意思
僕は左手に真紅の刃を握りしめ、再びビルの中に駆け込むと、リラの父親に擬態した超越体は驚きながらも満足げに『おや?それ程の傷を負いながら立ち上がるとは……実に珍しい若者だ』と、その歪な笑みを僕に向けた。
「ユウトッ!?どうしたの、その腕…」
心配そうにリラが見つめる僕の腕はカアクの髪留めを既に真っ赤に染めていた。
「リラさん…僕は大丈夫。それより、そいつから目を離しちゃダメだ! 何か飛び道具を持っている!」
先程受けた衝撃、その攻撃の正体はいったい何なのか。僕はその部分を注視すると、じんわりと濡れている事がわかった。
––– 液体?
「だとすれば…もしかして……」
僕は思い当たった事をハムとリスタに尋ねてみた。
「リスタさん、この濡れている部分…どんなニオイがしますかっ?」
その問いに『クゥーン』というハムの呻きに続き、リスタが『ユウトよ、ハムが強烈な臭いだと言っておる。 ワシはてっきり、ユウトが酸っぱいニオイのスナック菓子でも持っておるのかと思っていたがのぅ!』と、心配そうな声色のまま、冗談を交えた太い声を響かせた。
僕は、味覚を失った事により、嗅覚まで弱ってしまっているのだろう。リスタが言った通りなら、飛び道具の正体は……
「蟻酸ね、私、聞いた事があるわ。『ヤマアリ』という種で、お尻から蟻酸を噴射する蟻が居るって」
見せ場を取りましたね? さすがは無慈悲な才女こと……「リラさん!解説有難う。ハム、
僕の声でハムの咆哮と共に透明な防壁に包まれた。 …だが。
『ほう、
「やっぱり、あなたは父じゃないわ」
そう冷静に言い放ったリラは、引き金に指を掛け銃声を響かせると、飛びかかってきていた擬態イヴェの体が霧散する。
「そんなに大きく口を開けるなんて、弱点を狙って下さいと言ってる様なものよ。お父様ならそんな馬鹿な指示はしないもの」
『では、左右同時ならどうする?』
超越体の言葉でリラを挟む様に襲い掛かる
『馬鹿な奴だ。リラはその程度じゃ怯まないぞ?』青い銃ナロゥの言葉通り、リラは冷静かつ迅速に二発の銃声を響かせた。
しかし、次の瞬間「えっ?!」という短い悲鳴と共に、リラの身体は宙を舞う。
一体は撃破したものの、もう一方のイヴェは顎を閉じており、銃弾が弾かれてしまったのだ。
そして、その体当たりを受けてしまった。
「リラさんっ!!」
––– マズイ!真上に打ち上げられた、リラさんの下で擬態イヴェが大きな顎を開き待ち構えている!
––– 決めただろう?ユウト。彼女を守るって!「いっけぇぇえ!!カアクッ!!」
僕はその叫びに乗せて真紅の刃を投げた。
『アホぅ! メダルに戻ってまうっ……へっ?』
カアクの間の抜けた言葉と相反し、刃はその形状を維持したまま、
『ユウト?どいういうこっちゃ?!何でギルティーが解除されへんのや?』
「僕の一部……血を付けて投げたからね。上手くいかなくてもカアクちゃんの犠牲で済むだけだし!」
柱に突き刺さった
……右手が、あがらない。
––– よって、リラ落下。
「ぐえっぽぉう!!」
「ユウト!!ごめんなさいっ。大丈夫?!」
リラさんの気遣いは有り難いですが、
何故、僕のみぞおちに膝をブッ刺したんですか?
こういう場合、勢い余って抱き合ったり、あわよくばキスしちゃったりしません?
これでは
「オロオロオロ……」そして、僕は、やっぱり吐くんですね? 世に問いたい、僕の扱いを!
『……ナミンCかいな!?』
そして、この邪神の余計な一言が無くなるのは、いつの日か?
『馬鹿め。今、お前は力を持たない、ただの人間…いや、ゴミだ。ビジネスでも弱い所を突くのがセオリーと覚えておくがいい』
人型イヴェは刃を持たない僕に向け、全ての
それに対して僕は、「覚えといたらいいよ?奥の手は最後まで隠して居るから奥の手だってね」と、赤い結晶のカケラを左手に握って叫んだ。
「ギルティー『
次回!『ゲボぁっ!』
お楽しみに!!
––– 僕の
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