第50話 設営準備中!
「それじゃあパパっと進めていきましょうか」
会場内に入ったら、地図で確認してウォーターパレットのスペースに向かう。手荷物を下ろしたあとは、手分けして設営を行っていく。
そのフロアの簡単な掃除、頒布物の入った段ボールを運んでくる。備品の確認をする。やることはたくさんだ。
「持ってく段ボールはこれで全部ね」
「ひぃふぅみぃ……うん。これで全部よ若菜」
「了解。そいじゃあ……」
戸水さんはズボンのポケットからスマホを取り出すと、俺たちに画面を見せてくる。
「設置のイメージとしてはこんな感じ。この前詩織の家に行って仮設置はしてみたから、スペースが足りないとかは多分ないとは……思う」
「シュミレーションしたって言うなら、そこは自信もって下さいよ」
本番を想定して設営をして。それでも不安になるって。何の為のシュミレーションなんだか。
「きっと大丈夫。絶対大丈夫!」
「まずは自分に自信を持ってくださいよ……」
「と、ともかく。心配することは無いわ。この写真誰かに送っておくからそれを見ながら進めて」
「じゃあ俺が貰っておきますね」
完成図となる写真を俺のスマホに送って貰う。
「はい、確かに貰いましたよ。てか進めておいてって、戸水さんが指示を出してくれるんじゃないんですか」
「私はこれから、知り合いのサークルさんに挨拶してこないといけないの」
「はぁ」
「そんなに時間はかからないとは思うけど、少し席を外すから、お願いね。もし終わったのなら、連絡ちょうだい」
知り合いのサークル参加者さんにご挨拶をしてくるということで、戸水さんは席を外すことになった。
槻さんは段ボールを運び終えてすぐから、薫と干場さんを連れて不在だから、月見里さんと残りの一年で設営を進めていくことになる。
「さてと……なんで俺にまとめ役を頼んだんだか」
話の流れのままに引き受けてしまったが、なんで指揮統率を二年の月見里さんではなく、一年の俺に任せたのか。
こういう役割を頼むってことは信用はしてくれてるってことなんだろうが。そこはこの場にいる年長者である月見里さんに頼むのが筋だと、俺は思いますが。
「うだうだ言っても仕方ないか」
「何かあったの煌晴?」
「なんでもねぇよ。ともかく始めよう。葉月と莉亜はそっちの段ボールを頼む」
「はーい」
まずは最優先でやることを進めなくては。戸水さんから貰った写真を確認しようと思っで開いたら、画像ファイルがもうひとつあることに気がついた。
ひとつはさっき見せてもらった写真で間違いないのだが……と思って開いてみる。
「お。これはわかりやすい」
先程の写真に、色々と書き込みのされたものだった。
並べ方。積んでおく冊数。後ろの方に置いてある段ボールの中身について等々。赤い字で色々と書き込んである。
「こうちんこうちん。わかちー知らないっすかー? 設営について聞こうと思ったんすけど」
「戸水さんだったら挨拶に行ってるので席を外してますよ。それについては写真を貰ってますからこれの通りに」
「あぁこれっすね。どれどれー。ほうほう……なるほどなるほど」
「そこに俺のスマホ置いとくので、それ見ながらでお願いします」
「へいへーい」
他の皆にも、俺のスマホの写真を見ながら作業を進めてくれと言っておいた。あれがとてもわかりやすくまとまってるから、滞りなく作業が進められる。
「あーすいません。ウォーターパレットの方ですか?」
「え。あ、はい。そうですが」
作業を始めてすぐのことだった。やってきたのは若い男性の方。ネームプレートをつけているということは、サークル参加者で間違いない。
てかまだ一般開場はされてないから、ここにいるのは運営関係者とサークル参加者以外はいないはずなんだがな。
「おはようございます。白うさ神社の雪草履といいます。パピヨンさんはどちらに?」
「あぁ。とみ……」
戸水さん。と言いかけたところでハッとして咳払いを挟んだ。向こうの人に戸水さんと言っても伝わるわけがない。ここでの彼女は戸水若菜ではなくパピヨンなので。
「パピヨンさん、今は知り合いのサークルさんに挨拶に回ってますので、ここには居ないんです」
「あぁ。そうでしたか」
「えっと……白うさ神社の雪草履さんでしたね。こちらに伺ったこと、お伝えしておきましょうか」
「では、お願いします。落ち着いた頃合にでも、改めてお伺いさせて貰いますね」
「わかりました」
名刺を頂いてから、雪草履さんは自分のサークルの方へと戻って行った。
その後もご挨拶にと何名かこちらを訪ねてきた。しかしタイミング悪く、戸水さんが席を外しているときだったので。先程の雪草履さんの時と同様の対応をする。
それから十数分程で作業は終了。完成予想図の写真と見比べながら、不備がないかを確認していく。
値札の貼り忘れ無し、積んだ冊子も崩れていない。クロスのしわ無し、段ボールの中身の確認良し。金庫の施錠も問題無し。一つ一つ、指差しで確認していく。
「おつかれー。設営終わった?」
「ちょうど終わったところです。今は最終確認をしています」
確認作業をしている途中で、挨拶回りをしていた戸水さんが戻ってきた。まずは現状報告と伝言をすることに。
「そっかそっかー。何か問題とかなかった?」
「特に何も。それと、何人かサークルさんの方が挨拶に来ていて、名刺を頂いてます」
「あーそっかー。入れ違いになったのもいくつかあったからなー。わかったよー」
伝えることを伝えたら、戸水さんが完成したスペースの写真を撮ると、すぐさまSNSにそれをアップした。設営完了の投稿って、こういう時よくあるんだよな。
「これでよしっと。ところで詩織はまだ戻ってきてないの?」
「あれから見ていませんね。というか薫と干場さんまで連れて、いったい何をしに行ったんですか?」
「それなんだけどねー」
槻さん。それから薫と干場さんがどこに行ったのかを聞こうとしたところで、槻さんの声が聞こえた。どうやらタイミングよく戻ってきたようだ。
「若菜ー。こっちは終わったよー」
「ありがとー。そしていいねーそれ」
「それ?」
何がいいのか。わからなかったので声のした方を振り向いてみると槻さんがいて、その両端には―――
「……やべぇ」
「どうかな煌晴。似合ってる?」
「我の魅力が一段と引き立たせられるではないか。この衣装、実に良い出来であろう?」
SBMのキャラのコスプレをした薫と干場さんが居ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます