崩れる輪
「先輩っ!待ってください、危険すぎるっ!」
僕は叫びながら、ツカサ先輩の後を追う。
先輩は軽いフットワークでフェイントを
「どいてくれっ!!」
僕は真紅の刃を振り上げるも、紫色の分厚い甲羅に阻まれ、僅かな傷がつく程度にしかならなかった。
『ユウトっ!アカンっ避けるんやっ!!』
カアクの声で僕は屈むと、すぐ頭上を凄まじい風圧が起こる。
それは振り抜かれた擬態イヴェのハサミだった。
「こんなの
続け様に襲いくるハサミは、僕めがけ一直線に迫る!
刃で受け止めるも、「がっ!?」その重みはハムの防壁を突き抜け、僕の内臓までも揺らす衝撃だった。
––– あの硬い甲羅をなんとかしないと。
僕は、そう思ってしまった。アニメで見た何でも切断出来る……
「ユウト…そのイメージを待っていた」
前を走るツカサ先輩の手には眩い光を放つレーザーブレードが握られていた。
『ツカサさんっ!現実に無い物なんて、負荷が強すぎるわっ!』
そこから聞こえるシブの声は、痛みに耐えている様に上擦っていた。
「うるさいっ!黙ってろ!」そう叫ぶツカサ先輩の振るうブレードが待ち構えていた
「一体、どうしちゃったの!?」
僕に追いついたリラは銃でイヴェを撃ち抜きながら眉を顰めていた。
––– 先ずは目の前の擬態イヴェを何とかしないと…
「ユウト!私が囮になるわ。ツカサさんを追って!」
リラは擬態イヴェに向けて銃弾を放ち、僕から意識を逸らした。
「ハムっ!リラさんを頼む!」
僕はリラが作ってくれた隙を潜り抜け、ツカサ先輩を追う。
沸き起こる胸騒ぎを必死に抑えながら…
辿り着いた館の裏手側、地下への入り口の鉄格子は溶断されていた。
その原因、つまりツカサ先輩はこの先に進んだのだろう。
「どうしちまったんだよ、ツカサ先輩は!?」
僕は薄暗い下り階段を急いで降りる最中、
石造の踏み板が奏でる反響が、警報音の様に僕の頭を揺らす。
嫌な予感は当たるもので、『ユウト…ヤバいで。『モノガタリ』の気配が…するんや』と、刃からカアクの声が絞り出された。
…そんな、まさか…
急に空気が重くなった様に、呼吸が苦しくなる感覚を耐えながら辿り着いた地下室。
開けた空間の中央には、ロブスターと沈丁花が絡み付いた様なオブジェが自立しており、それを取り巻く様に放射線状に石造りのベットが並べられていた。
「何だ…この匂いは?」
その空間に漂う強烈な腐敗臭が僕を包む。
生理的に受け付けないアンモニア臭とタンパク質の酸化した刺激臭は、否応無しに僕の胃を縮み上がらせた。
しかし、僕の視線の先に、吐き気を忘れさせる程の圧力が……
『やっぱり来たね。カアクとユウト』
不敵な笑みを浮かべ、身体から白い光を放つ少年の姿。
「モノガタリっ!」僕は視界に捉えるや否や叫んだ。
それは、モノガタリがツカサ先輩の肩に手を乗せていたからだった。
ツカサ先輩は少し驚いたふうだったが、すぐに真顔に戻るとともに呟いた。
「ユウト…彼が…『モノガタリ』だったのか…」
確かに学校で僕がモノガタリと対峙した時、ツカサ先輩は居なかった。
しかし、ツカサ先輩が口にした『彼が…』という言葉から、以前に逢った事が有る事実を告げていた。
「ユウトくん…」と、彼の続けた声に僕は言葉を失った。
「俺は…モノガタリと…一緒に行くよ」
そう語るツカサ先輩の手には、虹色に輝く『
【次回予告】
次回!『裏切り』
お楽しみに!!
––– 僕の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます