…
––– さあ、観測者。
この物語はここで終わる。
こんなふざけたものを見てないで、
純文学や伝記など
君の将来に役立つ作品を読むべきだ。
これから僕は、
人類に害を成す
ライトノベルを全て駆逐する。
その後で、僕もまた…消えるとしよう。
•
•
•
『それが、僕の役目だ!!』
地を揺るがすようなモノガタリの慟哭が響く。
彼がかざす掌の、光が細く収束された輝く矢先は僕の額に向けられていた。
それが、放たれようとする刹那。目の前を横切る影 –––
軌道を外し放たれた光の矢は、僕の頬をかすめ背後の地面に穴を空けていた。
モノガタリの腕に必死に食らい付いていたのは…
「
『ちぃいい!! イヌだと?! 何故これ程迄に贖う? 観測者の干渉なのかッ?!』
モノガタリは腕を振り抜くと、投げ飛ばされたハムは塀にぶつかり、『キャン!』と悲鳴をあげ、立てなくなってしまった。
…… リスタの気配が感じられない。
きっと、シブと共にモノガタリの封印を強化しに向かったのだろう。
ハムは、捨て身で僕を救ってくれたんだ!
…… 封印?
『今度こそッ!』
再びモノガタリの掌が向けられる中、僕はカアクに心の中で問いかけた。
『カアクちゃん、あとどれ位掛かる?』と、
『ユウト、よう持ち堪えたな。今や…行け』
僕は弱まった重力を振り切り、モノガタリの胸に刃を突き立てた。
しかし
『くそッ!シブとリスタが神力を僕の封印に…… 貴様らッ、いい加減に……』
「貴様らの中に、私達も入ってる?」
すぐ背後で聞こえたのはリラの声と、「ユウトくん、行くんだ!」ツカサ先輩の声。
リラが僕の腕を押し、先輩が身体を支えてくれていた。
「あ…
二人の力を乗せて、僕は目一杯に腕を押し出した。
刃は… 見えない壁を突き破り、モノガタリの胸に突き刺さった。
『!!こんな…事って……なんでだよ…』
胸から溢れ出す文字と共にモノガタリの形は崩れ去ってゆく。
『ユウト、だが…まだだ… 僕は封印を解いて、必ず、全てを…… 』
そう言い残し、モノガタリは消え去った。
そして、その場には『小さな黒い結晶体』が、残されていた。
『カアクちゃん、モノガタリを…倒したんだよね? これで、この世界は救われたんだよね?』砕かれた顎のせいで、僕は喋れなかったが、その思いが届いたのか、刃から姿を現したカアクは重い口調で話し始めた。
「ユウト、残念やけど…… まだや。まさか、コレを使ってたんやな…… 説明は後や、アジトで皆んなの傷を癒すのが先や!」
カアクは落ちている黒い結晶を拾い上げると目を細めていた。
「ユウト! アナタが一番重症なのよ、早くアジトに!」
リラの声に僕は頷くと、ハムを抱きかかえアジトへと向かった。
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