラビットへと一矢報いるチャンスを今か今かと待ち続けていた。


 晴人がフライラビットの風魔法の斬撃を躱す事が出来るのも【ふしぎな果実】を食べることによってステータス値が大幅に上昇しているからである。

 晴人は【ふしぎな果実】で上昇した身体能力をフル活用して、瞬身の閃光の如く斬撃を躱していく。


 晴人が躱すことによって、木々が身代わりになるかのように薙ぎ倒されていく。

 どんどんと周りに倒木が積み上がっていく。


 晴人は風魔法の斬撃を躱していく間。

 攻撃と攻撃のわずかな隙を狙って、投げれそうな 小石を集めていた。

 それもフライラビットへと対抗する為の一つの手段である。


「まずはあのフライラビットを俺と同じ地面に下ろさないと」


 晴人は飛翔を続けられての対戦が不利だと踏んで、フライラビットを地面に引き摺り下ろす事から方法を模索する。


 晴人は風魔法の斬撃、風刃を躱しながらもやっとのことで拾い集めることができた石を飛翔するフライラビットへと目掛けて投げつける。


 ピュッン!


 晴人が投げた小石は現世の人間では出すこともできないすごい勢いスピードでフライラビットへと向かっていく。

 

 だがそんな簡単にフライラビットを仕留めれる筈もなく、フライラビットはいとも簡単に晴人の渾身の投石を躱した。

 晴人はフライラビットのあまりの素早い動きに驚きを隠せない。


「クソッ! 外れたか……あいつ、どんな反射スピードをしているんだよ! 軽く300キロくらい出てたと思うのに」



 晴人の投石を躱したフライラビットは晴人に攻撃を狙われた事が癪に触ったのか分かりやすく激怒を示した。


 フライラビットは前とは比べ物にもならないスピードの風刃を、比べ物にもならない連射スピードで放ってきた。


 フライラビットと晴人の戦闘が過激なものとなり、周囲の地面が戦闘による余波によって揺れる。



 フライラビットの攻撃は確かに過激にはなったが、そのお陰で攻撃が単調になっていた。

 晴人はその単調な乱撃を冷静に躱していく。

 そしてフライラビットから繰り出される攻撃と攻撃の間の隙を狙って、渾身の投石を繰り出す。


 フライラビットの風魔法による乱撃と晴人による投石という激しい攻防は暫く続いたが、勝敗は状況が変わると一瞬でついた。


 

 フライラビットは先程のように風刃の乱撃を晴人へと放とうとするが、フライラビットの勢いが止まった。

 

 晴人は何が起こったのか【鑑定SP】を使用して、フライラビットの状態を把握する。


「お! これはもしかしてMP切れってやつか! となるとこの兎を倒すには今がチャンス!」


 【鑑定SP】の結果、フライラビットは風魔法と飛翔を使い過ぎたのかMP値が殆ど0になっていた。

 それを見た晴人はフライラビットがもう魔法を使えないだろうと判断した。


 フライラビットは魔法が使えない事にきづいたようで、先程とは打って変わって焦った様子を見せていた。


 晴人はその一瞬の瞬間を見逃さなかった。

 生まれた隙を逃さずに、晴人はコンパクトなフォームで小石を渾身の勢いで投げつける。


 晴人の渾身の一投はフライラビットへと一直線。そして渾身の一投はフライラビットの耳へと直撃し、勢いよく耳を貫いた。


 ピギィィィ!


 鋭い投石によって耳を貫かれたフライラビットはあまりの痛さになのか、悲痛の泣き声をあげた。

 だがそんな声には晴人は騙されたりしない。


 撃ち抜かれたフライラビットは力なく空中から地面へと落下していった。

  

 このまま落下して逃げられても面倒だと思った晴人は着地する前に仕留めようともう一度鋭い投石をフライラビットへと放つ。


 そして鋭い投石はまたもフライラビットを撃ち抜いた。


 ボトリと空中から落ちたフライラビットは二度と動くことは無かった。


 そして、フライラビットが死んだ事を確認すると、晴人の脳内にいつも通りのアナウンスが流れた。



『報告、フライラビット1匹の討伐を確認致しました。そしてフライラビット討伐により、【Exp】を100,000p入手しました。ステータスに反映します』


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【名前】竹中晴人(タケナカハルト)

【種族】人族

 Lv.7/♾

【HP】26100

【MP】24100

【攻撃力】31100

【防御力】21100

【敏捷】24100

【知力】24100

【幸運】21100


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【スキル】【鑑定SP】【投石】

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【称号】神の園に踏み入れし者

    異世界人

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 晴人は飛蹴兎≪フライラビット≫を倒した事によりレベルアップした。

 フライラビットを討伐した事により【Exp】と呼ばれるポイントが晴人には加算された。

 その結果晴人はステータス上ではレベルアップを果たし、Lv.7へとなった。


 そしてレベルアップの恩恵なのか、晴人のステータスの各項目が6000ずつ上昇していた。

 レベルが上がった分掛ける1000ずつ上昇した。


 晴人はフライラビットを討伐した直後色々な興奮にその身は飲み込まれた。


 まずは初めてこの異世界でレベルアップをする事が出来たこと。それと何よりこの異世界で初めての肉が食べられるということにである。

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