第6話

 新聞を持ってきた東村先輩は、それを机に広げ俺たち2人によく見えるようにした。それはともかくどうやら楠木高校独自の新聞のようで、新聞部が作ったもののようだ。


「これがどうかしたんですか?」


 新聞を見せた意図がわからなかった修は、東村先輩に質問する。


「ここを見てくれ」


 東村先輩は両開きの左側を指さしながらそう答えた。そこには『学校の七不思議に迫る!第4弾!トイレの花子さんは実在するのか!』と、見出しが大きく書かれており、端っこにミステリー研究部とあったことからこの部活が作成したものだと分かった。


「俺たちの活動は地域や校内のミステリーについて調べ、それを校内新聞に載せることが主になってくるな。この『学校七不思議シリーズ』以外にも『噂話シリーズ』や『本当か嘘かシリーズ』とかもあるな」


 案外しっかりとした部活動で感心する。不思議なのが、これがミステリー研究部ならオカルト研究部は何をしているのかということなのだが、それは明日分かることなので今は置いておく。


「まぁ、うちの部活動内容はそんな感じだな。あと何か説明してないことあったかな……」


 バンッ!!という大きな音と共にドアが開いた。


「やぁ、みんな部活動やってるかー!」


 入ってきたのはボブカットの女子生徒だった。髪色は少し茶色がかった黒で、制服を着崩していることから一見するとギャルにしか見えない。その人は俺たちの存在に気づいたのかこちらを向いた。


「お?君たちは体験の人かな?ようこそミステリー研究部へ!私は2年の桐島茜きりしまあかね。よろしく!」


 そう元気よく挨拶した。すると突然読書を続けている寺島先輩の方へ目線を向け、眉を吊り上げつめよった。


「コラッ!聡、新入生が来てるのに読書してちゃ駄目でしょ!東村君を手伝いなさい!」


「えぇ〜。面倒くさい」


「はぁ?何言ってんのよ!もしかしたら入ってくれるかもしれないのよ!」


 突然寺島先輩と言い合いをしだした桐島先輩に俺が目を白黒させていると、東村先輩がコソッと俺たちに話しかけてきた。


「あいつらはいつもあんな感じだから気にしないでくれ。ああ見えてあいつら付き合ってるんだぜ。いやぁ、あれは大変だったなぁ」


「はぁ」


 しみじみと東村先輩は最後にそう独り言ちた。

 目の前で繰り広げられている言い合いを見ていると、どこか夫婦喧嘩に似たものを感じたので、東村先輩の言葉に納得する。

 ずっと言い合いをし続けられると困るので東村先輩が止めに入る。


「まぁまぁ、2人共そこまでにしとかないか?新入生も来てるし、夫婦喧嘩は後でにしてくれ」


「「……。」」


「よろしい」


 なんとなくこの3人の力関係が分かった気がする。そういえば、さっきから槙也が静かなのだがどうしたのだろうか。

 そう思い、槙也に視線を向ける。


「……」


 目線を向けても何も反応せず、瞬きすらしない槙也にこれはおかしいと思い、声をかける。


「おい、槙也。どうしたんだ?さっきからずっと静かだけど。何かあったのか?」


 すると槙也はゆっくりとこちらを向き、告げた。


「トイレに行きたいのだが、場所が分からない。もうすぐで、漏れそうだ」


「そういうのは早く言えよ!東村先輩!トイレの場所を教えて下さい!槙也がやばいことになりそうです!」


「分かった!衣川くん、トイレの場所を案内する。ついてこい!」


 そうやって2人は慌ただしく部室を出ていった。

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