ゲボぁっ!
『ゆうとくん。待ってましたっ!』
クゥの言葉と共に真紅のガントレットが僕の左腕を覆う。
「ファイトォ!いっぱーっつ!!」
僕はその拳を振り抜き、襲いかかってきた擬態イヴェを一網打尽に吹き飛ばした。
『タウリン1000㎎配合する前にウチを早よ取りに来いやぁ!』
支柱に突き刺さった真紅の刃から放たれるカアクの罵倒はさておき、リラも守れた。
あと、残すは超越体だけだ。
『これは、これは、なんと意思の強い人間だ。私の部下にしたい程の逸材だな』
超越体は『くっくっ』と歪な笑い声を漏らしながら、視界に僕を捉えていた。
その余裕からも、まだ秘策があるのか、よほどの自信があるかに窺えた。
「ユウト……それは、何?」
リラは、複雑な表情で僕の
「リラさん、詳しくは後で。まずは奴を…倒そう」
僕の言葉に黙って頷いたリラは、超越体に銃口を向けた。
『私を…倒す、だと?』あからさまに不機嫌そうな超越体は、臍の辺りから蟻酸を噴出するが、クゥが『この程度、止まって見えるよ?』と、いとも簡単にそれを弾く。
「これで、どう?!」すかさず、リラが銃弾を放つと、超越体の頭部がのけぞり、背中から倒れ込んだ。
「やったか?!」僕の声に青い銃のナロウは『いいや、まだだ。手応えが…無かった』と、冷静に答えた。
『これは…参ったな。本気の姿は醜く、自分でも見たくなくてね……出来ればスマートに
超越体は、倒れたままの姿で呟くと、その身体が痙攣と共に膨張し始めた。
「な、なんなの!コイツ!?」
吹き抜けのエントランスを覆いつくさんと巨大化した超越体の姿は、見上げる程の蟻。『軍隊…蟻か』ナロゥの冷静さが、逆に相手の脅威を物語っていた。
「リラさん!危ないっ!!」
もはや、巨大な重機と化した顎が襲い来る。
僕は、無意識にリラを突き飛ばしていた。
彼女の不安げな瞳の中に映る僕の姿。
その理由はすぐにわかった。
「いっッッ!!」
僕の胴体は超越体の巨大な顎に捕らえられてしまったのだ。
『ククッ、なんと脆弱な身体…… ほんの少しでも力を入れれば砕けてしまいそうだ』
超越体は、愉しむかの様に徐々に力を加えてゆき、僕の肋骨が悲鳴をあげる。
「ユウトッ!!」
リラの悲痛な叫びと共に放たれる弾丸は、超越体に傷一つつける事が出来なかった。
『少年、最後に言い残すことはないか?』
超越体は勝ち誇った様に呟く。それに対し僕は、「あ…アニメで…そのセリフは、お前が倒される…フラグ…だよ」と、声を絞り出した。
『ははっ、最後まで生意気な態度がとれるとは、本当に殺すには惜しいが…… 歯向かった相手が悪かったと思いたまえ』
––– 僕は… 諦めない。 絶対にッ!!
「ギルティーサガ!! 来い!カアクッ!」
『はぁ? 貴様の刃は……。 ガフッ!』
次の瞬間、僕の左手に握られていた真紅の刃が超越体の頭を串刺しにしていた。
『何ッ故だァ?! 何が……起こっ…た』
最後の断末魔をあげ、超越体は霧散してゆく。
『ユウトのドアホ!ギリギリやったで?!』
「カアクちゃん、僕は信じてたよ」
––– そう、僕は信じていた。
僕の血が固まり、細胞が死ぬ事で刃がメダルとカアクに戻ると。
そして、カアクはきっと、僕にメダルを届けてくれると。
「やっぱり…僕と相性、バッチリだね、ぽっ♪」
『なにが『ぽっ♪』や。キショいわ』
「あほんっ♪」
––– この…… 邪神?! …と、豆柴は許す!!
そんな中、リラが青い銃を投げ捨て僕に駆け寄ってくると、「ユウトッ!大丈夫?! ごめんね、庇ってもらって…」と、心配そうな眼差しを向けてくれた。
ほらほらぁ、リラさんみたいに僕を心配してくれていいんだよ? お?
僕は、ふらつきを覚えた途端に膝から崩れ落ちた。
「はは… 流石にキツかったかな?」
既に痛みが麻痺するほどに疲労が全身を蝕んでいた。しかし、僕はここの巣を破壊する使命がある。そう、気力を振り絞った時だった。
「ユウト、これを飲め。 エリクシールと言う霊薬だ」
意外な事に、元の姿に戻っていたナロゥが小さな小瓶を投げて寄越したのだ。
––– 有難う、なんだかんだ言ったって、やっぱりみんな仲間なんだな。
そう思い、僕は小瓶に入った茶色い液体を一気にあおった。
…
……
……… ゲボぁっ!!
「ナロゥさん!これは?!なに?」
それは、不味いという次元を超えていた。
例えるならドブ川…いや、ドブ川にも失礼と思える程の臭気!
これは僕の味覚うんぬんでは推し量れない拒絶反応!!
「うん?インターネッツとやらで公開していたので、作ってみたんだが……? リポD、オロC、赤マムシ? とにかく色々混ぜてある」
そして、このドヤ顔である。
––– ピンチを瀕死にしてどうする?!
邪神を信じた僕が馬鹿だったが、結果、覚醒できた事は感謝しておこう……
次回!『強くなりたい』
お楽しみに!!
––– 僕の
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