最低な二人

「お父様、どうしてここに? それに自警団まで」


「娘の夫が浮気した挙句にとんでもない事をしでかし、困らそうとしてるからな。見過ごす事は出来ん。スリムト、よくも私の娘に恥をかかしてくれたな、許さんぞ」


お父上は冷静に、だけど怒りに満ちた声で夫を睨み付けている。


それと同時に自警団の人は、夫と浮気相手に冷たい宣告を言い渡した。


「スリムト・ラッセンドルフとその浮気相手であるミカナルよ、そなたたちには詐欺の容疑で逮捕状が出ている」


「詐欺!? ハルス、どういう事なの!?」


「あの二人が子供がいると騙して、婚約破棄するのを止めさせたって訳だ。貴族の夫婦が子供を産めなくて困った、という話は聞いた事があるだろ? そんな夫婦は別の人の子供を買い、医者に書類を偽造してもらって自分達が産んだ風にする。奴等はそれを逆手に取ったのさ」


「つまり……あの二人は貴族の夫婦が子供を産む前に浮気で子供が出来れば家の名に傷が付く事を知ってるから、それを利用して婚約破棄させない様にしていた訳!?」


「そういう事だ。婚約破棄すれば贅沢できないから、浮気した挙句に夫婦より先に子供がいるぞと言いふらそうとして止めてな。それも今日までだ」


……もう、二人に何も言う事は無いわ。


私を騙して贅沢三昧、私を脅してお金をせびる、挙句に何度も嘘を吐いて誤魔化して。


結婚してから一年、ずっと嘘で私を困らせてきたのだから、それより長く牢屋で苦しんで貰うわよ。


「まっ、待て! お父上よ、私を逮捕するって言うのか!? そんな事をすればマルセーニャ家の名に傷が付く事になるぞ!」


「そうよ! お父様、お金を帰すから穏便に済ませましょうよ! それでいいでしょ!?」


この期に及んで二人は見苦しい言い逃れを吐き、頭を下げて見逃されようとしてる。


今になって頭を下げるなんて、既に手遅れに決まってるじゃない。


「確かに、マルセーニャ家の名前は大事だ。我が一族はそれで成り立って来たからな。だが、それよりも大事な物がある。……私の娘だ」


お父様は荒ぶりそうになる声を抑え、ゆっくりと話し始めた。


「我が娘はこんな碌でもない夫の為に、結婚してから一年も頑張ってきた。借金を返済していると嘘をついてる夫を、一所懸命に支えようとな。娘よ、こんな奴と結婚させてすまなかった。それもこれも、こやつが酷い浮気男だと見抜けなかった私の責だ」


「いいんです、悪いのはあの二人ですから」


「そう言ってくれるとは、本当に……よくできた娘だ。それに比べてお前らときたら……お前らなんか! マルセーニャ家の! 人間じゃない!」

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