…UラG iり

『ツカサ!なんでや? そいつは『敵』なんやで!?』

 真紅の刃から放たれた声は、地下室を反響した。


「俺は、恋人の人生を…光を奪ってしまった。それを取り戻す為なら悪魔だって契約する!」

 ツカサ先輩は拳を握りしめて語った内容は、『モノガタリ』との契約…

 それは、僕達がシエスタ学園の学園祭に行ったあの日に取り交わされたらしい。

 僕がリラさんの演劇を一緒に観に行こうと誘った時に、『彼女を待たせている』というツカサ先輩の返答があった…あの時。


 ツカサ先輩の目の前に、モノガタリは現れたのだ。

 『僕は神だ。彼女沙奈江さんの目を、僕は治す事が出来る』そう語ったのだと。

 その方法は、『遺伝子改造の巣』を守り、自分の力とする事だと……


「……先輩…だからって……酷いですよ!? それに…彼女さんの記憶も無くなるんですよ!?」


「沙奈江は…俺と出逢ってしまったから、あんな事に! だったら…1からやり直した方が良いに決まってる!!」

 苦痛に歪む先輩の顔…それは、想像を絶する後悔と共に生きて来ただろう事実を表していた。だが…


「先輩…それは、身勝手です。それは沙奈江さんの意思なんですか? 望む未来なんですか?」

 そう言いながら、僕は先輩に歩み寄る。

「来るなっ!! ユウトに何がわかるんだ!?」


「…わかりませんよ。先輩の苦痛なんて。でも、大切な人ツカサ先輩が苦しむ姿に僕は心が引き裂かれそうになってます。この気持ちが先輩には…わかるんですかっ!?」


『やっぱりライトノベルって、気持ち悪いね。そんな恥ずかしい言葉セリフを簡単に述べてしまうなんて、狂気そのものだ』

 モノガタリの、まるでゴミを見るような視線が僕に向けられる。それは、目の前に見えない無数の針があるように僕の歩みを妨げた。


「ユウトくん、身勝手で済まない。モノガタリは約束してくれたんだ。彼女を健康な状態で目を治してくれるって」


 ––– それを…信じたのか? 人は信じたい情報を真実にしたいと願う… それはわかるけどっ!

「先輩!そんなの嘘に決まってる!そいつの目的は人類の滅亡なんだ!」


『なんだか鬱陶しくなってきた。ツカサ、もう行こうか?』

 モノガタリの言葉で彼らの背後に歪むゲートが現れる。その先は楽園と云うべきか、花が咲き乱れる緑の大地に繋がっていた。


『あかんっ!! 『エデン』に繋がっとる!ユウト! ツカサを行かせたら封印が解かれてまうっ! シブ!!何やっとんのや!?』

 カアクはツカサの持つレーザーブレードに語りかけるが、シブは気を失っているのか反応が無かった。


「さよならだ…ユウトくん」

そう言い、モノガタリと共にゲートに脚を踏み入れる先輩は、悲しそうな瞳をしていた。

 そして、2人が通り抜けたゲートは閉じ始めた。


「…僕の、憧れた先輩は……そんなに弱い人じゃないっ!!」

 僕はゲートに向かい走る。

『馬鹿だね、狙い撃ちされるよ?』

ゲートの向こう、モノガタリは右の掌を僕に向けると、光の矢を放った。

 それを刃で受けるが、その衝撃に僕の手からカアクとメダルに戻った刃が弾き飛ばされてしまった。


「あ、あかんっ、ユウト!戻ってきい!!」

カアクの声が聞こえた時には、既に僕は一人ゲートを抜けていた。

 そして、背後のゲートは閉ざされた。


       【次回予告】


  次回!『ユウトの決意』

            お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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