––– さあ、観測者。

この物語はここで終わる。

 こんなふざけたものを見てないで、

    純文学や伝記など

君の将来に役立つ作品を読むべきだ。

 これから僕は、世界物語を渡り歩き

    人類に害を成す

   ライトノベルを全て駆逐する。

 その後で、僕もまた…消えるとしよう。


 『それが、僕の役目だ!!』

地を揺るがすようなモノガタリの慟哭が響く。

 彼がかざす掌の、光が細く収束された輝く矢先は僕の額に向けられていた。

 それが、放たれようとする刹那。目の前を横切る影 –––

  軌道を外し放たれた光の矢は、僕の頬をかすめ背後の地面に穴を空けていた。


 モノガタリの腕に必死に食らい付いていたのは…

 「あ…う…!ハム 


『ちぃいい!! イヌだと?! 何故これ程迄に贖う? 観測者の干渉なのかッ?!』

 モノガタリは腕を振り抜くと、投げ飛ばされたハムは塀にぶつかり、『キャン!』と悲鳴をあげ、立てなくなってしまった。


 …… リスタの気配が感じられない。

きっと、シブと共にモノガタリの封印を強化しに向かったのだろう。

 ハムは、捨て身で僕を救ってくれたんだ!

         …… 封印?


『今度こそッ!』

 再びモノガタリの掌が向けられる中、僕はカアクに心の中で問いかけた。

『カアクちゃん、あとどれ位掛かる?』と、


『ユウト、よう持ち堪えたな。今や…行け』

 僕は弱まった重力を振り切り、モノガタリの胸に刃を突き立てた。

 しかしすんでのところで、まるで見えない壁に阻まれたかの様に刃先が止まってしまった。

『くそッ!シブとリスタが神力を僕の封印に…… 貴様らッ、いい加減に……』


の中に、私達も入ってる?」

すぐ背後で聞こえたのはリラの声と、「ユウトくん、行くんだ!」ツカサ先輩の声。

 リラが僕の腕を押し、先輩が身体を支えてくれていた。

「あ…ああああぁ終わりだ!」

 二人の力を乗せて、僕は目一杯に腕を押し出した。


 刃は… 見えない壁を突き破り、モノガタリの胸に突き刺さった。

『!!こんな…事って……なんでだよ…』

 胸から溢れ出す文字と共にモノガタリの形は崩れ去ってゆく。

『ユウト、だが…まだだ… 僕は封印を解いて、必ず、全てを…… 』

 そう言い残し、モノガタリは消え去った。

そして、その場には『小さな黒い結晶体』が、残されていた。


『カアクちゃん、モノガタリを…倒したんだよね? これで、この世界は救われたんだよね?』砕かれた顎のせいで、僕は喋れなかったが、その思いが届いたのか、刃から姿を現したカアクは重い口調で話し始めた。


「ユウト、残念やけど…… まだや。まさか、を使ってたんやな…… 説明は後や、アジトで皆んなの傷を癒すのが先や!」

 カアクは落ちている黒い結晶を拾い上げると目を細めていた。

「ユウト! アナタが一番重症なのよ、早くアジトに!」

 リラの声に僕は頷くと、ハムを抱きかかえアジトへと向かった。

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