8 もうひとりの……(初稿)
前の「 7 3人の訪問者」と合わせて書き足し、2000文字少しになるように分け直しました。
タイトルも「 8 もう一人の……」に変更しています。
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少女の名前を聞いてトーヤは思わず息を飲んだ。
「ミーヤ」
その名前はトーヤにとって特別な響きを持つ。
親代わりの大事な人間の名前だ。
こんな見知らぬ土地でその名前に出会うとは思わなかった。
「どうかなされましたか?」
ミーヤと呼ばれた少女は跪いたまま、また
「いや……」
まさか、こんな生まれ故郷から見ると地の果てのような場所でその名前を耳にするとは思わなかった。あの町を離れた理由の一つがその名前から離れたいからだったというのに。皮肉なものだ。
「トーヤ、トーヤってば、おい、どうしたんだよ?」
「ん、あ?」
「なんか、急に黙っちまうからさあ」
ベルの言葉に現実に引き戻された気がした。
「あ、ああ、すまん、ちょっと色々思い出してたもんでなあ」
「寝ちまったのかとおもったぜ」
「まあ、色々あったな、とな」
「そうなのかよ」
ベルは
「まあ、なんでもいいけどよ。そんで結局シャンタルに会ったのはその次ぐらいなのか?まだ全然出てこねえんだが」
「いや、会ってない」
「は?」
「この後、まだしばらくは全然会ってねえな」
「なんだよそれー!」
「世話役の何人かの女たち以外とはその後しばらく誰とも会えなかった」
「あ?」
「まずはな、俺の体調がまだよくないってことだ」
「ああ、嵐で溺れたんだものな」
「その後5日も寝てたしな」
「うん」
「正直、起きた時は何がなんだか分からなくて気がついたら起き上がってたが、体はガッタガタだった」
「そりゃそうかもなあ」
「マユリアや大臣のおっさんらが帰った後、ベッドの上にひっくりかえった」
「おいおい、大丈夫かよ」
「大丈夫じゃなかったな」
「!」
ベルが身を乗り出して心配そうにトーヤを見た。もう何年も前の出来事だと言うのに、目の前の男が今にも倒れるんじゃないかとそういう目をしている。
「世話係のミーヤがえらく心配してな、医者を呼んでくれて、それで診察を受けてどこが具合が悪いか聞かれたのでこう答えた」
「なんてだ」
「腹減った、ってな」
ベルが
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