第4話

 部活動体験について色々決めたあとぼーっとしていると家の玄関の開く音がした。どうやら母が帰ってきたようだ。階段をのぼる音がする。


「修、ただいま」


 その姿は俺が初めて母さんを見てから少しだけシワが増えたように思えるが、年齢に比べるととても若く見える。


「おかえり、母さん」


 母の言葉に挨拶を返す。


「学校はどうだった?友達はできた?」


「学校は…そうだなぁ、いい雰囲気の学校だと思うよ。ガラの悪い人も今のところ見てないし、みんないい人そうだ」


 少し自由すぎるとは思うのだが、それは言わなかった。


「友達は?」


「流石にまだ出来てないよ」


 一瞬槙也の事が頭によぎったが、1日で友達になれたなどと自惚れてはいない。


「そう、早くできるといいわね」


 そう言って母は微笑む。 


「じゃあご飯作ってくるわね」


「うん」


 母はそう言ってドアを閉め、階段を降りていった。

 俺の中で母は育ててくれている大人という認識だ。俺を本当の息子だと思っているのでとても申し訳ない気持ちがする。

 俺が転生した小学生4年生のとき、この体に何があったのか全くわかっていない。元の人格を俺が消してしまったのか、それとも元々俺だったが前世の記憶が蘇り、その反動で今世のそれまでの記憶が消えたのか。いずれにせよ両親への感情がどことなく余所余所しいものとなってしまうのは仕方ないことなのかもしれない。それは元の人格への申し訳無さの現れなのかもしれない。

 だから、俺は両親の愛情を素直に受け取れずにいた。




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 翌日、起きた俺は周りが知らないところになっていないかを確認する。いつもどおりの自分の部屋であることに安堵し、部屋を出る。

 その後朝食を食べ、見送りの挨拶を背に受けながら学校へ登校する。

 周りを見ると上級生の姿が見える。昨日は時間がずらされていたので、こうやって高校生として登校するのは新鮮で、心なしか足が軽くなる。

 すぐに学校につき、その生徒数の多さに感動する。中学時代はそれほど生徒数の多い学校に通っておらず、これだけ多くの生徒が玄関へ向かう姿は初めて見たのだ。

 教室に入り、自分の席に座る。教室へ入った際、またもや視線を感じたが、クラス全体が静かになるようなことはなく、この調子だといつも教室に入るたび静かになるようなことはなさそうだ、と安堵した。

 修は何故自分がそのような目線を向けられるのかと言うことは考えもしなかった。


「おはよう」


そう声をかけられ、振り向くと槙也がいた。


「なんだ、お前か」


「なんだとはひどい言いようだな。これでも挨拶したのだから何か返すべきなのではないかと思うが、どうだろう?」


 言っていることは正しいのだが、お前こそ言い方を考えたらどうなんだと思うが言葉にせず、挨拶を返す。


「おはよう。で、今度はなんのようだ」


「用がなければ喋りに来てはいけないのかい?君がそう望むならそうするが、そんなことでは一生友人ができないぞ?」


 ムカッと来た。


「友達ぐらいいるし!10人ぐらいいるし!お前こそそんなんじゃ友達できないぞ!」


 つい感情的に喋ってしまった。子供っぽいことをしてしまい、とても恥ずかしくなり周りの様子を伺う。運がいいことに周りの視線がこちらに向いていないようだ。いや、全員が全く同じ方向、教室の廊下を向いており、こちらに耳を傾けてすらいないようだった。

 槙也に視線を送ると、槙也すら同じ方向を向いているので、何があるのか気になり俺も同じ方向を向くがそこには何もなかった。

 すると、喧騒が戻り始め、槙也に何があったのか聞くことにする。


「おい、槙也。さっきお前何を見てたんだ?」


「あ、あぁ、とてつもない美少女から廊下を歩いていたんだ。しかし、あれだけの美貌を持っていたなら昨日の時点で騒ぎになっていたはずだが、来ていなかったのか?」


 とてつもない美少女?

 非常に興味をそそられる。今すぐ見に行きたいのだが、生憎チャイムがなったので辞めることにした。

 そういえばあの状況でも『白』と呼ばれる少女は身動き一つせず読書していた。ある意味すごい。





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