罪を重ねて
お父様の怒りの声に、二人は青ざめ震えている。
「そんな……お父上よ、スファニよ、どうか考え直してくれ! これは家族の危機なのだぞ!」
「そうよ! ちょっと魔が差しただけなのに騒ぎ過ぎじゃない! 謝ってるんだから許してよ!」
二人は許しを請いながら、見苦しく私達に寄って来た。
「離れて! 貴方なんか大っ嫌い! 離婚よ、離婚!」
「娘から離れろ! ……まずは娘に謝り、次に騙して貰った金も返してもらう。その後の話は裁判所で行う、覚悟しておけ」
「「ひぃっ! ごめんなさい!」」
お父様の一言で二人は離れ、頭を下げて跪いた。
その程度で許して貰えると思ったのかしら? そんな訳ないでしょ。
私とお父様を騙して贅沢してきた一年を、檻の中でしっかりと反省して貰うわよ。
「お話の途中ですみませんが、もう宜しいですか?」
自警団の人が手枷を持ちながら、お父上に話しかけている。
「あぁ、勿論だ。逮捕してくれ」
「分かりました。……ほら、さっさと立て。お前達を詐欺の容疑で連行する」
「そんな……どうして……私が、こんな目に遭わないといけないのよーーー!!!」
「なっ! おい待て!!!」
ミカナルは必死の形相で自警団の人を振り払い、近くにあったお酒の瓶を手に取った。
そのまま私に向かってきて瓶を振り下ろそうとして……ハルスが身を挺して受け止める。
「浮気に詐欺に殺人未遂、こりゃあ最低でも十年は檻から出られないな。馬鹿もここまでくると手に負えないぜ」
「ハルス! 大丈夫なの!?」
「心配しなくても、この手の悪足掻きには慣れてるよ。こんな時の為に分厚い服を着て、何があっても君の身を護れる様に準備してるしな。まぁ、最初の頃は痛い目に遭ったりもしたが」
「放せよ、どいつもこいつも私の邪魔をしやがって! 貧乏な平民がちょっとだけ贅沢な暮らしをした位で、檻に入れて閉じ込めようだなんて、この○○女!!!」
遂に本性を現わしたのか彼女は酷く暴れ喚き、聞くに堪えない暴言をまき散らしている。
「いいからお前は黙って大人しくしてろ! お前さん、手枷を貸してくれないか?」
「自警団の人以外が手枷を嵌めるのは厳禁なんだが……まぁいい、ほらっ」
「放せ! 放せ放せ放せったら! なんで……なんでなのよー!!!」
ハルスに手枷を嵌められる理由なんて、きっと彼女には分からないだろう。
人を騙して嘘を吐き、そのせいで自分が何をしでかしたのかすら分かってないだろうから。
ただ一つ、私に言える事があるとすれば、
「自業自得よ、○○女」
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