第3話

 結局、槙也に家の場所を教えてしまった。本当にしつこかったのだ。その後、槙也と家が偶然にも同じ方向だったことから、不本意にも一緒に帰ることになってしまった。


「なぁ、槙也」


「ん?なんだい?」


「なんでさっき俺に話しかけたのか、理由を聞こうと思ってな」


「ああ、簡単なことだよ。君は僕と同じ匂いがしたからね」


 ……相変わらず意味のわからないやつだ。それが全く説明になってないことに気づいていないのだろうか?


「匂いってなんだよ」


 槙也は俺の言葉を聞いてキョトンとした顔になる。


「てっきり君も感じているものだと思っていたが……その反応を見る限り違うようだ」


「おい、どういうことだ?説明しろ」


「それは君が自分自身で感じなければ分からない感覚だと思うよ」


 それきり槙也は黙った。

 少し待ってみてもなんの反応もないのでほんとうに言うつもりがないらしい。心にモヤモヤとした感情が残る。


「それでは私はここを曲がるのでお別れだ。また明日会おう」


 そして返事を待たずに歩き去って行った。

 俺は心のなかで先程槙也の言った言葉を反芻する。

 『俺が自分自身で気づかなければならない問題』ってなんだ?さっぱり分からない。あと彼は『自分と同じ匂いがした』とも言った。匂い?なんのことだ?

 俺は歩きながら繰り返し考えた。しかし答えは出ないままであった。

 そこでふと俺は何か忘れていることに気付いた。


「あ、『白』って人の顔見てねぇ」


 案外しょうもないことだった。ただの興味本位だが、気になるものは気になるので明日こそ見ようと決意する。

 そもそも槙也が話しかけて来なければ忘れなかったのに……とブツブツ言っていると家に着いた。

 俺の家はごく一般的な3人家族でそこそこ裕福である。それこそ、もう1人兄妹が居ても暮らして行けるくらいには。まぁ、そんな事は起こるはずもないのだが。

 靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。鍵が掛かっていたことから誰も帰っていないのだろう。そのまま2階へ上がり自分の部屋に入る。昼ご飯を食べていないことに気づいたが、お腹も空いていないので後回しにする。

  PCの電源をつけ、ネットサーフィンにいそしむ。何かめぼしい情報は無いかと探ってみるが、やれ誰々が不倫だの、逮捕されただの芸能に興味ない自分にとってあまり関係のない事柄しかなかった。

 落胆した俺はベッドに横になる。洗剤の匂いがかすかに漂ってきて、家事をしてくれている母に感謝する。

 せっかく学校が昼までに終わったのに、なにもやる気が起きない。そういえば楠木高校の部活って何何があるのだろう、とカバンの中に入っている学校紹介の冊子を開ける。


楠木高校・部活一覧

・野球部

・女子バレー部

・テニス部

・男子、女子バスケ部

・ソフトボール部

・ラグビー部

・男子、女子卓球部

・サッカー部

・バドミントン部

・陸上部

・吹奏楽部

・合唱部

・軽音楽部

・文芸部

・新聞部

・写真部

・ミステリー研究部

・将棋部

・映画研究部

・オカルト研究部


 この中で興味を持ったものに丸をつけていく。明日から部活体験があるため、丸をつけたものから体験していくつもりだ。

 まず、運動部には入らないと決めているため、運動部系の部活に斜線を入れていく。音楽系もできないので、吹奏楽部、合唱部、軽音楽部に斜線を入れる。

 そして同じような理由で様々なメリット部活に斜線を入れていき、残ったのは、


・文芸部

・ミステリー研究部

・オカルト研究部


 正直ミステリー研究部とオカルト研究部の違いが分からないが、それは体験して違いを確認してみようと思う。

 終わったと思った瞬間、腹の虫がなった。気づけばそれなりの時間が経っていた。俺は食べていなかった昼飯を食べようと立ち上がり、部屋を出た。






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文字数稼ぎがあからさまでした。すいません。許してください。

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