強くなりたい
〜前回までのあらすじ じゃあ!〜
『ねえ、リスタ… 気付いてる?』
「なんじゃあ、ハムよ」
『このままだと、ユウトが死んじゃうわよ』
「うむぅ、大量の失血と内臓へのダメージが深刻じゃな。じゃが、この裏側世界は相手から展開されておる、巣を壊さん限り脱出ができんのじゃ」
『だからって、知らんぷり?本当にあなた達神様なの? 酷すぎるわ!』
「……すまんな、本当にすまん。我々は傍観しかできぬのじゃ。お主の置かれていた環境に関してもな」
『それは今、関係ないでしょう!!』
•
•
•
「ねえ、ユウト。大丈夫なの? 顔色が青いわ」
リラの表情を見るに、僕の顔色は相当悪いのだろう。実際、立つのがやっとの状況であるのだが。
でも、彼女を守る為にも、ここの巣は破壊しなければならない。
それは、僕にしか出来ない事なのだから。
「大丈夫だよ。早く終わらせてアジトに帰れば、すぐに元気になるし」
その言葉を
「ああ、これはね… 僕のギルティーは『性』だけど、この力が元々が含まれていたみたいなんだよ。それを取り戻したってわけさ」
そう言って僕は赤いガントレットをリラの前に突き出した。
しかし、リラは思っていた。
ユウトは先程『ジキ』とギルティーを唱えていた。それが『食欲』ならば、『睡眠欲』も併せた…つまり、ユウトの力の正体は『生理欲求』なのではないかと。
そして、『ジキ』の力を得た途端にユウトの食欲は失せている。つまり…「ユウト、その……力の代償があるんじゃない? 私に隠し事してない?」と、言葉が出たのは必然だった。
そこにナロゥが、「リラ、お喋りはそれ位にしておけ。早く『巣』を破壊しないと、ユウトがもたない」と、横槍を入れるが、リラは見逃さなかった。一瞬歪んだユウトの表情を。
…それは、憶測が確信に変わるのに十分だった。
そして、思う。隠し事をされている自分はユウトに認められていないのだ。と、
「よし!みんな行こう。エレベーターは使えないだろうから、リラさん案内お願いするよ!」
あからさまな空元気で階段を目指すユウトの背中を見ながら、「ねえ、ナロゥ?私ももっと強くなりたい」と、こぼすリラにナロゥは答えた。
「リラ、君の力は『承認欲求』だろ? 今までの対象は父親だったが、今認めてもらいたいのは誰だい? その想いは君を強くする筈さ」
その言葉に「そっか……私は自分に素直になればいいんだ」と、リラは頷いた。
•
•
•
「ゼェ…ヒュ…ゼェ…… リラさん?この階段、どこまで登るんですか?!」
僕達は非常階段を駆け上がっていた。
従業員が多い為か、幅も高さ共にその広さは非常階段のイメージを超えていた。
「どこまでって、最上階までだけど?」
そう言いながら、リラは絶え間無く銃声を響かせていた。そう、彼女は僕の体力を温存する為に、先頭をきってイヴェを倒しながら進んでいたのだ。
…しかし、なんだ? やけに銃の命中率が高い。響く銃声と共に百発百中でイヴェが霧散してゆく。
「ユウト、辛い? もう少しペースを落とす?」
階段の踊り場で僕に振り返った彼女の瞳には、僕を心配する気持ちの他に決意の光が宿っていた。 それはきっと、僕を守るという意志なのだと気付き、弱音を吐いた自分が恥ずかしくなった。
「いいや、大丈夫……」
僕が言い終わらないうちに、リラの背後から飛びかかる
「無駄よ!!」彼女は擬態イヴェを目視する事なく、トリガーを引くと、放たれた弾丸はイヴェの硬い装甲を突き破り、イヴェを消滅させた。
…あ、れ? 銃口は明後日の方向を向いてた筈ですが? 「リラさん?どうやったの?」 と、僕は間抜けな言葉を発してしまった。
「私、気付いたの。この銃は私の『想い』だって。また、あなたに教えて貰っちゃったわね」
???ナンノコト???
僕の頭の中を埋め尽くすクエッションマークを察してか、ナロゥが青い銃から言葉を発した。
『ははっ、なんて間抜けヅラしてるんだ?物分かりの悪いユウトに俺が教えてやろう。『
そう、勿体ぶった様に含みを持たせた後に彼は続けた。
つまり、『
その願望が変われば、武器の性質が変わってもおかしくないと。
『つまり、リラは今まで父親に『承認』して欲しかったが、その想いは銃弾の様に一直線だった訳だ。だが、今は『誰』かに追いつき、認められたいという『承認欲』に変わったのさ。その想いが銃弾を『相手』に向かう誘導弾の様に変化させたのだろう。 誰だろうね〜 そのお相手……ほげぇ!』
…何故だろう? リラは赤面しながら銃を壁に激しく打ち付けていた。
次回!『ハムの過去』
お楽しみに!!
(※次話、鬱要素が含まれます。苦手な方は飛ばしてお読み下さい。メインストーリーに支障はありません。)
––– 僕の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます