ある男の記録、あるいは記憶・1

 空から少女が降ってきた。

 そんなことありえないと思うかもしれない。しかし今目の前で起こっていることは否定のしようがない事実であった。あるいは僕の頭がおかしくなったのか。

 美しい少女であった。白銀の髪に月の光が反射して、キラキラと光る。髪をたなびかせながらゆっくり、ゆっくりと落ちてくる。


 その少女がどこから現れたのか、何故空から落ちてきたのか分からない。その少女と関わることによって困難に見舞われる可能性は高いだろう.だが、少年にとってそれはほんの些細なことであった。目の前に身元不明の少女がいる。ただそれだけで助ける理由になり得るのだ。

 そうして少年は少女と出会い、人生は変わった。あるいはそれは必然だったのかもしれない。


 少年にこれから起こることを第三者が見たのなら、その少年と少女の出会いは不幸であると嘆き、悲しむだろう。

 では少年にとってその出会いはどうだったのだろうか。今となっては本人以外、いや本人すらもわからない問だ。

 これはそれを知る旅であり、少年と少女の出会いと別れの物語である。




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 1人の少年が暗くなった道を歩いている。この背中はどこか寂しく、暗い雰囲気をまとっていた。吐く息は白く、次々に空気に溶けていく。

 チラチラと雪が降り初め、少年は足取りを早めた。周りに人の姿は見えず、代わりとばかりに道沿いの家が光を放っている。中から賑やかな声が聞こえてくる。少年はそれを気にも止めず歩き続ける。

 やがてそれほどの広さのない公園が見えてくる。少年にとってはよく小さい頃に遊んでいたので、思い入れの深い場所であった。

 雲の隙間から月の明かりが漏れ、雪に反射し幻想的な光景を作り出す。少年は思わず足を止め、その光景に魅入る。

 突然公園の上空が輝き出す。光は集まり、やがて人の形を形成した。そうしてゆっくりと落ちてくる。白銀の髪がたなびき、キラキラと光る。

 少年は驚いたがひとまず落ち着き、少女が地面に落ちないよう受け止める。

 真正面で少女の顔を見る。雪を思わせるような儚い印象をもたせる少女であった。肌は病的に白く、体温が異様に低いその体は死んでいるのではないかと思わせるほどであったが、胸が上下していることによってかろうじて生きていることが分かった。

 少年は悩む。しかしそれも一瞬で、家に連れて帰る判断をする。

 少女を背負うため、とりあえずベンチに寝かせる。万が一がないように慎重に背負い、家へと歩を進める。

 自宅につき、鍵を開ける。ただいまと声を上げる。返事はなかった。

 少女をソファに寝かせ、暖房をつける。

 少女を背負ってきたことにより、疲労が溜まった少年はそのまま眠りについた。

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