第5話

 「ところで槙也。お前は部活どうするんだ?」


 昼休み、いっしょに昼食を食べていた槙也、部活動体験について話しかける。


「ん〜、迷っているのだがとりあえずは今日はミステリー研究会に行こうと思っているな」


 ミステリー研究部は昨日俺が部活動体験に行こうと思っていた部活である。丁度いいので俺も今日、ミステリー研究部に行くことにする。


「じゃあ、俺もミステリー研究会に行こうかな」


 そう言うと槙也はニヤリと気色悪い笑みを浮かべた。


「ほう、デレ期か?存外、男であってもそういうのはかわいいと思ってしまうのだな。が、猫でもあるまいし、やはり気持ち悪いな」


「うるせぇよ!なんだよ、気持ち悪いって!なに?お前ドSなの?」


 思わず立ち上がって反論してしまった。今回は朝のようにはいかず、教室にいた者たちから冷たい目線を感じる。その状況に気づいた俺は、そそくさと椅子に座り直す。


「修は注目されるのを好むのだな。ふむふむ、参考になったよ」


 寒気がするようなことを平然と言う槙也に俺はどこか違和感を覚える。

 普通、人は他人に気を使い、余程嫌いな相手でなければ煽るようなことは言わないはずだ。しかし槙也の場合、人を煽っているとは微塵も思っていないような節がある。まるで、今まで他人と関わって来なかったかのような……。

 俺はそんな思考を振り切り、元々こういう性格のやつなんだろうと納得する。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




 放課後になり、槙也と共にミステリー研究部の部室へと向かう。

 学校の校舎は4つ横に並んでおり、それぞれの階を渡り廊下が繋いでいるという構造をしている。我らが1-3教室はグラウンドから見て、3つ目の校舎、第3校舎の3階にある。ちなみに、正門はグラウンドから見て1つ目の校舎、第1校舎沿いに真っ直ぐ行くとある。

 ミステリー研究部の部室は文化系の部活動が集まっている第4校舎の2階にあり、向かう途中、部室を窓から覗くとカーテンがかかっており、中の様子をうかがうことはできなかった。

 教室から部室までの距離が短かったのですぐに到着する。ドアをノックし中に人がいるのか確認する。軽快な音が響き渡り、その後中で物音がしたので明日に部活動体験を持ち越す必要はなさそうだと安心する。


「ようこそ、ミステリー研究部へ。部活動体験かな?」


 ドアが開き、現れたのは大柄な、それこそレスリングや柔道をやっていてもおかしくないような体をした男子生徒だった。そして、低い声でそう言葉をかけられた俺は、しばし圧倒されなにも反応できずにいたが、後ろにいた槙也が返事をしたことで我に返る。


「はい、そうです」


「そうかそうか、初日に来てくれるなんて嬉しいなぁ。まぁ、とりあえず入ってくれ」


「分かりました」


 しかし槙也はよく戸惑わずにいられるな。急に野生の熊が現れて踊りだすようなものだぞ。

 それはあの大柄な先輩に失礼か、と思っているとその先輩に、どうした?と聞かれたので急いで入る。槙也はとっくに入っていたようだ。

 部室は教室を2つに割ったような広さで、壁には棚や本が置かれているせいか、窮屈に感じてしまう。中にはもう一人小柄な男子生徒がおり、どことなく暗い雰囲気を感じさせていた。すると、大柄な先輩が口を開いた。


「じゃあ自己紹介をしようかな。俺の名前は東村剛ひがしむらつよし。2年だ。趣味はガーデニングで最近はネモフィラに挑戦中だ。よろしく」


「同じく2年の寺島聡てらしまさとるです。よろしくおねがいします」


 大柄な先輩は東村先輩というらしい。しかし先程からことごとく予想を裏切ってくる先輩だ。あの体格でガーデニングが趣味だとはなかなか想像がつかない。寺島先輩は逆に予想通りの暗さだった。自分の紹介を終えるとすぐさま読書に戻っていった。俺たちも自己紹介をする。


「1年の佐藤修です」


「衣川槙也です」


「佐藤君と衣川くんか。よし、自己紹介も終わったし軽く部活動について話そうかな」


 そう言って東村先輩は部活動紹介をするためか新聞を取ってきた。







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