第11話
放課後、オカルト研究部のある第4校舎の4階へ向かう。昨日の校舎案内で教えてもらっていたのだ。
立ち上がろうと席を後ろに引き、前傾姿勢になったとき、襟を引かれ再び座る羽目になった。
誰がやったのかと後ろを向くと、まさかの結崎さんだった。驚いていると、彼女は口を開いた。
「どこ行くの?」
「え?」
脳内を疑問が埋め尽くす。『どこ行くの?』っていうことは、俺がこれから行くところを聞いているのか?そうなのだろうが、結崎さんは必要以上のことを喋らないので意図が伝わりにくいな、と心のなかで苦笑する。
「オカルト研究部だよ」
「そう」
……え、それだけ?流石にそれはないだろうと結崎さんに、何か用があったのか、と聞くが、別に、と言ったきりカバンを持ち、教室を出ていった。
呆然としていると、槙也はその会話を聞いていたのか近寄ってきた。
「先程の会話もそうであったが、結崎さんなかなか意思疎通が難しい性格であるな」
「そうだなぁ。話しかけにくい人は何回も会ってきたけど、意思疎通が難しい人は初めてだな」
「まぁ、今クラスで彼女と一番多く話しているのが君なんだ、彼女のことは任せたよ」
「お前は誰目線なんだよ……」
「では、修。私は帰るよ。また明日」
「ああ、また明日な」
槙也はそう言って教室を出ていった。教室には陽キャグループしか残っていない。どうやら今日はどこの部活体験へ行くのか相談しているようだ。それにしても、赤城青哉と天宮司晴人はやはりそこに入っているのか。いやぁ、やっぱり違うねぇ。と、何が違うのか分からないが、修にとっては何かが違うのだろう。やはり何が違うのかは分からないが。
修は教室を出て、第4校舎へ向かう。
オカルト研究部と書かれた札を見て、間違っていないことを確認し、ドアをノックする。
中から、入っていいよ〜、という声が聞こえてきたので遠慮なく入らせてもらう。
部室の中を物色する前に1人の女子生徒が目に入った。どうやら中には1人しかいないようだった。
その人はこちらに背を向け、ダンボールの中を漁っていた。
「ちょっと待ってね。よいしょ、ここを縛って……出来た!それで何か……って男子ぃぃぃ!?」
その人は俺を見てかたまり、いきなり叫びだした。俺はその人のことが心配になり、声をかけた。
「え、ちょっと大丈夫ですか?」
「……ごめんなさい。ちょっとこの部室に男子が入って来るとは思わなかったから驚いちゃいました。この部室に入ってくるってことは新入生ですよね?もしかして部活体験ですか?」
俺はこの人が言ったことと、昨日槙也に言われたことが重なり、少し怖くなったが、今更あとにも退けないので、この人の言葉に返答する。
「えぇ、まぁ」
「そう!どうぞ座ってください。とりあえず自己紹介からしますね。私は3年の
そう言って遠野先輩はニコリと微笑んだ。先輩は同年代の女子と比べるとやや背が低いぐらいで、眉尻が下がっていて、大人しそうな印象を受ける。おさげの髪も、それを助長させる要因になっているだろう。
遠野先輩にオカルト研究部の活動内容について聞くことにする。
「遠野先輩、オカルト研究部って何をしている部活動なんですか?」
「……主に作品鑑賞とか作品の批評会とかですかね」
先輩は何か考え込んだあと、そう答えた。
「作品ってどんな作品ですか」
「……えぇ、まぁ色々ですね」
「色々、ですか」
先輩は何かを誤魔化しているかのように答える。それを訝しく思った俺は、立ち上がり部室の棚にある本を適当に選んでとる。その際、先輩から何かを諦めたかのような声が漏れ聞こえたが、気にせずその作業を続ける。
適当に選んだ本の題名は『競争 その本質と目的』。題名を見ただけだとなかなかに難しそうな本でだった。これを作品と呼べるのかという問題はさておいて、あまりにもほんの厚みが足りていないような気がする。そう、それはまるで別作品の表紙を持ってきたかのような……。
俺は本の中程のページを開けた。そこには……
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第3話をちょっとだけ変えました。ストーリーに変化はありませんが、これからの物語で矛盾を感じた方がおられるならそこかもしれないので、そのときは見返してくれると幸いです。
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